ジェンダー格差の解消に関しては、比較的短い期間に大きな進展を遂げてきました。しかし、目指すべき水準にはまだ遠く及びません。
最新の『ジェンダー・ギャップ報告書』によると、世界全体で経済参加における格差の解消は59%、政治分野では23%にとどまっています。地域によっては、男女平等の実現までに1,000年かかる可能性があります。
娘や孫娘たちが同じ課題に直面しないよう、私たちは今、何ができるでしょうか。世界のリーダー6人に意見を聞きました。
エミリー・カーター、プリンストン大学工学・応用科学部長
「あなたがその職に就けた唯一の理由は、女性だからだ」。その言葉を聞いたのは30年前ですが、昨日のことのように覚えています。私の能力を疑う言葉を浴びせられたのは、その時が初めてではなく、最後でもありませんでした。私はファイ・ベータ・カッパの一員としてカリフォルニア大学バークレー校を卒業し、間もなくカリフォルニア工科大学で博士号を取得するところで、UCLAで初めて教員職に就いたばかりでした。
私からの助言はこうです。人生に意味を与えてくれる仕事を見つけ、それを追求する気持ちを誰にもくじかせないでください。偏見に対する最善の答えは、建設的な行動です。懸命に取り組み、優れた成果を上げれば、その仕事が自らを語ってくれます。侮辱に屈せず、相手の主張の誤りを冷静かつ専門的に指摘しましょう。

この戦略で私はどこまで来たでしょうか。米国の3つの国立アカデミーのうち2つの会員となり、現在はプリンストン大学工学部長を務めています。あなたにもできます。
エリン・シュック、最高リーダーシップ・人事責任者、アクセンチュア
2年前、プリンストン大学女子バスケットボールチームのヘッドコーチ、コートニー・バンガート氏がフォーチュン誌の「最も影響力のある女性」ディナーで話すのを聞く機会に恵まれました。キャリアを築く中で、父親から「自分が上がるときには、周りの人も引き上げなさい」と助言されたという話をしてくれました。
この助言は、簡潔でありながら深い意味を持っています。一人ひとりの力で、ガラスの天井にひびを入れることはできます。しかし、周囲の女性たちに投資すれば、ひびを入れるだけでなく、ガラスを粉々に砕くために必要な力を結集できます。

コートニーの言葉を聞くと、私を支え、機会を与えてくれた多くの女性や男性を思い出します。そのことが、恩返しをする責任をいっそう強く感じさせます。あなたには、上に進むときに誰かを引き上げる機会があるでしょうか。次世代の女性たちがキャリアの目標を実現できるよう、どのように恩送りができるでしょうか。
ナンシー・A・スマリ、エグゼクティブ・ディレクター、ネゲスティ・スマリ財団
社会起業家として、そして何より、ビジネスの世界を歩む若い女性として経験を重ねる中で、私は多くの大切な助言を受けてきました。その中でも特に心に残っているのは、次のことです。
あなたがどんな人であるかは、単なるアイデンティティではありません。それはあなた自身の真実です。残念ながら、情報が絶え間なく流れるこの時代は圧倒されることも多く、自分が本当は何者なのかをほとんど感じられないまま、自らの真実から切り離され、心の軸を失ってしまう人も少なくありません。
しかし、常に内面を見つめ、外へとつなげていけば、その逆ではなく、若い女性たちは成功への第一歩を踏み出せます。自分の長所も短所も受け入れましょう。そうすれば、自分が何者なのか、そして世界にどのような良い変化をもたらせるのかを、より深く理解できるようになります。そうすれば、このガラスの天井を打ち破れるでしょう。

ウムラン・ベバ、上級副社長兼最高人事責任者、グローバル人材管理部門、ペプシコ
母国トルコがフォーラムの『世界ジェンダー・ギャップ報告書』で下位に位置していることを残念に思いますが、前向きな変化に貢献するため、自分にできることはすべてしたいと思っています。
私が可能性を最大限に伸ばせるよう願う家族のもとに生まれたのは幸運でした。家族は、私に人生で最高の機会を与えようと、できる限りのことをしてくれました。その後も、キャリアや海外赴任を支えてくれる夫と子どもたちに恵まれました。
この経験から、家族、企業、国のそれぞれのレベルで、ジェンダー平等の実現には文化の変革が欠かせないと学びました。若い女性に自信を持ち、勇気を示し、リスクを取り、キャリアにおいて難しい選択をするよう伝えることはできます。そして、もちろん、そうすべきです。しかし、より深い文化の変化がなければ、平等に向けた進展は停滞してしまいます。

