新たな研究が「集団的知性」という考え方に疑問を投げかける。
集団的知性の概念は単純だ。チームがある課題で優れた成果を上げれば、仕事の範囲や焦点にかかわらず、ほかのプロジェクトでも同じ成功を収めるという考え方である。理論上はもっともらしく聞こえるが、新たな研究によると、現実はそうではない。
アイオワ州立大学で心理学の助教を務めるマーカス・クレデ氏は、個人の場合とは異なり、集団の力学は複雑すぎるため、知性などの単一の一般的要因だけでチームの有効性を予測することはできないと述べる。むしろ、リーダーシップ、グループ内のコミュニケーション、意思決定能力など、さまざまな要因がチームのパフォーマンスに影響すると同氏は言う。
アニータ・ウーリー氏の集団的知性を支持する研究は、2010年に発表されると、ビジネス界でたちまち注目を集めた。クレデ氏は、その注目に驚かなかった。組織はグループでの仕事に大きく依存しているため、管理職はチームのパフォーマンスを高める「特効薬」を常に探しているのだと同氏は言う。
しかし、ウーリー氏らが収集したデータを再分析した結果、クレデ氏とホフストラ大学の助教ギャレット・ハワードソン氏は、そのデータが集団的知性の基本的な前提を裏付けていないことを見いだした。
「研究者たちは何十年にもわたり、チームがうまく機能する要因を調べてきました。一般に、チームがある分野で優れた成果を上げても、別の分野でどのような成果を上げるかとはほとんど関係がないことが分かっています」とクレデ氏は言う。「生産ラインで働くチームには、問題への創造的な解決策を見つけようとするチームとは根本的に異なるスキルが必要です。海兵隊の射撃班は任務を見事にこなせても、手術をうまく行えるわけではありません。」
クレデ氏によると、再分析の対象となった6件の研究のうち、集団的知性を示す証拠はないと正しく結論づけたのは、インディアナ大学の研究者による2014年の研究1件だけだった。
クレデ氏によれば、相反するデータは、同氏とハワードソン氏が見つけた3つの大きな問題の1つにすぎなかった。分析の結果、研究参加者は意欲に欠けていたか、あるいはグループに課された課題の一部に戸惑っていたことが分かった。クレデ氏は、意欲の欠如が原因だった可能性が高いと考えている。たとえば、ブレインストーミング課題では、各チームに10分間でレンガのさまざまな使い道を考え出すよう求めた。実用性にかかわらず、使い道を1つ挙げるごとに1点が与えられた。
分析対象に含まれた少なくとも1つのチームは、この課題で0点だった。クレデ氏は、レンガの使い道を1つも思いつけないチームがあるとは考えにくいと言う。この例のように、努力が足りずにあるグループの成績が低くなると、課題間のパフォーマンスの相関が人為的に高まる可能性があると、研究者たちは論文で説明している。
その結果、ウーリー氏と研究チームは、データを集団的知性の指標と誤って解釈した可能性があるとクレデ氏は述べる。
また、チームのメンバー同士がほとんどやり取りしなくても、課題をまたいでパフォーマンスに一定の一貫性が現れることを、彼らは認識していなかった。言い換えれば、チームは集団として機能していなかった可能性がある。クレデ氏によれば、真の協働が行われたのではなく、各メンバーが別々に回答を考え、それをチーム全体で平均した可能性がある。
研究参加者が、単位取得のために参加した大学生や謝礼を受け取った地域住民だったという点も、組織内でチームがどのように形成され、機能するかを反映していない。
「実際の組織では、メンバー同士が互いを知っていることが多く、時間をかけて協力し、研究で課されたものとは大きく異なる課題に取り組みます」とクレデ氏は言う。「また、多くのチームは高度で多様なスキルを持つメンバーで構成されており、メンバーの1人がリーダーを務めることもよくあります。」
クレデ氏によれば、ある研究では、ウーリー氏と研究チームが各グループの課題遂行中の会話を記録しており、これによりチームメンバーのやり取りをよりよく理解できる。一部のグループでは1人のメンバーが会話全体を支配していた一方、別のグループでは発言がより均等に分かれていた。1人が会話を支配すると、一般にチームのパフォーマンスは低下するとクレデ氏は述べる。
ある課題でのチームのパフォーマンスが、別の類似した課題でのパフォーマンスを予測する可能性はあるとクレデ氏は言う。しかし、研究者がこの関係を十分に理解するには、実際の組織におけるチーム構成や課題を研究に反映させなければならない。これを実験室で再現するのは難しいかもしれないと、クレデ氏は注意を促している。


