エネルギー集約型産業におけるネットゼロへの移行状況をまとめた世界経済フォーラムの新たな報告書によると、重工業の脱炭素化には前例のない規模の協力が必要となる。
報告書は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、アンモニア、石油、化石ガスという6つの主要産業の脱炭素化を加速する方法について提言している。
報告書によると、現在の技術的解決策は、2050年までにネットゼロを達成するために世界が必要とする水準にはほど遠い。
生産時の排出量を大幅に削減するには、炭素回収や低炭素水素の製造などの資産に2.4兆ドルを超える投資が必要となる。
重工業の脱炭素化には、これまで激しく競争してきた企業同士の前例のない規模の協力が必要となる。
これは、世界経済フォーラム(WEF)が発表した、エネルギー集約型産業全体におけるネットゼロへの移行状況に関する新たな報告書の主な結論の一つだ。先週発表されたこの調査は、企業、投資家、政策立案者がどのように連携すれば、鉄鋼、セメント、アルミニウム、アンモニア、石油、化石ガスという6つの主要産業の脱炭素化を加速し、生産時の排出量を大幅に削減できる資産に必要な2.4兆ドル超の投資を共同で動員できるかについて、複数の提言を示している。
報告書によると、6つの部門の生産をネットゼロへの道筋に沿わせる技術的解決策は存在するものの、2050年までにネットゼロを実現するために必要な脱炭素化の軌道に「まったく近づいていない」。報告書は「隔たりは大きい」と述べている。
各部門の脱炭素化の進捗段階は異なり、部門ごとの提言が必要だと認める一方で、重工業の歴史に新たな、よりクリーンな章を切り開くため、業界全体に適用できるとする一連の提案も示している。
WEFは、産業の生産時排出量の80%を占めるこれらの部門が、低炭素の生産方式へ一体となって移行するには、「従来型のパートナーシップ」を超える必要があると主張している。新技術への移行に伴う財務上・技術上のリスクを共有しなければならず、企業が連携して新たな低炭素製品を普及させて初めて、その需要を加速できると強調する。
WEFは、産業の生産時排出量の80%を占めるこれらの部門が、「従来型のパートナーシップ」を超える必要があると主張している。
『ネットゼロ産業トラッカー2022』は、企業とサプライヤーが、従来以上に緊密に連携し、引取契約や、CO2の貯留・輸送インフラなどの共有インフラに取り組む必要があると指摘する。また、鉄鋼やセメントなどの産業資材について、「低排出」生産の基準値に関する共通基準を確立するため、関係者が協力しなければならない。
「低排出資産への投資は、新技術やインフラに依存するため、企業にとってリスクが高くなります」と、WEFのエネルギー・素材・インフラ部門責任者、エスペン・メルム氏は述べた。「政策、燃料需要、技術、資本、インフラという推進要因を同じ方向に向け、気候目標に向けた進展を加速させるうえで、協力が中心的な役割を果たします。」
報告書は、各産業が基準や製品認証制度を軸に連携することも提案する。こうした枠組みは、気候目標の大枠よりもはるかに細かな水準で進捗を実現できる、排出原単位に基づく脱炭素化の道筋づくりを促すという。「ネットゼロ目標は必要ですが、求められる年ごとの進捗を促すには不十分です」と報告書は述べる。「鉄鋼やセメントなど、製品レベルの排出原単位の道筋が、一貫性のある適時の進捗を導くために不可欠です。」
この報告書は、世界で最も炭素集約度が高く、脱炭素化が難しい産業の一部について、その進捗を追跡するプラットフォームの設立を目指す、WEFとコンサルティング会社アクセンチュアのより広範なプロジェクトの一環である。
WEFは文書の中で、低排出型産業プラントの第1世代の展開に、さらに大きく重点を置く必要があると強調する。こうした重要プロジェクトの現在の導入ペースは遅すぎ、ネットゼロ目標の達成を危うくしかねないと指摘している。
こうしたプロジェクトが十分な利益を生み出せるよう、企業、政府、金融機関、そして業界全体が協力するよう求めている。
報告書は、初の商業規模プロジェクトへの投資には、新技術やインフラに依存するため、企業にとって依然として「重大なリスク」があると認めている。そのため、プロジェクトが十分な利益を生み出せるよう、企業、政府、金融機関、そして業界全体が協力するよう求める。特に、新たな低炭素素材に大きな需要があることを示せる「先行者連合」をさらに設立するよう提言している。
企業のリスク負担を軽減する仕組みとして、企業に有利なタクソノミーや、助成金、低利融資、譲許的融資による公的資金も挙げている。また、複数の関係者が低排出プロジェクトに共同出資する官民パートナーシップも示されている。
企業や投資家が低炭素型プラントを支援することが急務であるため、第1世代のプラントに伴うリスクを最小限に抑え、分担することが極めて重要だと報告書は警告する。
最終的に、報告書が取り上げた6つの産業の脱炭素化は技術的に実現可能だが、WEFによると、生産能力の増強に向けた2.1兆ドル超の設備投資に加え、炭素回収・貯留や低炭素水素の製造など、いわゆる「実現を支えるインフラ」にさらに数兆ドルを投じる必要がある。
また分析では、低炭素技術に投資した先行企業が不利益を被らないようにすることで、政策立案者が産業の脱炭素化を加速する大きな可能性を持つと強調している。こうした企業に公平な競争環境を整えるには、安定した政策枠組みが特に重要だと報告書は指摘する。「炭素リーケージのリスクを抑える方法としては、炭素価格と国境調整措置の組み合わせ、炭素差額決済契約、優先的な公共調達(例えばカリフォルニア州の『Buy Clean Act』)、素材の使用義務、割当などが挙げられますが、これらに限られません」と報告書は述べている。
分析では、低炭素技術に投資した先行企業が不利益を被らないようにすることで、政策立案者が産業の脱炭素化を加速する大きな可能性を持つと強調している。
アクセンチュアのグローバル・エネルギー移行責任者、ムクシット・アシュラフ氏は、ネットゼロ産業トラッカーは、「脱炭素化とエネルギー効率化の道のりを可視化」することで、脱炭素化が極めて難しいことで知られる産業の脱炭素化を加速する「不可欠なツール」となることを目指していると述べた。
実際、報告書は、技術の成熟度や実現を支えるインフラへのアクセスから、低排出製品の需要、低排出資産への投資に利用できる資本まで、産業部門のネットゼロに向けた進捗を追跡する一連の指標を示している。
「産業の変革を加速すること、特にセメントや鉄鋼など脱炭素化が難しい産業の変革を進めることは、ネットゼロの実現に不可欠です」とアシュラフ氏は述べた。「さらに、エネルギーと素材の価格が高い今日の環境では、産業のエネルギー原単位を下げることも競争優位の源になります。」
電力、運輸、建築物とは異なり、産業の脱炭素化に伴う課題は、理解や記録がやや進んでいない。WEFの報告書は、産業の脱炭素化に必要な進展を妨げているデータの不足や、主要な用語、定義、産業の境界、排出量の境界をめぐる不一致を埋めようとする最新の取り組みだ。政府、投資家、企業の取り組みを改善する指針となるだけでなく、信頼できる戦略を持つ企業に光を当てることが期待されている。


