パンデミックにより、多くの製造業者は業務効率向上への取り組みを加速させざるを得なくなりました。
香港を拠点とするアパレルメーカーは、新たに採用したエンジニアにマネジメントを学ばせています。この新たな複合職は「マネジニア」と呼ばれています。
これにより、同社の工場全体で業務が再設計され、効率が最大化されました。
COVID-19による深刻な影響は、世界中の市場に及んでいます。繊維・アパレル製造業は、顧客需要の落ち込み、コスト管理の圧力、貿易関係の悪化により、パンデミックの打撃を大きく受けた業界の一つです。レジリエンスを強化するため、多くの企業が業務の俊敏性と効率性を高めるイノベーションの導入を試みています。
あるアパレルメーカーは、「リーン」、すなわち製造における無駄を最小限に抑えながら生産性を最大化するための革新的なアプローチを模索してきました。
Esquel Groupは、世界有数のシャツメーカーの一つであり、幅広い製品をより短いリードタイムで提供するという顧客の高まる要求に応える難しさを早くから認識していました。Esquel Specialty Spinning(ESS)は、Esquel Groupの垂直統合型サプライチェーンの一部として、グループの世界各地の工場や他の顧客に特殊糸を供給しています。ESSは長年にわたり、リーンで俊敏な業務運営の考え方を試行し、導入してきました。中国・桂林にあるESSの旗艦事業の成功を支える重要な要素の一つが、Esquelが「マネジニア」プログラムと呼ぶ取り組みです。
ESSのマネージングディレクター、Tian Yeが主導するマネジニアの考え方は、従来のマネージャーとエンジニアの役割を融合させます。その結果、多様な役割を担える訓練を受けた専門職の人材層が生まれました。日常的な機械の稼働管理だけでなく、品質管理の監督や生産安全の確保、そして何より、現場での部門横断的なプロジェクト管理も担えます。
業務効率は競争力の鍵
ますます複雑化し、絶えず変化する生産現場の要請に応えるため、マネジニアプログラムは分権型管理と集中管理という二つの原則を軸に設計されています。
1. 分権型管理は、各マネジニアに、工場内の担当区域における生産のあらゆる側面について責任を与えます。これには、計画、機械操作、品質保証、技術的な問題の解決が含まれます。すべてのマネジニアは、監督を受けずにあらゆる状況を管理するためのスキルと権限を備えています。従来型のモデルと比べ、分権型管理は各作業に必要な時間と労力を大幅に削減し、製造コストを抑え、生産性を高めます。たとえば、機械の設定変更を従来の方法で行う場合、10の工程を踏み、複数の部門間で調整する必要があり、平均59分かかります。マネジニアがこの作業を担えば部門間の調整は不要となり、工程は4段階に簡略化され、25分以内に完了できます。
2. 工場の集中管理システムは、自動化された生産工程で問題を検知すると、各自のスキルや業務量、作業の緊急度に応じて、問題が発生した場所へ現場のマネジニアを派遣します。これは、工程の自動化と人による柔軟な対応を組み合わせたものです。この俊敏なシステムは、スタッフの対応能力と効率的な問題解決との最適なバランスを保ちます。その後、マネジニアは、労働強度や従業員の満足度を考慮した包括的な重要業績評価指標(KPI)に基づいて評価されます。従来の方法で行う場合、各作業を評価し、異なる部門に手作業で割り当てる必要があり、部門横断的な連絡や承認に貴重な時間が費やされてしまいます。
この二つのアプローチを組み合わせたことで、桂林工場全体の生産工程が再設計され、業務効率が最大化されました。
マネジニアプログラムの開始から数年で、桂林のESSにおける一人当たりの生産量は329%増加し、1日あたり30kgから130kgになりました。紡錘機1万錘あたりの従業員数は146人から38人へと74%減少し、業界のベンチマークを大きく上回る成果を上げています。従業員のスキル向上に費やす時間は70%減少する一方、手取り給与は着実に増加しました。
幅広いスキルを備えた適切なチームの育成
2015年、Esquelはプログラムに150人を超える大学卒業生を採用し、その大半はエンジニアリング分野の出身者でした。新たな人材は基礎スキルの研修を1年間受けた後、シミュレーション形式のワークショップに参加し、さまざまな生産現場を実際に経験しました。2018年に工場で生産を開始する前、新たに輸入したすべての機械の設置を担当した際に、彼らのエンジニアリングスキルが試されました。
マネジニアの意欲を高めるため、このプログラムでは5段階の昇進制度を通じて継続的に評価を行います。最上位の段階に達した優秀なマネジニアには、他のEsquel工場での交換プログラムへの参加機会や、より大きな管理責任が与えられました。
マネジニアの考え方は、アパレル製造の未来を支える礎になり得ると私たちは考えています。
持続可能な企業は、現状にとどまっていては目指す姿に到達できない
社会経済上の不確実性が高まり続けるなか、現代の製造業者は、変化に強いあり方を実現するため、「リーン」の考え方を絶えず見直す必要があります。温室効果ガス排出量ゼロに近づくことを目指し、Esquelも事業におけるエネルギーと水の消費を削減する技術を導入し、リーンと環境配慮を両立させるために尽力しています。
マネジニアプログラムは、よりリーンで俊敏なモデルを求める幅広い業界の企業に応用できる可能性があります。Esquelの成功に触発され、同社に製品を供給する欧州の大手機械メーカー2社が、自社のマネジニアプログラムの立ち上げに乗り出しました。
世界が苦難を伴いながらもゆっくりとパンデミックから回復するなか、製造業の縦割り構造は弱まり、主要企業は成長を続けるために体系的な変革を主導する必要があります。マネジニアのようなプログラムには、製造業に変革をもたらし、仕事の未来を形づくるだけの可能性と力があるかもしれません。


