テクノロジーはいかにリーダーシップを変革し、従業員の利益につなげるか

A view shows the working space with a vertical garden at Le Village by CA, a value-creating start-up incubator of banking group Credit Agricole, in Paris, France, July 7, 2017. Picture taken July 7, 2017. REUTERS/Gonzalo Fuentes - RC1FD060E0C0
Technology can liberate leaders from the day-to-day, leaving them to focus on strategic transformation and staff wellbeing.Image: REUTERS/Gonzalo Fuentes
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前回の記事「リーダーシップを「自動化」する理由」では、分析技術と人工知能の進歩によって、生活のほぼあらゆる側面をつなぎ、自動化し、拡張する能力が生まれたことを説明しました。これまでのところ、こうした驚くべき技術が仕事に及ぼした影響は限定的です。職場の慣行はしばしば煩雑で、現実からかけ離れ、そして、そう、あまりにアナログなため、デジタル化がますます進む世界でリーダーが力を発揮する妨げになっています。

現在、利用可能なテクノロジーは、私たちがマネジメントと呼ぶ業務の多くを自動化し、リーダーがリードする時間を増やせます。これは極めて重要です。デジタル化による変化の速度がますます速まるなか、リーダーには、ビジネス環境の変化を的確に予測し、組織の機動力を大幅に高めることが求められています。リーダーは定型業務から解放され、戦略的変革により多くの時間を割く必要があります。

底辺へのデジタル競争

今日の組織は、テクノロジーの激流にさらされています。モノのインターネット、ロボティック・プロセス・オートメーション、3Dプリンティング、ブロックチェーン、拡張現実、仮想現実は、いずれも、より速く、より安く、そしてAIのおかげで、より自律的に物事を実行できると約束しています。

経営幹部に、こうしたテクノロジーをできるだけ速やかに導入しないという選択肢はほとんどありません。あらゆる市場は戦場さながらで、テクノロジーを活用して仲介を排除し、商品をコモディティ化し、既存の事業者を迂回しようとする動きがあふれています。一方、選択肢が次々と増えるなか、顧客はニーズを迅速かつ便利に、可能な限り低価格で満たすことを期待しています。ある企業が期待に応えられなければ、顧客は応えてくれる企業へ取引先を変えるでしょう。

テクノロジーは常に、より低いコストで顧客価値を高めるうえで不可欠でした。一見すると、これは利益を伴う成長を実現する確実な方程式のように思えます。しかし実際には、デジタル技術の進歩による成果を維持するのは難しいと、多くの企業が感じています。競争力を保つために、得られた利益の大半は顧客に還元しなければなりません。さらに、多くの市場は成長に限界があり、テクノロジーへの投資に見合う収益の伸びをもたらせません。こうした厳しい現実は、企業を底辺へのデジタル競争へと誘いかねません。

テクノロジーが人に取って代わり、雇用が失われるなか、仕事の未来に対する社会の懸念も広がっています。しかし実際には、テクノロジーが人間の潜在能力を引き出し、効率と有効性をかつてない水準に高めることで、仕事の性質が変わる可能性のほうが高いようです。

リーダーシップの課題は、新たなテクノロジーを活用して効率性を新たに生み出すだけでなく、人間の創造性、創意工夫、判断力も高めることです。テクノロジーでリーダーシップを拡張すれば、リーダーがこの課題に応え、真の将来の繁栄を実現する力を大きく高められます。

アジャイルチームと実用最小限の製品だけでは不十分

「デジタル組織」への変革の大きさに圧倒されたリーダーは、しばしば自律型チームをつくることに終始し、その後、チームが効果的にイノベーションを起こせる環境を整えようとします。

しかし、このアプローチでは、デジタル化された世界での短期的な効果と長期的な成功の双方が制限される可能性があります。組織の大部分が変わらないままでは、なじみのない解決策を実質的な規模で導入するのは非常に困難です。組織の人材の多くが関与しないままとなり、その成長と適応の可能性がほとんど活用されません。

導入が最も容易な領域に高度な分析、AIなどのテクノロジーを適用し、実用最小限の製品を迅速に提供しようとする傾向は、こうした欠点をさらに深刻にしかねません。このアプローチは、やがて落とし穴となる可能性があります。新しいテクノロジーでできることをいくつか見つけるほうが、そこから持続的な価値を引き出す方法を見極めるより、はるかに簡単だからです。

テクノロジーで人間の洞察力と能力を高める

取り組む課題によっては、分析やAIなどの新しいテクノロジーは非常に強力な力を発揮する一方、まったく役に立たないこともあります。激動する業界の未知の領域を進むには、機械にはない想像力、判断力、文脈を捉える感覚が必要です。対照的に、人間はこうした思考を得意とすることが多いものです。残念ながら、ほとんどの人には洞察を導く情報も、その洞察を行動に移す力もありません。

