「システム思考」とは実際には何を意味するのか――今日のイノベーションにとって重要な理由

Systems thinking helps us see the part of the iceberg that's beneath the waterImage: Ezra Jeffrey
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  • システム思考は、私たちの世界の相互のつながりを理解する助けになります。

  • パンデミックによる不確実な状況のなかで、システム思考はイノベーションを促す可能性があります。

私たちは今、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代を生きています。

イノベーターとして、一般の職業人として、エッセンシャルワーカーとして、市民として、そして人間として、私たちのあらゆる行動は、ますます互いに依存し合っています。「人は誰も孤島ではない」という有名な言葉があります。しかし実際には、私たちは周囲のあらゆるものの相互のつながりをどれほど理解しているでしょうか。そこで登場するのがシステム思考です。

一部では、この世界的なパンデミックのさなかに「エコシステムの視点」を取り入れることが大きな話題になっていますが、率直に言えば、これは新しいものではありません。システム思考は、工学や政策立案などで用いられてきた学術的な考え方であり、近年では企業も、自社の製品やサービスがそのなかで機能する「システム」を考慮するよう取り入れています。

イノベーションを定義する

イノベーションの定義は企業ごとに異なります。分かりやすさを重視して、私は4象限モデル(下図参照)を使うのが好きです。漸進的イノベーションは既存の技術を現在の市場で活用すること、アーキテクチャ型イノベーションは自社の技術を異なる市場に適用すること、破壊的イノベーションは新しい技術を現在の市場に適用すること、そしてラディカル・イノベーションはビジネスモデル全体を置き換えることです。

Image: クリスチャン・トゥーリー

COVID-19のもとで、私たちはこれらが組み合わさった状況を目にしています。多くの企業は漸進的な変化から着手し、不確実性が高まる新たな時期に合わせて製品を適応させるでしょう。適切な手法を用い、社内外の能力のバランスを取れば、新たなニーズに応える、あるいは根本的に、現在の状況を踏まえて新たなニーズを生み出すラディカル・イノベーションや破壊的イノベーションの可能性があります。こうしたイノベーションを引き出し、長期にわたって発展させるうえで、システム思考は不可欠です。

相性抜群の二つ

「システム思考」に定まった一連のツールがあるわけではなく、分野によって異なります。たとえばサービスデザインでは、「ブループリント」を、自らの「関心対象となるシステム」を大局的に調査する方法と捉える人もいるでしょう。何より重要なのは、この考え方が、人間中心設計(HCD)など、より一般的なアプローチと組み合わせることで、いっそう大きな力を発揮する点です。

後者はボトムアップ型で、特定の課題を詳しく調べ、利用者に共感し、その利用者を対象とした解決策を開発します。一方、前者はトップダウン型で、政策や経済からパートナーシップ、収益源に至るまで、全体像を把握します。システム思考は、組織内外のバリューチェーンを解き明かします。デザイン思考を補完し、二つが合わさることで相性抜群の組み合わせとなります。

まず、この考え方を日々の思考に取り入れる必要があります。イノベーションに不可欠なのはもちろんですが、最初の簡単な一歩は、日常生活のなかで気軽にシステム思考を使うことです。この買い物はサプライチェーンのほかのシステムにどう影響するでしょうか。大型スーパーで買い物をすると、地域経済にどのような影響があるでしょうか。ソーシャルディスタンスを実践しなかった場合、最も大きな悪影響を受けるのは誰でしょうか。

Image: 世界経済フォーラムの戦略的インテリジェンス

このマッピングツールは、COVID-19下における因果関係とその影響を理解するうえで、世界経済フォーラムが提供する中核的なツールです。システム思考に基づく意思決定を促します。これが広く普及すれば、システム・モデリング・ツールにデータを統合し、パンデミックが及ぼす影響を、複数の影響レイヤーにわたってマッピングできるようになります。では、企業にとってこれは何を意味するのでしょうか。

