リーダーシップに必要なのは拡張ではなく自動化

A so-called media influencer takes pictures as a model presents a creation by Marina Hoermanseder on the sidelines of the Berlin Fashion Week Autumn/Winter 2017/2018 in Berlin, Germany January 19, 2017. REUTERS/Hannibal Hanschke - RC1A9366F480
Social media influencers can shape trends more profoundly than a global marketing campaign.Image: REUTERS/Hannibal Hanschke
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米国の成人は平均して1日4時間をスマートフォンに費やし、そのデジタル上の足跡によって、Amazonは購入する商品を予測し、Facebookは精神状態を把握し、人工知能(AI)は最も個人的な好みや信念を推測できます。

私たちは、得られるメリットのために、こうしたデータを進んで提供しています。自動化システムによって、世界中の人々と24時間365日つながり、リアルタイムの交通状況に基づいて移動を最適化し、あらゆる商品を翌日配送で購入し、いつでもどこでも見たいニュースを見て、頼むだけで好きな音楽を聴くことができます。

テクノロジーは権力の力学も変えています。最近の#MeToo運動が示すように、ソーシャルメディアは世論や政治勢力を瞬く間に結集させることができます。

口コミサイトにより、個人経営の企業も最も強力な多国籍企業と競争できます。主要なソーシャルメディアのインフルエンサーは、世界規模のマーケティングキャンペーンを上回るほど大きな影響力で市場の動向を形作り、導くことができます。つまり、テクノロジーは、感知し、つながり、自動化し、増幅し、拡張するための大きな新たな能力を切り開きました。

ビジネスと政府――別の時代の遺物

それなのに、大規模組織の意思決定構造は、なぜ産業革命以来ほとんど変わっていないのでしょうか。リーダーは今も、何層ものフィルタリングと集約を経て上がってくる過去のデータに基づいて意思決定しています。決定はその後、管理職層を順に下り、実務上の現実に合わせて調整されます。

このような環境では、リーダーはしばしば誤った前提に基づいて、十分な情報を踏まえた推測をせざるを得ません。また、組織がリーダーの決定どおりに動いていることや、期待した成果が実際に達成されていることを、証拠ではなく信頼に頼って判断することになります。

比較的安定した環境なら、このような仕組みでも十分かもしれません。しかし今、多くの組織は絶えず変革を続け、破壊的な変化に対応するため、複雑で部門横断的なプログラムを推進しています。CEOからは、一度に最大50件の戦略プログラムが進行していることも多く、その実行に大きな苦労を伴うという話をよく聞きます。

こうしたプログラムでは目標が流動的で、スケジュールは絶えず変わり、部門横断の協働が必要です。この複雑さを管理しようと、プログラム管理システムはチームにますます多くの情報を要求し、割り当てられた業務に使う時間とエネルギーを奪っています。

これほど大量の情報を求めているにもかかわらず、問題が起きると、原因はリーダーシップ層を除く全員が知っていた周知の事実だったと、リーダーが気づくことは少なくありません。

マネジメントの自動化

テクノロジーは、こうした状況をすべて変えることができます。リーダーが、自社についてGoogleが知るのと同じくらい把握していたらどうでしょうか。適切なテクノロジーを導入すれば、今日では組織内のほぼあらゆるやり取りのデータを収集し、すべての業績指標を集約できます。

AIを活用した分析ツールは、蓄積された膨大なデータをすばやく調べ、相関関係を特定し、正確で有用な予測を行えます。こうしたテクノロジーを適用することで、企業は多くの業務上の意思決定を実質的に自動化し、人間の判断が明らかに必要な領域にリーダーがより集中できるようになります。

マネジメントの自動化には、決定的な利点があります。システムが全員の業務内容と成果物を正確に把握するため、説明責任が明確になります。業績評価は、主観的な推測ではなく、状況に即したデータに基づいて行えます。コーチングやフィードバックは自動化し、個人に合わせて、必要な時に届けることができるため、敬遠されがちな年次評価のサイクルは不要になります。

組織内で情報を必要とする人なら誰でも、あらゆる情報を利用できるようにできます。また、協働ツールによって、リアルタイムの単一の事実認識を共有しながら、即座にコミュニケーションを取ることができます。

組織のある部分での行動が別の部分に及ぼす影響がすぐに見えるため、相互依存関係がはるかに明確になります。仲間同士の働きかけによってプロセスの順守を促し、各自が約束を果たすよう動機づけることもできます。日々の業務において、組織がほぼ自律的に運営されるようにすることが可能です。

