過去30年間、世界全体の国内総生産(GDP)は縮小してきました。従来、生産を牽引してきたのは設備投資と労働力の増加でしたが、今や、世界が望む成長水準を実現するために必要な投資水準を維持できない岐路に立っています。この状況は産業部門にも見られます。米国の工場は平均築年数が20年を超える一方、その大半では稼働状況や生産水準が操業開始以来、目立って改善していません。
しかし、アクセンチュアは、見通しを悲観一色に捉えるべきではなく、AIへの投資には、ドイツなど主要先進国の年間経済成長率を倍増させ、2035年までに日本の経済成長率を3倍にする可能性があると考えています。製造業では、AI技術の力によって収益性が39%高まり、2035年の総付加価値(GVA)が約4兆ドル増加するとアクセンチュアは見ています。

製造業は機械への依存度が高く、従来型の業務環境が根強く残っています。チームが意思決定の指針としてオペレーターの経験に頼っているため、この部門がAIに投資すれば、高い投資収益率が見込めます。
AIは、次の3つの方法で生産性を高め、従業員がより賢く働けるよう支援します。
1. インテリジェント・オートメーション
2. 人材と資産の能力強化
3. イノベーションの加速
AIと自己学習機能は、自動車製造のような産業で特に大きな価値を発揮します。自動車製造には、人間のオペレーターとロボットが協働して顧客向けの製品を作る工程が、最大300もあります。
AIがなければ、人間のオペレーターは経験に基づいて工程や生産物の各種パラメーターを設定しますが、誤りが見つかるのは後になってからです。誤りによって不良品の発生率が高まり、メーカーが顧客の注文に期限どおり応えられなくなる一方、自社の生産コストも増加しかねません。
AIを活用する環境では、パラメーターをAIが制御します。パラメーターが規格を外れると、AI搭載システムは通知するだけでなく、最終的には製品の品質に影響が及ぶ前にパラメーターを制御します。これを可能にするのが、AI分析システムのデータを深く掘り下げる能力です。今日の製造現場では何百万ものデータポイントが生成されており、手作業で分析すれば数週間から数カ月かかるデータも、AIなら分析できます。工程全体を通じて生産品質を監視できるため、AI活用環境では、より高品質な製品が生産され、不良品が減り、運用コストも削減されます。AIは自動化に知能をもたらし、産業企業の効率を高めるだけでなく、オペレーターが工程からさらなる価値を引き出し、データに基づく戦略的な意思決定を行う時間を生み出します。
機械に過度な負荷をかければ生産量が増えるという思い込みに頼るのではなく、AIを使えば、産業企業は機械や資産の活用方法を最適化し、必要以上に稼働させずに済みます。その結果、資産の稼働停止時間や高額な修理費用を減らせます。AIは、予知保全プログラム、資産最適化、コスト削減戦略を策定する新たな機会をオペレーターに提供するとともに、企業の環境持続可能性への取り組みにも貢献します。
産業部門は人為起源の二酸化炭素排出源として世界で3番目に大きく、2010年には化石燃料関連の二酸化炭素排出量の20%を占めたと推定されています。産業企業には、炭素排出量の削減が求められており、AIを活用すれば目標達成を加速できます。例えば、多くの農業関連施設では、コージェネレーション用タービンを使い、生産工程の一環としてエネルギーと蒸気を作っています。AIは、ガス使用量を抑えながら、最適な電力と蒸気の生成量をリアルタイムで予測できるようオペレーターを支援します。その結果、主任エンジニアはタービンの稼働時間を最適化し、燃料効率を改善し、炭素排出量とエネルギーコストを削減できます。
産業プロセスは本質的に複雑で、改善の機会を肉眼で容易に見つけることは困難です。AIを使えば、産業オペレーターやエンジニアは製造現場を深く分析し、個々の機械の最適化だけでなく、製造ライン全体の自動化につながる機会を見つけられます。AIによって、産業企業は最も価値ある資産であるオペレーターを支援し、業務に関する既存の思い込みを見直し、イノベーションを推進し、世界での競争力と収益性を高めることができます。


