組織は、国全体でさえ、リーダーの能力だけで浮沈が左右されることがあります。では、優れたリーダーとはどのような人でしょうか。
ほぼあらゆる事業領域で不確実性が広がるスタートアップでは、有能なリーダーがいっそう重要です。
世界経済フォーラムの革新的なスタートアップ企業の最高経営責任者(CEO)30人以上から得られた、テクノロジー・パイオニアコミュニティで最も重要とされるリーダーシップの資質を紹介します。
真のリーダーと聞いて、どのような人を思い浮かべますか。カリスマ性や高い知性を備えた人でしょうか。それとも、並外れた温かさと思いやりを持つ人でしょうか。
「リーダー」とはどのような人か、その認識や理解は社会や文化によって異なります。しかし、国ほど大きな組織でさえ、リーダーの能力だけで浮沈が左右されるという点では、多くの人の意見が一致しています。過去の歴史にも現在の出来事にも、その例は数多くあります。
スタートアップの世界も例外ではありません。最高経営責任者(CEO)のリーダーシップは、企業の命運を左右する重要な役割を担います。事業のほぼあらゆる側面で不確実性が広がるなか、それは未知のものや捕食者が無数に潜む暗いジャングルを進むようなものです。生き残るため、スタートアップは適切なプロダクト・マーケット・フィットを見つけ、組織の維持に十分な投資を受け、既存企業や競合他社に対する優位性を得る必要があります。ここに挙げたのはほんの一例です。これらの要素はすべて掛け算で結びついています。一つでもうまくいかなければ、スタートアップが生き残る可能性は低くなります。

世界経済フォーラムの革新的なスタートアップ企業の最高経営責任者(CEO)30人以上に、テクノロジー・パイオニアコミュニティで、急成長するスタートアップを率いるうえで最も重要なリーダーシップの資質を尋ねました。また、その資質についての考えと、それぞれを育むために実践している主な方法や習慣についても聞きました。その結果を紹介します。
1. ビジョン
テクノロジー・パイオニアの多くは、ビジョンを最も重要なリーダーシップの資質と考えています。不確実性に満ちた世界で、リーダーのビジョンは組織を導く北極星となり、チームのメンバーを同じ目標に向かわせます。チームの共感を呼ぶ強固なビジョンは不可欠で、課題に直面したときに立ち返る指針にもなります。「ビジョン」を表す言葉として、「中心となる焦点」や「あらゆる変革への第一歩」などが挙げられます。
ショーン・ヒントン(創業者兼最高経営責任者、SkyHive)
「ビジョンは、新しい方法を提案して複雑な問題を解決する企業にとって、中心となる焦点です。明確で一貫したビジョンを持つリーダーは、抵抗に直面しても忍耐強さを保ち、会社を地に足のついた状態にしながら、より大きな目的と結びつけることができます。」
ロビン・グロセット(最高技術責任者、MindBridge Analytics)
「ビジョンは、アイデアを構想する出発点です。進むべき方向を示し、誰もが目指して取り組める目標を与えてくれます。」
ジャクリーン・ハード(創業者兼最高経営責任者、Enko Chem)
「ビジョンは現実的であり、変革しようとしている状況やシステムを考慮する必要があります。実現を目指すなら、ビジョンを共有し、形づくっていかなければなりません。柔軟な考え方と優れたコミュニケーションの実践によって、組織内でビジョンを共有し、それを中心に結束し、チームとして実現に向けて築き上げることができます。」
トーマス・ルラン(共同創業者兼最高経営責任者、Akselos)
「想像できなければ、築くこともできません。ビジョンによって、何が可能かをチームや顧客に明確に伝えられます。また、創業者の実績がその信頼性を高めます。幅広いテーマについて読み、ほかの先見性のある人々がビジョンを現実にする方法から刺激を受けることは、この資質を育む助けになります。」
チャールズ・バーク(創業者兼最高経営責任者、Hinounou)
「ビジョンは起業家にとって北極星のようなものです。それがなければ、リーダーはさまざまな形で道を見失う可能性があります。適切なビジョンを育むため、私は電子医療に直接関係する主要なトレンドを捉えるようにしています。毎朝、ニュースを読み、同じ分野の専門家と会って、最新のトレンドや研究成果、活用事例を交換することから始めます。」
2. 忍耐力と粘り強さ
