モノのインターネット(IoT)、人工知能、ウェアラブル機器、ロボット工学、積層造形など、急速に台頭するテクノロジーが、新たな生産技術やビジネスモデルの開発を促している。これらは、製造業の大半と世界のサプライチェーンを大きく変えることになる。たとえば、低コスト製造品の輸出に依存する一部の経済は、リスクにさらされる可能性がある。テクノロジーの進歩により、多くの製品を、競争力のあるコストで販売先市場の近くで製造できるようになるかもしれない。
しかし、これは大きく変化する状況の一側面にすぎない。政府や企業のリーダーは、自国や自社が急速に変化する世界のバリューチェーンにどう貢献するのか、改めて検討する必要がある。
一部で成果を上げている戦略は、飛躍的に進出することで、特定分野における世界のリーダーとなることだ。韓国は高精細テレビ(HDTV)でこれを実現し、中国は現在、電気自動車で実現しようとしている。急速な技術進歩は、後発経済や新興経済に機会をもたらし、より確立された競争相手の歩みをなぞることなく、繁栄を支えるバリューチェーンで迅速に主導的な地位を得ることを可能にする。第4次産業革命は、飛躍的に進出する新たな機会を確実にもたらす。
ただし、飛躍的な進出がすべての国に適しているわけではないことを理解することが重要だ。実際、世界経済フォーラムがA.T.カーニーと共同で実施した「生産の未来への準備状況評価2018」の報告書によると、こうした飛躍を実現できる態勢にある国はごく少数にとどまる可能性がある。

オーストラリアやアラブ首長国連邦(UAE)のような高い潜在力を持つ国々や、サウジアラビア王国のように類型の境界に最も近い新興国は、新たな生産パラダイムにおいて飛躍的に進出するのに最も有利な立場にあると考えられる。これらの国々は現在の生産基盤が比較的小さい一方、飛躍の機会を生かす資源と、他の能力を適切に組み合わせる可能性を備えている。他の国々にも飛躍の可能性はあるが、より一層の努力が必要となる。まず機会をいくつかに絞り、対応する重要な能力の開発に向けて、資源と投資を集中させる必要がある。
不可欠な能力を評価する
データに基づく「生産の未来への準備状況評価2018」報告書は、生産の性質が変化する中で、各経済が現時点でどれだけ適切な位置にあり、変化を形作り、その恩恵を受けられるかを分析している。準備状況とは一般に、将来の生産機会を生かし、リスクや課題を軽減し、未知の将来のショックに対して強靱かつ柔軟に対応する能力を指す。この評価は主に2つの要素から成る。経済の現在の生産基盤を示す「生産構造」と、第4次産業革命の機会を生かせる位置に経済を導くための不可欠な要因である「生産の推進要因」だ。

これらの能力のうち、飛躍的な進出に特に不可欠なものは、戦略を選ぶ前に慎重に検討しなければならない。飛躍を目指すリーダーが早期に注力すべき分野は、テクノロジーとイノベーション、人的資本、制度的枠組みの3つだ。
飛躍を目指す取り組みの多くは、テクノロジーとイノベーションにおける差別化された(通常は専門特化した)競争優位から始まる。飛躍に備えるリーダーは、重点を定めた継続的な技術開発と普及をどのように育むか、明確に見通し、定めなければならない。
人的資本が基盤となることは言うまでもない。飛躍戦略を描くリーダーは、自国や産業の人材層に何が求められるかを現実的に評価し、必要な人材の強みを迅速に伸ばすための戦略を緻密に実行しなければならない。第4次産業革命において必要な能力は、技術的な力量だけでなく、継続的に学ぶ力、創造性、感情的知性、その他のソフトスキルも含む。
国の制度的枠組みとは、政府機関や規則・規制が、技術開発、新たな事業、先進的な製造業をどれだけ適切に支えているかを指す。飛躍を促すため、リーダーは知的財産を保護し社会の安定を確保できるほど法の支配が強く、迅速なイノベーションを促し型破りな考えを持つ人々を引きつけるほど自由で、起業活動を誘発できるほどビジネスに友好的な環境を育まなければならない。
経済エコシステムの時代
多くの国にとって、従来型の産業政策を通じて飛躍に必要な能力をすべて育むのは、困難、あるいは不可能だろう。この急速に変化する環境では、個々のバリューチェーンを選び、特定の技術ソリューションと組み合わせる方法はうまくいかない。競争力を獲得し維持する最良の機会がどこにあるか、またそれをどう追求するのが最善かについて、リーダーがほぼ常に正しく見極めなければならないからだ。
従来型の産業政策に代わる現実的な選択肢は、自然界に見られるものに類似した、新たな経済システムに積極的に参加することだ。サンゴ礁はその一例であり、大きさも種類も多様な生物の能力を組み合わせ、すべての生物の生存と繁栄を支えている。経済主体もしばしば自然に倣い、共生関係を築く。たとえばシリコンバレーのテクノロジー大手企業やスタートアップは、地域の大学に大きく依存している。一方、大学は、卒業生の採用や研究資金の提供に意欲的な有力雇用主が近隣にいることで恩恵を受ける。世界各地で、ハイテク産業と高等教育機関は相互依存を認識し、共通の利益に基づく強固なコミュニティを形成する傾向がある。これは本質的に、アイデアや解決策をめぐる健全な競争を促すシステムである。
システムは個々のソリューションよりはるかに強靱で、予期せぬ事態に適応する能力も大きい。したがって、飛躍を目指す国や企業は、まだ知らないパートナーとどこで利害を共有できるかを見通し、相互依存の新たな関係を創造的に築かなければならない。実際、経済システムを構築し、そこに関与することは、第4次産業革命において最も重要な能力となる可能性がある。リーダーは、産業界、学界、労働組合、その他の重要な関係者を積極的に巻き込み、飛躍の機会を探り、対象を定め、追求する過程を通じて、その能力を今から育み始めることができる。
詳しくは、世界経済フォーラムの「生産の未来に関するシステム・イニシアチブ」をご覧ください。


