ダボス会議から半年、リーダーたちは中国で開催された「サマー・ダボス」に集まり、今後数カ月の優先課題を振り返りました。
AIには生産性を高める可能性がありますが、その恩恵は公平に分配されなければなりません。
経済の不確実性が続くなか、アジア諸国はエネルギー転換を含め、新たな成長の原動力を模索しています。
世界経済フォーラムがダボスにリーダーを集め、今後1年の世界的な最重要課題と、それへの取り組み方を議論してから、すでに半年が経過しました。
その後、DeepSeekが世界を席巻し、米国による関税の引き上げと引き下げが繰り返され、中東情勢も緊迫の度を増しています。
では、年後半に入るにあたり、政治や企業のリーダーたちの優先課題はどのように変化し、今は何に注力しているのでしょうか。
フォーラムの「サマー・ダボス」- 新興リーダーの年次総会(AMNC) -は6月末に天津で開催され、出席した1,700人のリーダーに、過去半年を振り返り、先を見据える機会を提供しました。
世界経済フォーラムのリーダーたちが、これらの議論を振り返り、「ラジオ・ダボス」において、年後半の優先課題について語っています。世界的な協調がこれまで以上に求められる中での見解です。
一週間にわたるセッションから浮かび上がった、エネルギー転換、AI、経済に関する主要な優先課題は以下のとおりです。
1. AIをより包摂的にする
「エージェント型AI」や「アルゴリズム・マネジメント」は今や定着した概念となっていますが、同時に、フォーラムが1月に発表した「仕事の未来レポート」で示されたように、AIが雇用にもたらす混乱も深刻化しています。近年の報道でも、AIが初級職に与える影響が盛んに取り上げられています。
NTTデータ・アジア太平洋のCEOであるジョン・ロンバード氏は、責任ある規模拡大を呼びかけました。「この技術には大きな可能性がありますが、正しく活用するためには、適切なガバナンス、倫理、そして労働力の包摂と組み合わせる必要があります。」
シンガポールは、ブレークスルー技術のみに注力するのではなく、すべての国民と企業がその恩恵を受けられるよう、幅広い層へのAI導入を優先している、とローレンス・ウォン首相はAMNCで述べました、。
「私たちが注目しているのは、最先端で何が起きているかだけではありません。どこでブレークスルーが生まれているのか、どの企業が次のユニコーンになるのか、そしてAGI(汎用人工知能)がいつ実現するのかといったことに、メディアの注目が集まっています。
「これらはもちろんシンガポールにとって重要な議論ですが、私たちはAIを別の方法で活用したいと考えています。それは、その恩恵が幅広い層に行き渡るようにすることです。」
そのためには、AIにおけるジェンダー格差を解消することが不可欠です。フォーラムの「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2025」によれば、AI関連の職務において、女性は男性に比べてC-suite(経営幹部層)への昇進が少ない傾向にあります。
また、女性は自動化やGenAIによって代替されつつある職務に就いている可能性も高く、例えば事務アシスタントなどが挙げられます。そして、女性が担っている職務は、男性が担っている職務に比べて、AIによって能力が拡張される可能性が低くなっています。
スキルアップ、教育、そして女性が実際にSTEM分野の職務に応募するよう後押しすることが、今後の鍵となります。Versatileの執行会長兼共同創業者であるメイラフ・オーレン氏はこう述べています。「適格な候補者は数多くいますが、適切な職務に応募していないだけです。」
「企業は女性に対するトレーニングをより積極的に提供し、女性がAIやAI関連産業により適応できるよう支援すべきです」と、上海生成式人工知能エコシステム開発の理事長であるヤン・ジンジン氏は述べました。
詳しくは以下の動画をご覧ください:
AIに関する主要セッションはこちらからご覧いただけます: 「AI+の時代」;「エージェント型経済の構築」;「AIにおける女性」
2. 新たな成長の原動力を見出す
7月9日は、米国が課した「相互」関税に対する90日間の猶予期間が終了する日です。そのため、貿易相手国は、より高い関税を回避するため、取引の合意を急いでいます。
