ジョン・チェンバースは、突然の成功を収め、役員室まで黄金の道が敷かれていたかのように語る、ありふれた成功者ではない。ウェストバージニア州でディスレクシアを抱えて育った彼は、個人的な困難を乗り越えるために努力を重ね、シスコシステムズのトップに上り詰めた。同社ではルーター企業を、世界最大級のテクノロジー事業へと変革した。現在JC2 Venturesを率いるチェンバースは、新著で、苦労して得た人生とビジネスの教訓を紹介している。『Connecting the Dots: Lessons for Leadership in a Startup World』。彼はSiriusXMの番組「Knowledge@Wharton」に出演し、成功を定義するものについて語った。(ポッドキャストの全編は上でお聴きください。)
以下は、書き起こしを編集したものである。
Knowledge@Wharton:リーダーシップを構成する要素のうち、最も重要だと思うものは何ですか。
ジョン・チェンバース:大きな組織を率いるリーダー、たとえばスタートアップや大企業のCEO、あるいはグループの責任者にとっては、組織がどこへ向かうのか、差別化され持続可能な明確なビジョンと戦略を言葉で示す力が重要だと思います。優れたチームを築く力も必要です。チームの育成、採用、そして定期的なメンバーの入れ替えも含まれます。さらに、企業文化です。私が初めてCEOになったとき、その重要性を理解していませんでしたが、非常に強い文化なしに優れた企業は生まれません。そして4つ目の要素は、今まで以上に重要になっている、これまで話した各要素を、関係者全員に伝える力です。
私がリーダーを評価する際に見るのは、成果、チームの質、本人が注力する業界を本当に理解しているか、コミュニケーション能力、有言実行できているか、企業文化、そして大胆なビジョンを示し、それを実現する力です。
Knowledge@Wharton:最近、企業文化が注目の中心になっています。なぜ優先課題になるまで、これほど時間がかかったのでしょうか。
「私が初めてCEOになったとき、その重要性を理解していませんでした。しかし、非常に強い文化なしに優れた企業は生まれません。」
チェンバース:企業文化は、どのような人材を引きつけるか、どう定着させるか、そして顧客が企業をどう見るかを左右する差別化要因だと思います。今では私にとって、文化と戦略は重要性において同等です。シスコでは、18の製品分野のうち16分野で第1位か第2位を占め、私が在籍していた間に売上高は7,000万ドルから480億ドルに伸びました。シリコンバレーだけでなく、全米でも最も強い文化を持つ企業の一つだと言われていました。社会貢献やイノベーションなどを大切にする文化を掲げていました。私は、全従業員とその配偶者、子どもが命に関わる病気にかかった場合、そのすべてを把握していました。必要ならクリスマスイブであっても、本人たちと電話で話すことがよくありました。彼らを助けるためなら、できる限りのことをするのです。

顧客が問題を抱えたとき、私たちは顧客を第一に考えました。それを有言実行しました。私は毎晩、世界中の重要顧客の状況をすべて聞いていました。経営陣の報酬は顧客満足度に連動させ、企業文化を会社の根本戦略全体に結びつけていました。この点は過小評価されていると思います。若いCEOが率いる新しいスタートアップで、ビジョンと戦略、チーム、コミュニケーションの重要性を理解しているのを見るのは、私が好きなことの一つです。コミュニケーションも、この10年で大きく変わった分野です。たいてい、文化の重要性に気づくのが最も遅れます。従業員や顧客との間に成果が表れ、それを実感するのは楽しいものです。若い企業を教え、メンターとして支える喜びの一部でもあります。
Knowledge@Wharton:それでは、スタートアップの失敗率がこれほど高いのはなぜですか。
チェンバース:失敗率はこれからも高いままだと思います。スタートアップの失敗率はおそらく70%を超えています。ファンドの運用成績で見た世界で最も成功しているベンチャーキャピタリストは、平均的なベンチャーキャピタルより失敗が多いこともよくあります。より大きなリスクを取るからです。しかし、ポートフォリオに含まれる1件か2件の大ホームランが、投資全体を支えるのです。
今は、破壊的変化を起こす側になるか、破壊される側になるかの時代です。デジタル化、破壊的変化の速さ、人工知能、そして異なるビジネスモデルによって、米国や世界の大企業の40%が今後10年で姿を消すと考えています。破壊的変化は、実際にはさらに加速するでしょう。
米国について私が懸念しているのは、むしろ逆のことです。スタートアップの失敗率は今後も高いでしょうし、それは自然な過程です。そうなると理解していないのなら、スタートアップに関わるべきではありません。一社一社を成功させられるかどうかが問題なのではありません。一度失敗したら、立ち上がってもう一度やればいいのです。毎回、自分自身を本当に再び革新し、リスクを取る力が大切です。
私が問題だと思うのは、米国のスタートアップ数がほぼ20年ぶりの低水準にあることです。かつて世界のベンチャーキャピタルの95%を占め、その後80%になりました。今は50%です。国内の雇用創出を先行して示すIPOの件数を見ると、1990年代には年間400~500件で、ピーク時には700件に達しました。今年は3年ぶりに200件を超えそうだと喜んでいる状況です。しかし、今後10年で2,500万~3,000万人分の雇用を生み出す必要があり、デジタル化によって失われる雇用に代わる一定数の仕事も創出しなければならないのなら、スタートアップのエンジンをもっと速く回さなくてはなりません。私が懸念しているのは失敗率ではありません。創業の芽が十分に育っておらず、成長の規模を拡大する速度も足りないことです。
今は、破壊的変化を起こす側になるか、破壊される側になるかの時代です。