ビジネスにおけるシステム思考

システム思考がビジネスにどう応用されるかを示すため、銀行支店の簡略化した例を見てみましょう。

出来事:COVID-19がパンデミックと宣言され、エッセンシャルワーカーと不可欠な企業を除くすべての人と企業にロックダウンが実施されました。支店は閉鎖され、人々は不要不急の施設に行くことを恐れています。

パターン/傾向:これまでにどのような傾向が見られたでしょうか。科学者たちは何年も前から「パンデミックへの備え」を警告してきましたが、対応を主導すべきほかの「システム」から誤情報が発信されたり、透明性が欠けたりしていました。

では、銀行業界の動向はどうでしょうか。顧客サービスのオンライン化が進み、デジタル銀行やフィンテックの発展により、支店での対面業務の緊急性は低下しています。顧客の行動に傾向はあるでしょうか。パンデミックが始まる前から、多くの消費者が商品やサービスをすべてオンラインで探していました。

根底にある構造:何がこうしたパターンに影響を与え、どのようにつながっているのでしょうか。金融サービスでは、デジタル化された体験や利便性を求める声が高まっています。顧客は、そうした形で業務を行うインフラを備えた企業を探し、そこだけと取引するようになるでしょう。接点はできる限り少ないほうが望ましいとされ、より迅速でストレスのない体験につながります。仕事と生活のバランスがより一体化するなか、消費者はこうしたやり取りに費やす時間を減らしたいと考えており、その状態を保つことが重要だからです。

メンタルモデル:人々はそのシステムについて、どのような前提、信念、価値観を持っているのでしょうか。行動経済学によれば、顧客は消費支出の習慣を適応させ、変えていきます。オンラインの利便性に慣れると、支店の重要性は低下し、銀行はさらに適応する必要が出てくるでしょう。「新しい日常」には、古い信念と新しい信念の両方が含まれます。どのような信念が銀行支店を存続させるのでしょうか。人との接触や顧客サービスでしょうか。対面で家計を管理できることの主体性でしょうか。銀行支店の存在意義を保つには、新しい体験やサービスが必要でしょうか。それとも、消費者に必要なのはオンラインのデジタル銀行だけでしょうか。

さらに、銀行には、債務の兆候や潜在的なメンタルヘルスの問題を見つけるために、支出習慣を監視する倫理的義務があるのでしょうか。銀行はデータとどのような関係を築くべきでしょうか。直感的なサービスと消費者のプライバシーをどう両立させるのでしょうか。

この氷山の層をたどることで、システム思考を活用する力の一端が明らかになり、持続可能な形で戦略を導く方法が示されます。

出来事だけに注目していますか。事後対応に追われています。

パターン/傾向を考えていますか。先を見越して動いています。

根底にある構造を解き明かしていますか。設計に取り組んでいます。

メンタルモデルを理解していますか。変革を起こしています。

変革をもたらす思考によって私たちはイノベーションを実現します。その道のりにシステム思考は欠かせません。

システム思考の考え方について、私たちが探ったのは氷山の一角(しゃれを込めて)にすぎません。このアプローチをさらに深く知るための、詳細なツールは数多くあります。

これから待ち受けるVUCAの未来を生き抜きたいか、自らに問いかけてください。組織にイノベーションを起こし、自らを持続させる能力を持たせたいでしょうか。私たち全員が暮らすシステムを考慮するよう、思考のパターンを変える意思はありますか。

上記の問いのいずれかへの答えが「はい」なら、イノベーションを成功させるためのシステム思考を習得する正しい道を歩んでいます。

システム思考を日々使うようになればなるほど、私たちのイノベーションはより良いものになります。このアプローチの基本原則を理解すれば、持続可能な成長を通じて、より良い世界を築く担い手に誰もがなれます。冒頭の言葉を繰り返せば、顧客も、市民も、企業も、政策も、会社も、アイデアそのものも、孤島ではありません。どのような「新しい日常」を迎えるにしても、システム思考が未来を導き、私たちが生きる複雑な相互関係を理解したうえで、イノベーションを追求できるようにするべきです。

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