上位企業のうち、ほんの一握りしか、米国では女性が率いていません。
状況を変え、より多くの女性をリーダーの地位に登用しようとする取り組みは、主に平等の観点から進められてきました。しかし、より多くの女性に責任ある立場を任せることには、ビジネス上の利点もあるのでしょうか。
男女のリーダーシップスタイルの違いに関する先行研究では、女性はより協調的で関係性を重視する方法で意思決定を行うため、さまざまな集団や資源をより効果的に管理できると示唆されてきました。しかし、それが実際により良い成果につながるかどうかは明らかにされていませんでした。
私たちが共同執筆した新たな研究により、特定の状況では、女性が率いる企業が男性の率いる企業より実際に優れた業績を上げることを示すデータが得られました。
女性のリーダーシップを支持する根拠
ゴンサロ・モリーナ=シエイロ氏、マイケル・ホームズ氏とともに行った私たちの研究は、創業間もない企業を急成長させようとする起業家に焦点を当てました。
私たちはまず、カウフマン企業調査の結果から調査を始めました。この調査では、2004年に設立された4,928社を対象に、2011年まで毎年調査を実施しました。データベースには、売上高、従業員、知的財産など、業績に影響する要因の把握に欠かせない情報が数多く含まれています。また私たちの研究に関わるものとして、事業を率いる主要な起業家や上級管理職の学歴、経験、性別などの詳細も収録されています。
ほとんどの起業家は従業員が少なく、大きな成長を望まない小規模な事業を営んでいます。しかし一部は、私たちが「高成長ベンチャー」と呼ぶ企業を率いています。こうした企業は、しばしば次のように定義されます。すなわち、3年間にわたり、雇用が年率換算で20%以上増加する企業です。
こうした企業は経済活動を支える重要な原動力であり、米国だけでも年間数百万件の雇用を生み出し、また、ここ数十年に米国で創出された新規雇用の過半数を担っています。
私たちの研究では、ある年に従業員数の伸び率が標本中の起業家企業全体の上位10%に入る企業を、高成長ベンチャーと定義しました。その大半は男性起業家が率いていましたが、約4分の1は女性が経営していました。
協調型の経営スタイル
私たちの研究ではまず、女性が率いる企業と男性が率いる企業の従業員数の伸びを比較しました。
予備分析では、全体として、女性が率いる企業は高成長を遂げる可能性が低いことが分かりました。しかし、他の研究が女性の組織にもたらす強みを示していたため、それだけではないと考えました。
女性リーダーの協調性や関係構築に関する知見を踏まえ、女性は上級幹部や管理職の能力を引き出すことに特に長けているはずだという仮説を立てました。例えば、多くの女性リーダーは、従業員との関係を築けば、従業員が大切にされていると感じる双方にとって有益な状況を生み出せると主張しています。これは、権威的すぎると思われることで女性が直面する二重拘束を避ける助けにもなります。
そこで私たちは、人的資本と経営人材を示す2つの指標を調べました。大学卒業以上の学歴を持つ上級管理職の数と、起業経験のある上級管理職の数です。
結果は明確でした。管理職の学歴がより高い女性主導の企業は、経営陣の経験水準が同程度の男性主導企業よりも、雇用を大きく伸ばす可能性が高かったのです。
一方、起業経験の水準は、高成長に影響しませんでした。
投資家と資本
さらに、所有持分の数と金融資本という2つの変数も調べました。
企業が成長する重要な方法の一つは、資金を調達することです。そのために、企業はしばしば資金援助と引き換えに株式を譲渡します。しかし、経営や戦略など社内の意思決定に投資家が口を出せるようにすると、対立や分裂を招くことがあります。また、上級管理職間の力の均衡を崩すこともあります。
一方、私たちの研究で興味深かったのは、企業の持分を保有する上級管理職や投資家が多い場合、女性が率いる企業は採用を急速に拡大し、成長する可能性が高かったことです。研究では、女性リーダーは対立の管理に優れていることが多いと示されており、これは私たちの結果を説明する助けになります。
資本については、多くの研究が、女性起業家が直面する資金調達の難しさ について論じてきました。それでも、ようやくスタートアップのための金融資本を確保できたとき、女性起業家の企業はどのような成果を上げるのでしょうか。
それを調べるため、データベースのうち、ベンチャーキャピタル企業から資金援助を受けた企業だけを対象にしました。ここでも、女性が率いる企業は、男性が率いる企業より採用の伸びが大きいことが分かりました。
他の研究では、女性起業家は少ない資源でより多くを成し遂げ、男性起業家に比べ、投資資金当たりの売上高をより多く生み出せることが示されています。
女性のスキルと経験を生かす
私たちの研究の目的は、女性が率いる企業は、高成長かどうかにかかわらず、男性が率いる企業より業績が良いと示すことではありません。
むしろ、女性は企業の成功に大きな違いをもたらし得る、価値ある独自のスキルや経験を持ち込むことを、私たちの研究は示唆しています。しかし、女性が経営する企業は非常に少ないため、女性のスキルや経験は十分に生かされていません。
もちろん、この状況の改善にはよく知られた方法が数多くあります。例えば、より充実した家族休暇制度を導入して女性がキャリアを継続しやすくすること、女性起業家を後押しする育成プログラムを設けること、金融資本へのアクセスを改善する方法を探ることなどが挙げられます。
女性起業家により多くの機会を与えることは、女性自身のためになるだけではありません。経済全体にとっても有益です。