http://knowledge.wharton.upenn.edu/article/connecting-the-dots/
Knowledge@Wharton:本の中で語られていることの一つに、ウェストバージニア州で少年時代を過ごし、お父さんと釣りをする中で学んだ「プレッシャーの下でも冷静さを保つ」という考え方があります。ウェストバージニア州のエルク川へお父さんと釣りに行ったときの、とても印象的な話を紹介されています。その話を聞かせてもらえますか。
チェンバース:あの川には、場所によって急な流れがあり、泳ぐ人には危険です。私は6歳で、父と釣りをしていました。父は、この区間では川に落ちないよう気をつけろと言いました。釣りにはよい場所ですが、深さや流れの速さ、急流がとても危険なのです。父は私の100ヤードほど上流で釣っていました。私は岸に近づきすぎて、川に落ちました。すぐに流され、父は釣り竿につかまれと叫びました。今でも、父が水しぶきを上げながら川の脇を駆け下りていく姿を思い出せます。水面に浮かび上がって息を吸うたびに、「釣り竿につかまれ」という父の声が聞こえました。
私は釣り竿につかまり、息をしようともがき続けました。父はついに急流の下流側まで行き、泳いで私のところへ来て、岸へ引き上げてくれました。それから父は、よくそうしてくれたように、腰を下ろして人生の教訓を教えてくれました。「ジョン、急流に落ちたとき、流れに逆らって泳ごうとすると溺れる危険がある。パニックになっても、溺れる危険がある。世の中をありのままに受け止め、流れに沿って進み、水から出られる機会を探し、どうすれば抜け出せるかを学ぶんだ」と言いました。私が落ち着くと、父は私を急流に入らせ、自分でやらせました。その後、父は釣りを始めた場所まで連れていき、私に釣りをさせました。母は知りませんでしたが、父は私が教訓を学んだことを確かめるため、もう一度私の100ヤードほど上流へ行ったのです。
多くのリーダーにとって、これは人生の教訓だと思います。挫折や困難にどう対処するか、状況の重大さを理解しながらも、プレッシャーの下でいかに冷静さを保つか。そして、勝ち目がないのに流れに逆らって泳ぐのではなく、状況に対処して抜け出す方法を探し、そこから前へ進むことが大切です。
Knowledge@Wharton:失敗は悪いことではないとおっしゃっています。キャリアのどの段階でも失敗してはいけないという考え方がありますが、実際はそうではありません。時折の失敗から多くを学べます。
チェンバース:そのとおりです。人はむしろ、挫折や失敗によって形づくられるのだと思います。失敗や挫折を一度も経験したことがないと言う人は、リスクを取らなかったか、正直に話していないかのどちらかです。
[ゼネラル・エレクトリック元CEO]のジャック・ウェルチが、実際にこのことを教えてくれました。シスコが急成長していた頃のことです。多くの人が私たちを米国トップの経営チームと見なし、世界で最も価値ある企業になろうとしていました。ジャックは私に、「ジョン、君の会社はとても優秀だ」と言いました。私は何かを教えてくれるのだと察して、「ジャック、何が必要でしょうか」と尋ねました。彼は「優れた会社、あるいは優れたリーダーになるには、死の瀬戸際を経験する必要がある」と答えました。
当時、私はその意味を理解できませんでした。しかし2001年にドットコム・バブルが崩壊したとき、彼の言葉がよく分かりました。またそのとき、故イスラエル大統領シモン・ペレスが長年にわたって教えてくれたことも理解しました。リーダーシップは驚くほど孤独なものだということです。成功よりも、災難や挫折にどう対処するかが、その人の本質を決めます。挫折への対処法を学べば、人生でさらに大きなことを成し遂げられます。
私にとって、ディスレクシアは大きな課題でした。両親は二人とも医師でしたが、教師たちは私が高校を卒業できない、ましてその先へ進めないだろうと考えていました。ディスレクシアへの対処を特別に支援してもらい、向き合う中で、弱みを時間をかけて強みに変える方法を学びました。挫折や失敗から学ぶことで、そのたびに強くなれるのです。シリコンバレーで最も優れたチームは、以前は成功していなかったものの、学びを重ね、再起の方法を身につけたチームであることがよくあります。
Knowledge@Wharton:リーダーは変化とイノベーションを受け入れられなければならないともおっしゃっています。イノベーションの重要性は理解できますが、変化を受け入れるのは多くの企業にとって依然として難しいことです。成功のパターンができると、その波に乗り続けたくなります。問題は、途中で変化を起こさなければ、次の成功段階に進めないことが多い点です。
チェンバース:まったく同感です。デジタル化が進むこの時代には、ビジネスモデルや企業が非常に速いペースで淘汰されます。現在の企業の推定40%は、10年後には存在していないと考えています。成長するか、消滅するかです。変化を起こす勇気が必要です。
しかし、最も変わりにくいのは、最も成功してきた企業です。企業が失敗する原因について話すとき、第1の理由は市場の転換を見逃すことです。通常は、ビジネスモデルの変化と技術の変化が重なります。第2の理由は、正しいことをあまりにも長く続けることです。
シスコを例にすると、私たちは非常に成功したルーター企業でしたが、「スイッチング」と呼ばれる分野に進出する勇気がありました。その後、ルーティングとスイッチングから、無線機能、音声、データセンター、セキュリティへと領域を広げました。私たちは自らを何度も変革し続けました。その結果、主力製品だけでなく、成果も向上しました。競合他社は、成果に注目せず製品に固執するという誤りを犯しました。変化を受け入れ、単にルーターを作るテクノロジー企業ではなく、インターネットと同義であり、世界の働き方、暮らし方、学び方、遊び方を変える企業だと打ち出す姿勢が大切です。破壊的変化を起こす意志が必要なのです。