こうした文化の変化を起こすには、どう始めればよいでしょうか。私は長年トルコにいましたが、30年のキャリアを通じて香港やドバイでも働き、現在はニューヨークにいます。その経験から、世界的な視野を得ました。その結果、他者のニーズを理解することを強く信条としています。ペプシコでは、管理職における男女比の均衡達成と、働く介護者への支援に取り組んでいます。そのため今年から、ニューヨークのグローバル本社内で保育サービスを提供し、テキサス州では職場近隣で保育サービスを提供します。海外拠点の一部では、すでに同様の取り組みを行っています。
今日のビジネス界には、消費者を代表し、異なる視点をもたらし、異なるリーダーシップのスタイルで貢献する女性がもっと必要です。しかし、この新たな現実に適応するために企業や国が文化を変えなければ、どうして進展を期待できるでしょうか。
ジャスティン・カッセル、カーネギーメロン大学コンピューターサイエンス学部副学部長
「君ほど独裁的な若い女性には会ったことがない」と、上司は私が反論したことを批判するメールに書きました。学術界での経験がほとんどない新任教員だった私にも、彼は同じ学科の男性には同じことを言わなかっただろうと思えました。「独裁的」という言葉を使うことも、教授を「若い男性」と呼ぶこともなかったでしょう。
それから21年後、注目度の高い基調講演を終えた私は、主催者に感想を尋ねました。主張をより説得力のあるものにするため、ほかに盛り込める点はあったでしょうか。「素晴らしかったです」と主催者の一人は言いました。「でも、もっと笑顔を見せたほうがいいですよ。笑顔があると聴衆を引きつけられます」。私は唇をかみ、彼にこう言うのをこらえました。「もっと笑顔を見せるべき」+「女性」で検索すると、なぜそう言われるのかを説明する結果が約1,200万件も出てくる(本当です)と。男性と同じように、私たちが何を言うかという中身こそが重要で、それをどのような見た目で伝えるかではないのです。映像を見ると、実際に私は笑顔でした。少なくとも、ほかの男性登壇者と同じくらいには。
人工知能の社会的側面に取り組んでいるのは、私が「女の子」だからなのかと記者に尋ねられたときも、私は唇をかむようになりました。しかし、こうした発言はよくあるため、私は一つの対応策を考えました。女性はすでにコンピューター科学者になるための障壁を乗り越えてきたので、分野内の境界もより容易に破り、最も刺激的な仕事に取り組める可能性が高いのではないかと、誠実に答えることです。
「ガラスの天井」とは、実際には互いに矛盾する一連の固定観念です。つまり、「コンピューター科学者」という職業に対する固定観念が、「女性」という性別に対する固定観念と相いれないのです。そのため、女性はコンピューター科学者として成功するほど強くないと思う人もいれば……強い女性コンピューター科学者は、女性として受け入れられるほど女性らしくないと思う人もいます。私たちは皆、世界を理解しやすくするために固定観念を使っています。物事を新たに見る代わりに、目にするものを既存の分類に当てはめるのです。
では、どうすればよいのでしょうか。この現象についてたくさん話すことが大切です。個人的なこととして受け止めないことも大切です。「情熱的」ではなく「攻撃的」と呼ばれても、あまり傷つかないよう、私はもっと打たれ強くなろうとしています。ガラスの天井はそこにあり続けるでしょう。問題は、逃げ出して遮るもののない空を探すのか、それとも、情熱的で歯に衣着せぬ私に向けられる無理解な反応に左右されず、またそれを変えるために、愛する仕事に集中し続けるのかです。

アナンディ・マニ、行動経済学・公共政策教授、オックスフォード大学
ガラスの天井を打ち破るには、女性の前進を阻む問題に取り組む必要があります。そのためには、政治的意思決定の立場に就く女性を増やすことから始めなければなりません。

インドを例に挙げましょう。調査によると、女性の政治代表者がいることは、ジェンダーに基づく犯罪への対策として効果的です。女性政治家がいる地域では、女性に対する暴力などの犯罪について、警察が記録と対応の両面でより積極的になります。また別の調査では、村レベルの地方自治体に女性議員がいると、女性は村議会の会合により頻繁に出席し、そこで懸念を表明するために発言することが示されています。
政治への女性の参画がジェンダー平等の実現に大きな違いをもたらすことは、あらゆる証拠が示しています。それでも、ほぼすべての国で政治は依然として男性優位です。たとえば米国では、政治における男女比の均衡達成まで、さらに500年かかると予測されています。
インドの取り組みが犯罪など女性の懸念への対処に効果を発揮したのは、少数の要職ではなく、政府の最も低い階層に多くの女性政治家を登用するクオータ制があったからです。ルワンダなどでも、女性の政治参画を促すクオータ制が成果を上げています。他の国々でも、同様の措置を導入する時期かもしれません。


