調査によると、能力開発の機会は従業員の定着率とエンゲージメントを高めます。退職時に選ばれた最大の理由は、キャリアアップや能力開発の機会がないことでした。
100万人を超える従業員から集めたデータによると、能力開発に注力した企業は、そうでない企業と比べて、従業員数の伸び率が平均で24.3ポイント高くなりました。
人を第一に考える能力開発のアプローチは、より良い働き方の世界づくりに役立ちます。
パンデミックがもたらした明るい側面があるとすれば、その一つは、人々がありのままの自分で働けるようになったことでしょう。
食卓やリビングが仕事場となり、仕事以外での私たちの複雑で雑然とした人間らしい経験が、ビデオ通話やオンライン会議を通じて同僚にも見えるようになると、仕事と家庭の境界は曖昧になりました。私たちは、オフィスの外にも生活がある人間として、しばしば初めて互いを見ることになりました。そのおかげで、マネジャーとチームのメンバーは、通常の仕事の枠を離れ、一人の人間として関わり合えるようになりました。
しかし、いつも簡単だったわけではありません。マネジャーは予算や業績の管理から、非公式なライフコーチやメンタルヘルスカウンセラーの役割まで担うようになり、従業員はより大きな自由と柔軟性を求めています。今、組織が直面している課題は、経営層の賛同を得て、ピープルマネジャーに権限を与え、従業員自身の専門的・個人的な能力開発について話し合う場に従業員を参加させながら、仕事においてありのままの自分でいられるアプローチを受け入れ、成長と能力開発の機会の重要性を高めることです。
Culture Ampが5,600の組織に所属する950万人を超える従業員を対象に実施した調査では、能力開発やキャリアアップの機会に注力することが、従業員の定着率、エンゲージメント、そして事業全体の業績に大きな影響を与えることが分かりました。
Culture Ampのデータによると、退職時に選ばれた最大の理由は、キャリアアップや能力開発の機会がないことでした。学習や能力開発の機会を得られないと感じている従業員は、12か月以内に退職する可能性が2倍高くなります。
この知見は、人事リーダーやピープルマネジャーにとって、従業員体験に能力開発を組み込む大きな機会となります。
そこで、従業員ではなく一人ひとりの人間を対象とした能力開発プログラムの設計方法を考えてみましょう。
1. 能力開発の最適な接点
理想的には、能力開発戦略は次の3つの主要領域に焦点を当てる必要があります。
- 事業上のニーズ。
- 現在のスキルと強み。
- 個人の希望、情熱、意欲。
これらの要素が重なるところが最適な接点です。3つすべてを理解することで、組織や従業員一人ひとりにとって意義ある対話や機会につなげられます。
また、人々は自分の前にキャリアアップへの道筋があると感じたいものです。Culture AmpのPeople Scienceディレクター、Kenneth Matos氏は次のように述べています。「人に同じ役割を長く担ってもらいたいなら、その役割を担うことでキャリアにどのような展望が開けるのかを示しましょう。」
2. 学習を捉え直す
能力開発と学習を捉え直しましょう。ワークショップや講座に参加することだけが学びではありません。代わりに、3つのE、すなわち教育(education)、接触(exposure)、経験(experience)に注目してください。これらは、職場での学習と教育に包括的に取り組み、能力開発の機会が日々あることを従業員に示す助けになります。
教育:オンライン学習、講座、書籍、ポッドキャストを通じて得るもの。
接触:仕事の見学、部門横断の協働、人脈づくり、専門職団体への参加。
経験:人々の学びにつながる、難易度の高いプロジェクトや課題。
3. 一人ひとりに合わせた能力開発
人々は、一人ひとりの存在を認められ、声を聞いてもらい、個人として尊重されたいと考えています。マネジャーが自分のキャリアへの希望に積極的な関心を持ち、個人および職業上の能力開発を大切にする組織で働くことを望んでいます。
従来、職場のリーダーは成果や業績報告によって成功を測ってきました。しかし、グラフ上の数字だけでは、成果を達成するまでの過程や経験、そしてそれを実現した人々を真に反映することはできません。
ハードスキルよりも人間的なスキルに焦点を当て、学習と能力開発を一人ひとりに合わせることで、従業員に力を与え、より良い職場をつくることができます。Culture Ampの調査によると、自分の関心に関連するスキルを伸ばせる従業員は、エンゲージメントが46%高くなります。
能力開発は、単発のチェック項目で終わらせず、職場のあり方に継続的に組み込む必要があります。理想的には、定期的な計画やレビューに取り入れ、チームにも優先事項として共有しましょう。
4. 協働と対話
単純なことに聞こえるかもしれませんが、従業員の話に積極的に耳を傾け、率直で誠実な対話を重ねることは、声を聞いてもらい、大切にされていると感じてもらううえで大きな要素となります。
直属の部下のキャリアへの希望にマネジャーが関心を示している企業では、従業員がその企業を推薦する可能性は15%高く、意欲も21%高くなりました。
能力開発の一環として内省の時間を設けることも重要です。自分がどこに向かいたいのかを明確にし、自分の強みや弱みについて実行に移せるフィードバックを得る助けになります。
Culture AmpのPeople Science部門の主任研究員、Fresia Jackson氏は、内省に役立つ質問として次を挙げています。
自分の役割のどの部分に活力を感じますか。どの部分で消耗しますか。どんなときに最高の仕事ができていると感じますか。目標を達成するには、どのようなスキルが役立ちますか。
5. 組織のDNAに能力開発を根付かせる
能力開発を「あると望ましいもの」と捉える段階から、従業員の意欲を高め、成果をもたらすプログラムの創出へと進むには、能力開発を重視する考え方を組織のDNAに根付かせることが欠かせません。
企業のリーダーの賛同を得るために、データと根拠を活用しましょう。能力開発に注力することは、現在の従業員が持つ知識を生かし、事業に必要なスキルでそれを強化することを意味します。
能力開発が企業の戦略的な方向性に含まれていなければ、長期目標とも整合しません。能力開発を重視する考え方を組織に根付かせることで、人を中心に据えた学習と能力開発のアプローチから成果を得るための基盤が整います。
能力開発に注力する企業は、従業員数の成長、資金調達、株価など、多くの事業成果で優れた結果を上げています。人間関係が育まれ、能力開発の機会が重視される職場で、従業員の忠誠心とエンゲージメントが高まることが、明確な波及効果を生み出すのです。


