経済の好況と不況のたびに、リーダーに求めるものは変わることがありますある時期には弱点とみなした特性を、次の景気循環では長所として評価することもあります。私の30年のキャリアの中で、こうしたことが何度も起きるのを目にしてきました。皆さんも同じではないでしょうか。
こうした変化を見守るのも興味深いことでしたが、リーダーの評価と選抜が、非公式な取り組みから、はるかに科学的なプロセスへと進化してきたことは、さらに印象的です。
昨年、私の会社であるラッセル・レイノルズ・アソシエイツはホーガン・アセスメントと提携しました。私たちは500万人を超えるリーダーの心理測定データを調査するため、共同で取り組み始めました。この膨大な科学的データを活用し、経営幹部候補として経営陣の一員となる可能性と、長期的に成功する可能性の双方が高い人材をどう見極めるか、理解を深めたいと考えました。
経営幹部の役職は難易度が高く、注目を集めることも少なくありません。判断を誤れば大きな代償を伴います。不確実な状況を乗り切る力を備えたリーダーを見つけ、経営幹部の失敗を減らすことは、企業にとって大きなリスクの軽減につながります。
データを調べてわかったことは、目を見張るものでした。リーダーが経営幹部へと昇進する助けとなる性格特性の中には、短期的に良好な業績をもたらすものがあります。しかし、同じ特性がキャリアの行き詰まりにつながることもあります。優れたリーダーは、一見すると相反するように見える心理測定上の特性の組み合わせ、「競合する能力」を見事に使いこなします。両方の特性を扱えることで、リーダーは弱点を抑えながら能力を高めます。競合する能力は、特に次の4つの領域に表れます。
1. 変革を起こす力と現実的な判断力:組織には、イノベーションによって現状を打ち破るリーダーが必要です。同時に、組織の重点事項や優先順位、イノベーションの進め方について現実的に判断する力も求められます。
2. リスクを取る姿勢と慎重さ:優れたリーダーは、計算されたリスクを取り、好機を逃しません。一方で、組織を破滅へと導かないよう、警戒を怠らないことも求められます。
3. 英雄的な強さと弱さを認める姿勢:英雄的なリーダーは、忍耐力や粘り強さが自己欺瞞に変わらないようにする必要があります。自分自身と組織を継続的に改善するため、十分な意見や助言を求めることも大切です。
4. 人々を鼓舞する力とつなぐ力:リーダーは、活力とひらめきをもって人々の支持を集める必要があります。同時に、一歩引いて功績を分かち合い、他者の成功を後押しし、組織をより高い価値観や使命へと結びつけるべき時を知る必要もあります。
こうした特性に目を向けることは、経営幹部を採用する際のリスクを減らすだけでなく、経営幹部全体を評価し、その集団の力学を理解する助けにもなります。企業文化を評価し、企業戦略と整合させるうえでも役立ちます。さらに、次世代の経営幹部候補を見極めることで、後継者計画にも活用できます。
500万人のリーダーに関する情報を調べ、比較的容易かつ科学的に心理測定データを分析して、そこから浮かび上がるパターンを確認できるのは驚くべきことです。30年前には、これほど大量の情報を利用できることなど夢にも思いませんでした。まして、そのすべてを理解できるとは考えもしませんでした。
リーダーシップは複雑ですが、幸いなことに、リーダーの評価と選抜は今ほど科学的で洞察に富んだものになったことがありません。このレベルの洞察が時代遅れになることは決してないでしょう。