忍耐力と粘り強さは、2番目に多く挙げられたリーダーシップの資質です。フォーブスによると、粘り強さとは、決意、継続する力、そして不屈の精神が強く結びついたもので、失敗と成功を分け、チームを「何とかやっている」状態から大きく成長する状態へと導く可能性があります。スタートアップが日々直面する課題を乗り越えるうえで、高い忍耐力と粘り強さはとりわけ重要です。この資質には、心構えに加えて、必要なスキルや規律を意識的に育む力も求められます。
タニア・コーク(共同創業者兼最高経営責任者、Tellus)
「この2年間は、COVID-19や半導体不足もあり、不確実性に満ちていました。この時期を乗り越えるうえで、ビジョンや適応力、純粋な不屈の精神とともに、忍耐力と粘り強さが鍵になったと思います。忍耐力はあるかないかの二択ではなく、幅のあるものです。私は日々の生活の中で、たとえば一定の時間は携帯電話を見ないようにするなど、こうした力を常に高めようとしています。」
フランシーヌ・ジェルヴァジオ(最高経営責任者、Avrios)
「物事はいつも思いどおりに進むとは限りません。辛抱強く、諦めず、長期的な視点で歩み続けることが大切です。私はいつも視野を広げ、大局的に考えるようにしています。物事がうまくいかないときも、戦略計画を見直すことで、長期的な目標を達成するための規律と意欲を保てます。」
ジム・フラット(共同創業者兼最高経営責任者、Brightseed)
「粘り強い人は、自分を助けてくれる人の声に耳を傾けさえすれば、最終的に解決策を見つけます。」
アバ・シューバート(最高経営責任者、Dorae)
「道のりは長く、険しく、予測できません。よく見て、耳を傾け、歩み続けましょう。」
3. 誠実さと自己認識
誠実さと自己認識は、3番目に挙げられました。専門家からなるチームが共通の目標に向けて集まるとき、浮き沈みを乗り越えるうえで信頼が重要な役割を果たします。信頼を築き、人々を鼓舞するには、組織全体で誠実さを示すことが欠かせません。誠実なリーダーは、倫理にかなった行動を取り、自分の価値観を貫きます。
ジェシカ・グリーン(共同創業者兼最高経営責任者、Phylagen)
「誠実さと自己認識は、特にビジョンをはじめ、ほとんどのリーダーシップの資質の土台です。ランニングや水泳などの運動をすると、自分の本心や信念が表れてきます。友人や家族といったコミュニティが、自己認識を育んでくれます。人生の大半でアスリートとして過ごしてきた私は、自己認識の指標について率直なフィードバックを得るため、定期的に周囲の人たちと対話しています。」
カリム・エンゲルマーク・カシムジー(共同創業者兼最高経営責任者、Enginzyme)
「成長するチームをまとめるには多くの要素が必要ですが、その土台となるのは信頼です。そして信頼は、誠実さと自己認識から生まれます。私は意思決定や会議、活動を始めるとき、いつも最も率直で誠実な道筋は何かと自問します。」
イザベル・ケニオン(創業者兼最高経営責任者、Calibrate)
「会社が急成長するなかで、自己認識を大切にしてきたおかげで、自分が人より得意なこと、好きなこと、そして今事業に必要なことの重なりを簡単に見つけられるようになりました。おかげで活力を保ち、大切なことに集中できます。Calibrateでは、自己認識を到達点ではなく旅路としてさらに深めるため、全員が「ユーザーマニュアル」を書くことになっています。自分が好きなことや嫌いなこと、得意なことや苦手なこと、そしてフィードバックをどう伝え、どう受け取りたいかをまとめた、短い自己認識のガイドです。」
適切な組み合わせ
ほかに挙げられたリーダーシップの資質には、人を鼓舞する力、戦略的思考、柔軟な考え方、対人コミュニケーションがあります。
クリッサ・マクファーレン(創業者兼最高経営責任者、Patientory)
「最も重要なリーダーシップの資質は、人を鼓舞する力だと思います。それは情熱と目的意識によって支えられます。人々の心や知性、魂を揺さぶる何かへと、人々を引き寄せます。この資質を高めるために実践していることの一つが瞑想です。瞑想がストレスを軽減し、多くの恩恵をもたらす最も簡単で迅速な方法の一つであることは間違いありません。CEOとして難しい決断を下し、課題に向き合うとき、瞑想はいつも私を助け、毎日、より良い人間、より良いリーダーにしてくれています。」
リーダーとその組織にふさわしいリーダーシップの資質を見つけるための、万人に当てはまる答えはありません。ビジョン、粘り強さ、誠実さを含むすべての資質は、さまざまな形で相関し、相互に依存しています。適切な要素を組み合わせ、優先順位をつけ、組織やそのメンバーに合わせることが、成功の可能性を高めるうえで不可欠です。