『The Decoded Company』

これは空想科学なのでしょうか。ニューヨーク・タイムズのベストセラー『The Decoded Company』は、Klickという企業がテクノロジーと企業文化を切り離せないものにした経緯を紹介しています。医療分野を専門とするカナダのデジタルエージェンシーであるKlickは、デジタルテクノロジーを活用して、1)人材の能力を引き出すリアルタイムのコーチングを提供し、プロセスを自動化する、2)意思決定に役立つ第六感としてデータを活用する、3)人材を中心に据えた組織をつくる、という取り組みを先駆けてきました。

Klickの企業文化とシステムの中核にあるのは、役割とタスクの明確さです。同社が開発したプラットフォームは、すべてのリーダーと従業員に業務の進捗を知らせ、誰が何に責任を負うのかを明確に示します。

徹底した透明性の文化があり、プロジェクトチーム全員がプロジェクトのあらゆる側面について意見を述べることができます。業績に関するフィードバックは毎週行われます。また、あらゆる取引、やり取り、インプット、成果が「Wisdom Layer」と呼ばれるデータ層に保存され、直感とデータを組み合わせて豊かな洞察を導き出せます。AIは予測に基づく洞察をもたらし、契約が利益を生むか、採用候補者が活躍するかを会社が判断する助けとなります。

企業のほぼあらゆる側面を自動化し、拡張するこの実験は、目覚ましい効率化をもたらしました。従業員700人のKlickでは、財務担当者はわずか5人で、人事部門も年次評価制度もなく、事務アシスタントも驚くほど少数です。同社は、安定して40%の成長率を維持し、高い収益性を実現しているほか、自発的離職率を3%未満に抑えています(業界の一般的な水準は約20%)。さらに、社会全体への貢献も広く評価されています。

KlickのCEO、リーロム・シーガルはこう語ります。「Klickの企業文化を築く20年にわたる実験は、成功を促す好循環を生み出せるという考えに基づいています。私たちは豊富な環境データと自己申告データを活用して、社員に力を与え、意欲を引き出す環境をつくります。それが、社員のキャリアで最高の仕事をする助けとなり、それによってクライアントがより多くの仕事を依頼する理由が生まれ、その環境への投資が可能になります。この循環の鍵となるのは、情報やデータが責任を持って使われるという信頼と、リーダーである私たち自身も、社員に期待するのと同じように、率直で透明性の高い姿勢を示すことです。」

リーダーシップの進化

多くの業務プロセスを自動化できる時代には、リーダーは判断力と経験が真に価値を生む領域に、より多くの力を注げるようになります。ただし、そのためにはまず、説明責任、透明性、協働を基盤とし、データに基づく新たな組織モデルを受け入れる必要があります。

優れたリーダーを目指す人は、データサイエンスへの理解を深め、自身の経験、知性、洞察力を、豊富なデータセットや予測AIによっていかに拡張するかを学ぶことが求められます。

また、ソーシャルメディアを使いこなし、テクノロジーを通じて自らのビジョンを伝え、組織がそれを実現できるよう促す力も必要です。複雑な変革プログラムを実現するために必要なつながりを築き、連携を生み出す役割も担わなければなりません。そして、失敗は非難の理由ではなく、学びを深める機会だと示し、新たな文化的規範を築く必要があります。

リーダーは、透明性が双方向であることも受け入れなければなりません。組織との関わりを深めるほど、自身の業績も明らかになります。KlickのCEO、リーロム・シーガルがいつでも社内の誰がどこにいるか把握しているとすれば、Klickの全員も、彼がどこにいるかを把握しています。

すべてが記録される状況では、知らなかったと説得力をもって主張できるリーダーはいません。そして、あらゆる行動が記録されることで、リーダーがもたらす真の価値は誰の目にも明らかになります。

拡張か、自動化か

従来、組織のマネジメントを構成してきた業務の多くは、間違いなく自動化できますし、自動化すべきです。Klickのような企業は、それが可能であり、非常に大きなプラスの効果をもたらすことを実証しています。

一方、リーダーシップそのものの自動化は、可能でも望ましくもないかもしれません。しかし、テクノロジーによってリーダーシップを拡張すれば、企業はより効果的で機敏になり、より働きやすい職場になれます。

リーダーは、マネジメントの自動化を受け入れることも、データとAIが自身の能力を高める力を認めることも、恐れるべきではありません。どちらも、破壊的な変化が進む世界で緊急に必要とされる進歩です。さらに、テクノロジーが社外でこれほど効果を発揮している以上、組織内での活用はほぼ避けられません。

注:A.T. KearneyとKlickの子会社であるSensei Labsは、組織のパフォーマンス変革を支援する先進技術の導入に向けて提携しています。

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