ウォートン校の「リーダーのためのナノツール」は、15分以内に学んですぐ使い始められる、迅速で効果的なリーダーシップツールです。
リーダーとして優位性を保つには、既存の強みを土台に、新たな要求に応えられるよう進化する必要があると、マイケル・ユースィームは述べています。
リスク管理からデジタルトランスフォーメーションまで、実践すべき4つの重要なルールを紹介します。
寄稿者
マイケル・ユースィームは経営学教授であり、ウォートン校の教員ディレクターを務めています。リーダーシップ・変革管理センターおよびマクナルティ・リーダーシップ・プログラムの責任者を務め、『『The Edge: How Ten CEOs Learned to Lead — and the Lessons for Us All(エッジ:10人のCEOがリーダーシップを学んだ方法、そして私たち全員への教訓)』の著者でもあります。
目標
時代や状況が変化する中でも優位性を保つため、既存のリーダーシップの強みに新たな力を加える。
ナノツール
リーダーシップを学ぶことは、一度きりで終わる課題でも、直属の部下を持つ責任を担う前にチェックを入れる項目でもありません。20年間にわたり比較的安定した時期にGEを率いたジャック・ウェルチのようなCEOは、キャリアを通じて同じ基本的なアプローチや手法を適用できましたが、今はそうはいきません。世界市場やサプライチェーン、テクノロジー、規制要件、社会の進歩は絶えず変化し、リーダー個人と企業が存続し成長するために、新たな戦略と対応を求めています。リーダーとしてキャリアを通じて優位性を保つには、既存の強みを土台に、新たな能力を加え、時代の要求に応じて進化する必要があります。
私が『The Edge』で取り上げたCEOたちの事例に加え、今日、あらゆる業界のあらゆる企業のリーダーに不可欠な4つの重要ルールを特定しました。これらのスキルを取り入れるにあたっては、今後数年のうちに、さらに別のスキルも必要になることを念頭に置いてください。こうした更新事項を見つけ、身につけ、実践することは継続的なプロセスです。
実践のポイント
1. リスクを管理する。1997年にダボスで開かれた年次総会で、世界経済フォーラムが開催した約250のセッションのうち、リスクを明確にテーマとしたものはわずか12でした。2010年代には、その割合はほぼ50%に達しました。リスク管理への関心の急増は、リスクそのものが急増していることを反映しています。一定のリスクを計算の上で取り、別のリスクを避けることは、あらゆる企業の議題、ひいてはリーダーの行動指針において、重要な要素となっており、今後もそうあるべきです。私の調査によると、経営幹部は現在、脅威や混乱要因をより明確かつ熟慮した形で評価する傾向があり、リスク管理は企業リーダーシップに不可欠な要素となっています。気候変動、金融危機、テロ攻撃など、どのような危機に対してもチームや企業が備え、レジリエンスを築けるよう監督するには、リスク管理の複雑な仕組みを理解する必要があります。例えば、企業のリスク管理を「サイロ化の解消」によって改善するよう求める声は高まっており、これを進めるにはリーダーシップによる指針と監督が欠かせません。
2. 市場外の支援を提供する。ルイス・バレステロスが世界の大企業3,000社を詳細に調査して明らかにしたように、企業による寄付はビジネスの規範となっています。2000年に災害救援へ何らかの寄付をした企業は3分の1未満でしたが、2015年には90%を超え、寄付額も平均で10倍に増えていました。こうした寄付が熟慮の上で行われれば、寄付する側と受け取る側の双方に利益をもたらします。いわゆる「善いことをしながら、事業もうまくいかせる」という考え方です。地震や感染症などの災害に見舞われた国で事業を営んでいるなら、この新たな規範に従って支援を行いましょう。さもなければ、企業や公的機関のリーダーから批判を受ける覚悟が必要です。災害被災者への支援が最も大きな価値を発揮するのは、企業がすでに事業を展開している地域です。そうした地域への寄付は、その地域の発展の軌道を取り戻し、長期的には企業にも利益をもたらします。一方、寄付がなければ、地域の発展が10年にわたって損なわれる可能性があります。
3. ステークホルダーを多様化する。ビジネス・ラウンドテーブルは2019年、企業は株主価値だけに焦点を当てる姿勢から脱却し、顧客、地域社会、従業員、サプライヤーにも幅広く責任を果たすべきだと表明しました。米国で有色人種が警察に殺害された事件が大きく報じられた後、2020年には大手企業が反人種差別・反性差別の取り組みを支援するプログラムや寄付を打ち出しました。企業のリーダーには、組織の包摂性を高め、女性嫌悪や人種差別に明確に立ち向かうことが、今後ますます求められるでしょう。
4. 企業をデジタル化する。人工知能、データ分析、デジタル技術を構築し、展開する方法を理解することも、あらゆる場所のリーダーにとって不可欠な能力となっています。その影響を研究した大学研究者2人は、「プロセスがソフトウェアに組み込まれ、データ、分析、AIが業務活動や経営判断のますます大きな割合を左右するにつれ、企業という概念そのものが進化している」と述べています。リーダーには、詳細な技術知識を身につけるというより、これらを含むさまざまな機能への深い理解が求められます。
リーダーとしてキャリアを通じて優位性を保つには、既存の強みを土台に、新たな能力を加え、時代の要求に応じて進化する必要があります。
組織での活用例
1. ハンス・レッソーは、レゴで戦略的リスク管理担当のシニアディレクターを9年間務めました。その間、同社は深刻な財務状況から立ち直り、わずか数年後には利益を4倍に伸ばし、アップルを上回りました。レッソーはこの成長の理由として、経営上層部の関与と、より経験豊富な人々から学んだことの2点を挙げています。レゴは、リスク管理の導入で他社をリードしていた業界である銀行からCFOを採用しました。そのCFOをはじめとする幹部たちは、レッソーが強固なリスク管理体制を構築し、組織に定着させるための時間を与えました。また、レッソーはノボ ノルディスクやシェル石油など他社の戦略的リスク管理担当者のネットワークからも学びました。
2. 2010年のチリ地震から数時間以内に、多国籍鉱山会社のアングロ・アメリカンは救援に1,000万ドルを拠出すると表明し、最初に名乗りを上げた大規模な民間寄付者となりました。資金は住宅や学校の再建、緊急の水道・電力サービスの整備に充てられました。同社が事業を大きく依存する市場での支援であり、地域社会と企業の双方に利益をもたらしました。
3. ドアダッシュのCEO兼共同創業者であるトニー・シューは、声明の中で次のように述べました。「皆さんと同じように、私はジョージ・フロイド氏の非人道的な殺害について読みました……。アマード・アーベリー氏、ブレオナ・テイラー氏、そして長年にわたる多くの人々の殺害に続く今回の不正義を受け、私の感情は怒りから悲しみ、そして深い落ち込みへと揺れ動いています。」シューは、人種差別と闘うために同社が実施する具体的な行動を4つ示しました。その中には、ブラック・ライブズ・マターへの50万ドルの寄付や、「過小代表の有色人種を含め、リーダーシップチームの多様性を高めるため、進捗を業績評価や昇進に結びつけ、多様な候補者に面接していない採用申請は却下する」ことで自らに責任を課すことが含まれていました。
知識を実践へ:関連するエグゼクティブ教育プログラム
マイク・ユースィームは、アドバンスト・マネジメント・プログラムの教員責任者を務め、リードする取締役会:価値を生むコーポレートガバナンスを主宰しています。



