火星のレゴリス(火星の岩石を砕いたものを模した粉末)は、チタンと混ぜると3Dプリント材料を強化するようだ。
機器をさびや放射線による損傷から守るコーティングの製造に役立つ可能性がある。
レゴリスは100%ではなく、わずか5%だけ使う場合に最も効果が高いようだ。
模擬した火星の岩石粉末を少量、チタン合金と混ぜると、3Dプリンティングでより強い材料ができる。この製法は将来、火星で工具やロケット部品を作るのに使える可能性がある。
研究者らは、火星表面にある岩石質の無機物を模した黒い粉末状の物質、火星レゴリスを5%から100%まで含む部品を製造した。
火星レゴリスを5%含む部品は強度があった一方、レゴリス100%の部品はもろく、簡単にひび割れた。それでも、火星由来物質の含有量が高い材料であっても、機器をさびや放射線による損傷から守るコーティングの製造に役立つと、研究論文の責任著者であるアミット・バンディオパディヤイ氏は述べる。同論文はInternational Journal of Applied Ceramic Technologyに掲載された。
「宇宙で、有人ミッションを考えるなら、3Dプリンティングは実現しなければならない技術です。地球から何もかも運ぶことはできませんから」と、ワシントン州立大学機械・材料工学部の教授であるバンディオパディヤイ氏は語る。「何かを忘れても、取りに戻ることはできません。」
物資を宇宙に運ぶには莫大な費用がかかる。例えば、NASAのスペースシャトルでペイロードわずか1キログラム(約2.2ポンド)を地球軌道に運ぶのに約54,000ドルかかると、研究者らは指摘する。宇宙空間や火星で製造できるものがあれば、重量と費用を節約できる。さらに、何かが壊れた場合、宇宙飛行士には現地で修理する手段が必要になる。
バンディオパディヤイ氏は2011年、チームとともにNASA向けに月のレゴリス(月の岩石を砕いたものを模した物質)から3Dプリンティングで部品を製造し、このアイデアが実現可能であることを初めて示した。それ以来、宇宙機関はこの技術を採用してきた。国際宇宙ステーションには、必要な物資を現地で製造し、実験に用いるための3Dプリンターが設置されている。
今回の研究でバンディオパディヤイ氏は、大学院生のアリ・アフルージアン氏とケレン・トラクスル氏とともに、粉末式3Dプリンターを使い、模擬火星岩石の粉末をチタン合金と混ぜた。チタンは強度と耐熱性に優れ、宇宙探査でよく使われる金属だ。
製造工程では、高出力レーザーで材料を2,000℃(3,632°F)を超える温度まで加熱した。次に、溶けた火星レゴリス由来のセラミックと金属の混合物を移動する台に流し、研究者らはさまざまな大きさや形状の部品を作った。材料が冷えた後、強度と耐久性を試験した。
火星の岩石粉末100%から作ったセラミック材料は冷却中にひび割れた。しかしバンディオパディヤイ氏が指摘するように、ひび割れが問題にならない放射線シールドのコーティングには、依然として適している可能性がある。
しかし、ほんの少しの火星の粉塵、つまりレゴリスを5%混ぜた材料は、ひび割れも気泡も生じなかっただけでなく、チタン合金単体より優れた特性を示した。そのため、重い荷重に耐えながら、より軽量な部品の製造に使える可能性がある。
「強度と硬度がより高い材料になるため、用途によっては性能が大幅に向上します」と同氏は述べる。
バンディオパディヤイ氏によると、今回の研究は出発点にすぎない。今後、異なる金属や3Dプリンティング技術を用いることで、より優れた複合材料が生まれる可能性がある。
「これで実現可能だと分かりました。弱いプラスチック部品を作るだけでなく、強度があり、あらゆる種類の構造部品に使える金属・セラミック複合部品を作る方向も考えるべきかもしれません」と同氏は語る。
この研究は全米科学財団の支援を受けた。


