幸福の鍵とは何でしょうか。これは何千年もの間、人々が問い続けてきたことです。しかし、この問いは難解で哲学的なものである必要はありません。ハーバード大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなどの研究は一貫して、豊かな社会的つながりと有意義な人間関係が幸福の根幹にあることを明らかにしています。強いコミュニティの一員になることは、そうした関係をより迅速かつ広範に築くための有力な方法です。コミュニティに加われば、すぐに社会的なつながりを得られ、それを時間をかけてさらに深め、有意義な人間関係の形成を早めることができます。
世界経済フォーラムでコミュニティマネージャーを務める私は、東アジア、中東、南アジア、アフリカの、若く社会志向のリーダーたちのコミュニティと協働してきました。文化の違いがあっても、強いコミュニティの価値は普遍的です。強いコミュニティは、心の支えや、他のメンバーが持つ資源やネットワークへのアクセスを可能にします。また、知識やスキルの交換を通じて個人として、また職業人としての成長を促し、人生に喜びをもたらす友情を育み、他者と協働して世界により大きな影響を生み出す可能性を広げます。
コミュニティのマネージャーやリーダーが、より強いコミュニティを築き上げる方法について考えてきた中で、それを実現するための重要なアプローチをいくつか見いだしました。
1. 共通の価値観と共有する目的への賛同を得る:優れたコミュニティには共通の目的があります。世界的な課題への取り組みのように重大なものでも、より健康になるための運動のように気軽なものでも、メンバーが共に達成したい目標を共有するとき、強いコミュニティが生まれます。さらに、メンバーは共通の価値観も共有します。価値観は明確に示され、広く理解される必要があります。また、さまざまな方法で繰り返し伝えられ、文化の中に根付かせることも必要です。価値観と目的は、共に創り上げること、人々が受け入れるよう働きかけること、あるいは、すでに明示された価値観や目的との適合性に基づいて新たなメンバーを受け入れる適切な採用・選考プロセスを整えることによって形づくることができます。
2. 儀式をつくる:価値観を根付かせ、文化を築く手法の一つが、それらを強化する共通の儀式です。米国で子ども時代を過ごした私は、愛国心と国への誇りを育むため、毎朝学校で忠誠の誓いを唱えていました。イスラム教では、信者は1日に5回祈ります。儀式は言葉でも行動でもよく、コミュニティの全メンバーが共に参加する習慣をつくり、コミュニティ全体の価値観や文化を映し出すメッセージや理念を強化します。
3. ストーリーテリングで文化を強化する:コミュニティに文化を根付かせる最も有力な方法の一つが、物語を通じて伝えることです。育みたい価値観、行動、特性を他の人が体現した事例を称えることで、高尚で抽象的な言葉が、誰もが認識できる行動としてどのように現れるのかを、より具体的に示せます。また、物語は自分自身について語るより、メンバー同士が互いについて語るときに最も力を発揮し、グループの集合的な性質を強化します。
4. つながりを促す:優れたコミュニティでは、メンバーがグループ内の多くの人々を知っています。つながりとは、他の人が何に取り組み、何に関心を持ち、何を得意としているかを把握することです。つながりの度合いが高いコミュニティでは、メンバー同士が互いに価値を提供しやすく、さまざまな目的に向けた協働も生まれやすくなります。
5. 信頼関係の構築を後押しする:コミュニティのメンバーが互いを知っているだけでは十分ではありません。互いを信頼することも必要です。信頼がなければ、協働や相互支援の機会に気づいても、それが実際の行動に移されることはありません。
6. 交流を最大化する:信頼とつながりに加えて、コミュニティのメンバー同士が交流する頻度も重要です。頻繁に接触することで、メンバーが互いに価値をもたらす方法を見つける可能性が高まります。コミュニティマネージャーには、望ましい成果につながる、より効果的な交流を設計するためのさまざまな手法があり、特にビッグデータを活用できます。また、対面やデジタルでの関わり方を種類や程度に応じて組み合わせ、さまざまなプラットフォームを通じて交流を促すこともできます。
7. ブランディングを通じてアイデンティティを育む:ブランドは、人々を結びつけ、共通のアイデンティティを託す器となる共通のシンボルや名称を与えます。ブランドは、国旗や企業ロゴのようなシンボルにも、軍隊の部隊名や母校の名称のような名前にもなります。歌や音楽を通じて表れることもあります。米国の公民権運動や南アフリカの反アパルトヘイト闘争のような国民的運動では、「勝利を我らに」や「Nkosi Sikeleli Africa」といった歌が、より広い自由の闘士や活動家のコミュニティを象徴するものとなり、軍隊が国旗のもとに兵士を結集させるのと同じように、共通の目的に向かう人々を鼓舞しました。
8. 共通の体験をつくり、促す:共通の体験は、境遇の大きく異なる人々の絆を築く有力な方法です。多くの場合、乗り越えるのが最も困難な体験ほど、人々を強く結びつけます。難しい試合に勝つスポーツチームや、依存症からの回復を目指す人々の自助グループを思い浮かべてください。他の人々と共に何かを乗り越えることで、仲間意識と信頼が速やかに育まれます。ただし、共通の体験は何かを乗り越えることだけに限りません。人間関係を築くために、人は他の人との共通点を探すことが研究で示されています。同じ映画を一緒に観た、同じ国に住んだといったささやかな体験も、共通点を認め合い、さらに会話を始めるきっかけになります。
まとめると、コミュニティづくりは柔らかく抽象的な概念に思えるかもしれません。しかし、その本質において、リーダーには、自らが運営するコミュニティを築き、強化するための実践的な手法や技術が数多くあります。オフィスの従業員、町の住民、スポーツチームの選手、社交クラブの会員など、どのような人々で構成されるコミュニティであっても、強いコミュニティを築くことは、その目標を達成するための基盤となります。人々がコミュニティの他のメンバーと深く有意義な関係を築くと、心の状態と全体的な幸福感が高まります。その結果、仲間と協働し、支え合う力が増し、一人では誰にも成し遂げられないことを実現できるようになります。