結果がどうであれ、メッセージは明確です。地政学が世界経済に影響を及ぼしており、フォーラムの「チーフ・エコノミスト見通し」で5月に調査されたチーフ・エコノミストの大多数が、米国の政策は長期的な構造変化をもたらすと回答しています。チーフ・エコノミスト見通し。また、その結果として、経済の不確実性の高まり、企業の意思決定の遅れ、景気後退リスクの増大を予想する声も多く聞かれました。
では、経済の不確実性が続く中、新たな成長の原動力は何か、そしてリーダーたちはどのように考えているのでしょうか。
エジプトの投資・対外貿易大臣であるハッサン・エルハティーブ氏は、関税ではなく投資とパートナーシップを通じて、均衡の取れた貿易協定を結ぶよう各国に促しました。
一方、セネガルのウスマン・ソンコ首相はアフリカへの投資とパートナーシップを呼びかけ、「アフリカは、すべてがまだこれから築かれるべき唯一の大陸です。産業、デジタル、人口動態の面で計り知れない可能性を秘めています。今こそアフリカに注目すべき時です」と述べました。
アメリカン大学のロバート・クープマン氏は、今後の動向を予測する指標として、関税よりも労働市場と移民政策に注目すべきだと警告しました。
同氏は、移民政策は「生産量、経済で循環する資金量、支出を生み出す人の数を覆しかねない」と述べています。
すべての目は、台頭する経済大国としてのアジアに注がれています。国際通貨基金によれば、同地域は現在、世界の成長の60%以上を牽引しており、世界最大級かつ最も革新的な企業の多くを擁しています。
ベトナムのファム・ミン・チン首相は、計画経済から「多分野的」かつ「グローバルに統合された」経済への移行という、同国の成長モデルを紹介しました。
中国の目覚ましい経済変革は、過去40年間で8億人を貧困から脱却させました。しかし、同国は今後どこへ向かうのでしょうか。李強首相は、高品質な発展に向けて国内需要を押し上げることが同国の戦略であると述べました。
「今日の中国では、高速鉄道が数多くの山や川を横断しています。電気自動車は何百万世帯にサービスを提供し、人工知能は何千もの産業を支えています。中国のイノベーションはオープンであり、オープンソースです。」
経済に関する主要セッションはこちらからご覧いただけます: チーフ・エコノミスト・ブリーフィング;米国経済の読み解き;貿易:動向と終局
3. エネルギー安全保障と公平性の両立
成長の原動力の一つはエネルギー転換であると、S&Pグローバルのグローバル・チーフ・エコノミストであるポール・グルーンワルド氏は述べています。「私たちは1世紀にわたり化石燃料インフラを構築してきました。今、太陽光、風力、蓄電、送電に投資することで、各国の資本ストックを高め、GDPを押し上げています。」
フォーラムの新刊「効果的なエネルギー転換2025」は、エネルギー転換の加速に向けた進展を明らかにしていますが、それは戦略的な国家的優位性として捉えられる必要があると指摘しています。
「特に西側諸国がすべきことは、エネルギー転換の目的について考え方を改めることです」と、ニューサウスウェールズ大学の国際政治経済学教授であるエリザベス・サーボン氏は述べています。
「それは単なる気候変動への対応にとどまりません。エネルギー安全保障、経済安全保障、社会安全保障、そして地政学的安全保障をも高める、包括的な安全保障のアジェンダを推進することです。」
「中国は……エネルギー転換が国家安全保障を大きく強化する要因であることを理解しています。」
中国は、再生可能エネルギー、系統連系、国内技術革新を拡大させ、エネルギー安全保障と経済競争力の両方を強化しています。
ALTERRAのCEOであるマジッド・アル・スワイディ氏は、万能の解決策は存在しないと述べています。「地域ごとに、適切な政策、市場の成熟度、適した技術を組み合わせた、オーダーメイドの対応が必要です。」同氏は、グローバル・サウスにおける携帯電話の普及を例に挙げ、「農村部で携帯電話を利用できるようにできたのであれば、クリーンエネルギーでも同じことができます。必要なのは同様の支援環境だけです」と語りました。
ヨハネスブルグ大学の経済学教授であるエリカ・クレーマー・ムブラ氏は、アフリカには大きな可能性があるものの、慢性的な資金ギャップが存在すると警告しました。
「サハラ以南のアフリカは、再生可能エネルギーの大きな可能性を秘めています。しかし、設備投資の90%は依然として中国と先進国に向かっており、需要の伸びの80%は、アフリカを含む新興国で起きています。」
エネルギー転換に関する主要セッションはこちらからご覧いただけます: エネルギー転換の現状確認;変化の要素:エネルギーと素材。


