需要に対して供給が不足しているスキルを持つ労働者は、労働市場における自らの力を認識し、それを活用しようとしていることが、新たな調査で明らかになりました。
雇用主は、事業の将来への備えを強化し、社会の分断を抑えるため、従業員のスキル向上に取り組む必要があります。
これにより、雇用主と従業員、市民と政府の間、さらには社会全体において信頼が高まるでしょう。
労働市場は昔から高度なスキルを持つ労働者にとって有利な場でしたが、今日の景気減速局面では、その傾向がいっそう強まっています。企業は成長戦略を進めるなかで、スキルの高い人材の獲得競争を激化させる一方、スキルの低い労働者の削減も検討しています。最近の調査PwC米国法人が経営幹部を対象に実施した調査では、50%が人員削減を計画していることが分かりました。
この傾向は、労働市場についての考え方に大きな影響を及ぼします。高度なスキルを要する仕事をめぐる競争に必要な能力を欠く労働者は、経営陣が本来彼らと関わるべきであるにもかかわらず、見過ごされるおそれがあります。企業のリーダーたちは、そうした労働者が企業から過小評価されがちな組織に関する知識を備えており、スキル習得の道のりを進むことで人手不足の緩和にも貢献し得ることに気づくでしょう。
企業が従業員のスキル向上に取り組まなければ、専門的で希少なスキルがもたらす利点を持たない労働者がさらに取り残され、社会の分断を深めるおそれがあります。
景気減速は、専門スキルを十分に身につける準備ができていない人々にとって、この傾向をさらに加速させる一方、需要の高いスキルを持つ人々は活躍を続け、力を得たと感じるでしょう。その結果、格差と分断は拡大します。
景気が減速すれば、広範な労働動向や現役労働者の期待は薄れていくと考える人もいるようです。しかし私たちは、熟練労働者の期待や移動性は、経済状況にかかわらず続くと考えています。
スキルギャップの拡大を防ぐために必要な取り組み:スキル向上
スキルギャップの拡大を防ぐため、できる限りのことをする必要があります。今週の国連総会で教育と労働力に関する課題が議題に取り上げられていることを、私はうれしく思います。
変化する世界を乗り切るため、テクノロジー、環境・社会・ガバナンスから、リーダーシップ、回復力、グローバルな知見といったソフトスキルまで、現在そして将来必要となるスキルを人々が身につけられるよう、大規模に支援することが強く求められています。
スキル向上に共同で投資すれば、雇用主と従業員、市民と政府の間、そして社会全体で信頼が高まるでしょう。
スキルは仕事の満足度を高める鍵となる
高く評価されるスキルを持つ労働者と、そうした利点を持たない労働者の生活の違いは、私たちの調査で明らかでした。世界各地の52,000人を超える労働者を対象にしたこの調査では、需要に対して供給が不足しているスキルを持つと考える労働者は、満足度が大幅に高く、より大きな力を得たと感じていることが分かりました。
80%が仕事に満足しており、3分の2が上司に意見を聞いてもらえていると感じています。どちらも、より希少性の低いスキルを持つ労働者を大きく上回っています。
同時に、今後12カ月以内に昇給や昇進を求める可能性は他の回答者よりはるかに高く、新しい雇用主を探す可能性もやや高くなっています。彼らは労働市場における自らの力を認識し、それを活用しようとしています。
高く評価されるスキルが足りないと感じる人々の状況は、より厳しいものです。スキルギャップの可能性があるこのグループは、仕事生活の満足度が低く、キャリアアップの計画を立てている可能性も低いうえ、私たちの調査が示すように、新たなスキルの習得にもあまり積極的ではありません。雇用主がスキル向上の機会を提供する可能性も、需要の高いスキルを持つ同僚の場合より低くなっています。
PwCでは、社員と社会のスキル向上に多額の投資を行っています。世界全体で、私たちのNew World. New Skillsプログラムは、全社員327,000人のスキル向上に30億ドルを投じるとともに、企業、政府、非政府組織、地域社会と連携し、それぞれのスキル向上を加速させる取り組みです。
昨年、経験豊富な社員を31,800人採用する一方、初級職として58,300人を超える人材を採用し、PwC在職中を通じて充実した研修を提供しています。
また、人材を組織に迎えるための複数の経路を設けています。米国法人では、2026年までに黒人およびラテン系の学生を10,000人採用することを目指しています。英国では最近、学部卒・大学院卒向け職種の2:1基準を撤廃し、より多くの人に機会を開くとともに、英国法人の社会経済的多様性を高め、社会的流動性の向上を支援しています。
より良い職場には、人間らしさとスキルの両方が必要
企業が社会の分断への対応を支援する方法は、スキル向上だけではありません。労働者が職場に人間らしさを持ち込めると感じられる環境をつくることも、重点課題とすべきです。
私たちの調査では、仕事を選ぶ際に最も重要な要素は給与でしたが、やりがいのある仕事はわずか2ポイント差の69%で続き、職場で「本当の自分でいられる」ことも、さらにわずか3ポイント差でした。仕事でありのままの自分でいたいという願いは、スキルの高い人とそうでない人、ハイブリッド勤務者と出社勤務者、年長者と若年者に共通していました。
そのような意義を求める気持ちにとって重要なのは、企業が社会的課題に関わることでした。調査対象の従業員の3分の2は、職場で政治や社会の問題について頻繁に、または時折会話すると回答しました。自らを少数民族と認識する人(73%)や若年層の従業員(26~41歳では69%。58~76歳より13ポイント高い)では、割合がさらに高くなっています。
こうした会話は、チームを分断するよりも結束を強める可能性が高いものです。会話に参加した人の大多数が、同僚への共感が深まることを中心に、良い影響があったと答えています。企業に求められるのは、会話を抑え込むことではなく、安全で敬意に満ちた建設的な形で行われるよう支援することです。
持続的な成果を実現するには信頼が鍵
各組織は、世界で起きている変化に対応するため、非常に個別性の高い要因の組み合わせを管理しています。しかし、どこでも重要となる普遍的な要素もあります。
労働者には、需要の高いスキルが必要です。テクノロジーに取って代わられるのではなく、それを使うためのスキルも含まれます。また、仕事の内容や管理のされ方、チーム内での自分の役割を通じて、仕事に意義を感じたいと考えています。
こうした点を適切に実現する雇用主は、従業員の信頼を得るでしょう。それは、企業と社会に持続的な成果をもたらすための重要な一歩です。

