私たちが激動の時代に生きていることを示す兆候は、すぐに見つかります。地政学的不確実性、サイバー攻撃、人工知能によって脅かされる雇用は、2017年の見出しを飾った話題のほんの一部です。しかし、こうした暗い兆しにもかかわらず、記録的な割合のCEOが、少なくとも短期的には世界の経済環境について楽観的だと答えました。これは、PwCの最新のグローバルCEO調査の調査結果の一つです。同調査は今週、ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会に合わせて発表されました。ここでは、主なポイントを3つ紹介します。
1. CEOの短期的な楽観論が急上昇
今年の調査では、来年の世界経済成長の見通しに対するCEOの信頼感が、過去最高水準に達し、記録的な上昇を示しました。2012年にこの質問を始めて以来初めて、調査対象のCEOの過半数(57%)が、世界経済の成長は「改善する」と考えていると回答しました。際立つのは、この前例のない楽観論が昨年の約2倍に達し、真に世界的な広がりを見せていることです。北米から西欧、中欧・東欧、さらにアフリカ、ラテンアメリカ、中東、アジア太平洋地域に及んでいます。
しかし、今後3年間の自社の成長についてCEOに尋ねると、この自信は弱まりました。昨年は回答者の51%が、自社の長期的な成長見通しについて「非常に自信がある」と答えましたが、今年、同じ見方を示したのは45%にとどまりました。
CEOが、将来はかつてより予測しにくくなったと感じるのも無理はないでしょう。技術による破壊的変化や地政学的な予測不能性がありふれたものになりつつあるなか、長期的な自信を持つことはますます難しくなる可能性があります。
2. 地政学的状況の明るい側面に注目
短期的には、ブレグジット、トランプ政権による貿易協定や気候変動協定からの離脱、北朝鮮をめぐる懸念の高まりといった激変にも、CEOの楽観論は揺らいでいないようです。CEOはひるむことなく、事業への投資と成長を続けています。
端的に言えば、2017年は2010年以来、世界経済にとって最良の年となる見込みです。新年を迎え、世界の商品価格は底値から回復し、主要経済国は成長しています。英国経済も、ブレグジットにもかかわらず持ちこたえているようです。この上昇傾向は2018年も続く見通しで、PwCは、購買力平価(PPP)ベースで、今年の世界経済は4%近く成長すると予測しています。。
米国では、トランプ政権の企業寄りの政策は、貿易と移民を除く主要分野で、株式市場の活況、企業の信頼感向上、低失業率をもたらしつつあるようです。2018年には大幅な法人減税、規制緩和、インフラ支出が予定されており、北米のCEOが調査回答者のなかで最も自信を示しているのも当然でしょう。同地域のCEOの半数超(53%)が、今後12カ月の自社の成長に「非常に自信がある」と答えています。
CEOの短期的な自信がどれほど確かなものかは、時がたてば分かるでしょう。しかし、株式市場の活況や主要市場の大半で予測される力強いGDP成長など、経済指標はCEOに追い風となっています。また、リスクが増大し、種類も増える一方で、CEOは複数の高水準のリスクに慣れつつあり、同時にそれらを管理する方法も見いだしています。企業の前途には多くの落とし穴が潜んでいますが、CEOはその位置を予測し、回避する能力を高めてきました。
3. 技術の変化を受け止め、対応する
テクノロジーは、さまざまな複雑な形で企業に影響を及ぼしています。デジタル時代が急速に進むなか、テクノロジーに関する企業戦略は流動的であり、そのことは数字にも表れています。一方では、サイバー脅威や変化のあまりの速さといった技術の進歩が、CEOの眠れぬ夜を招く懸念事項の上位に挙がっています。昨年、話を聞いたCEOの24%がサイバー脅威を「極めて懸念している」と答えましたが、今年はその割合が40%に跳ね上がりました。対照的に、企業のリーダーは、あらゆる人をつなぐ接続環境の実現を、グローバル化の最大の利点と見ています。
AIがもたらす影響が甚大であり、ビジネスや社会全体を変革する可能性があることに疑いの余地はありません。PwCの最近の世界AIレポートは、AIが2030年までに世界のGDPにさらに15.7兆ドルをもたらすと予測しています。しかし、その恩恵が均等に分配される可能性は低く、成長の70%を米国と中国が占めると見込まれています。機械がより安価な労働力に取って代わるようになれば、雇用市場には勝者と敗者も生まれます。不要になる仕事がある一方、新たに生まれる仕事もあります。しかし、CEOはAIがもたらす潜在的な恩恵に注目しているものの、現時点では雇用への影響を懸念しておらず、今後12カ月に人員削減を予想するCEOは5人に1人未満です。
CEOの全体的な見通しは明るいものの、異なる信念体系、貿易圏、経済モデル、そして高まり続けるナショナリズムによって、世界の分断が深まる兆候が見られます。調査対象のCEOは、繁栄を測るために用いる指標さえも多面的になっていると認めています。こうした隔たりが広がるなか、例外はサイバー空間と企業統合です。分断された世界に共通の未来を築くためのフォーラムの取り組みは、時宜にかなっています。