取り組む課題によっては、分析やAIなどの新しいテクノロジーは非常に強力な力を発揮する一方、まったく役に立たないこともあります

解決策は、人間の活動を置き換えるのではなく、拡張するために新しいテクノロジーを使うことです。目標は単に新しいテクノロジーを適用することではなく、最も力のある人々を結集させ、組織が直面する最も難しい課題に取り組み、最も魅力的なビジネス機会を追求できるようにすることです。

そのためには、ピラミッドの頂点にいるリーダーシップチームが指示を出す形から、必要に応じて提供されるリーダーシップ、あるいはサービスとしてのリーダーシップへと、大幅に捉え直す必要があります。テクノロジーは、組織全体に広がる人間の資質を一つの力として結集し、最も重要なことに集中させる統合型リーダーシップ体制を可能にします。

リーダーシップを拡張する3つの原則

組織のパフォーマンスを高め、リーダーシップを拡張するために新しいテクノロジーを活用する際の指針として、3つの原則を提案します。

1. 人間中心

人間中心とは、創意工夫、判断力、文脈化、創造性、社会的交流といった人間の資質を高めるためにテクノロジーを使うことです。つまり、人間をアプローチの中心に据え、テクノロジーを人間の成果に取って代わるものではなく、その実現を後押しするものと捉えることです。

テクノロジーは、人々の生活をより楽にし(実際にはそうなっていないことも少なくありません)、生産性と充実感を高めるものであるべきです。その第一歩は、使いやすく、抵抗なく利用できるユーザーインターフェースと体験をつくることです。

組織がこれからの課題に応えるには、各自の業務に必要な情報だけでは不十分です。人々は組織全体に対する自分の影響を理解し、取り組みを調整して継続的に修正できる必要があります。そのため企業は、人々をつなぎ、集合知を活用するテクノロジーを優先すべきです。そうすることで、人々は自分が変化をもたらしている証拠を得て、意欲を取り戻し、組織の結束を大きく高められます。

2. 全体をつなぐ

行動を伴わない戦略は単なる空想です。戦略を実現するには、人々が効果的に協働できなければなりません。また、その経験を記録し、今後の取り組みを改善する共有学習の源とする必要があります。

テクノロジーは、戦略目標について共通理解を促し、足並みをそろえる助けになります。しかし、テクノロジーを警察官のようにしてはなりません。テクノロジーを使って企業内の統制を強めたり、不必要な遵守を求めたりする誘惑に、リーダーシップは抗わなければなりません。そうすれば、人々を目標達成に向けた取り組みに巻き込む努力が損なわれます。むしろテクノロジーはコーチとして機能し、組織の統合型リーダーシップが定めた目標を追求する人々が、自らの可能性を探るのを支援すべきです。

協働型のソーシャル・エンタープライズツール、とりわけタスクベースのシステムを使えば、チームは組織の境界を越えて協働し、効果的な成果を支える情報、指針、専門知識を得られます。こうしたシステムにより、リーダーシップは組織の上層、下層、各部門を横断して人々をつなぎ、方向性をそろえ、組織が追求できる使命を定められます。

こうしたシステムでは、誰が何に貢献しているのか、また実際に何が機能し、何が機能しないのかをリアルタイムで記録することもできます。これにより、リーダーシップを導く新たな情報源が生まれ、誰もがすぐに活用できるコーチングの形が整います。分析とAIによってフィードバックをより精緻化できる一方、外部データ(特に顧客の感情)や内部の「環境」データ(組織内のメールやメッセージのやりとりなど)を加えることで、洞察を深められます。

3. フォロワーシップ

リーダーシップは最終的に、フォロワーシップを生み出す能力によって定義されます。リーダーシップがより分散するにつれ、上層の賢明な集団が従順な部下を導くという考え方から、集団的な取り組みのなかで幅広い人々がリーダーとなる形へと変わります。そのためには、人々が目の前の業務に真に関与し、組織の未来を定めるうえで、より大きな集団的役割を担う必要があります。

ダン・ピンクのような行動経済学者は、難度の高い知的業務への意欲を支えるのは、金銭的報酬よりも、目的意識、個人の成長、自律性だと示しています。テクノロジーは、使命への理解と、人々が成果に個人的な影響を与えられるという実感の双方を高める必要があります。

拡張型リーダーシップは、こうした意欲の要素をすべて満たします。タスクベースのシステムにより、個人は貢献し、同僚から認められることができます。蓄積・記録されたデータや関連する外部情報源に基づく指針とコーチングは、個人にこれまでにない成長の手段をもたらします。

最新テクノロジーを導入することだけに追われる状況から脱却すべき時です。組織の未来を守り、発展させるには、まず機械が得意とすることを理解し、その機能を活用して人間の強みを高め、新たな組織能力を生み出す必要があります。

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