新たな報告書によると、世界のケア政策に大きな不足があり、何億人もの人々が十分な支援を受けられていません。
国際労働機関(ILO)によると、約6億4,900万人の女性が十分な出産保護を受けていません。
ILOの調査推計によると、あらゆるケアサービスの不足を解消すれば、世界で約3億人の雇用を創出できる可能性があります。
病気に差別はないとよく言われますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではそうではありませんでした。パンデミック自体が甚大な困難と混乱をもたらしただけでなく、新たな報告書によると、その余波は世界で最も脆弱な立場にある人々、すなわち女性、子ども、高齢者に不均衡な影響を及ぼしています。
国際労働機関(ILO)の報告書『Care at Work』は、さまざまな種類のケアに関する各国の法律、政策、慣行の概要を示しています。これには、出産・育児に関するケア、子どもの世話、高齢化に伴う長期ケアが含まれます。
この報告書は、特定の職種に就く労働者が、こうした分野のさまざまな法的保護の対象外となっている状況を明らかにしています。自営業者、移民、インフォーマル経済で働く労働者に加え、養子を迎えた親やLGBTQI+の親も、支援を受けられない人々に含まれます。
ILOはまた、ケアサービスの供給不足により、何億人もの労働者が十分な支援を受けられていないと述べています。
ケアの創出が雇用を生む
ケアサービスを大幅に拡充すれば、2億9,900万人の雇用を創出できる可能性があると報告書は述べています。これにより、ポストCOVIDの世界経済の回復が加速します。新たな雇用の78%を女性が占め、84%がフォーマル雇用になると推計されています。
これを実現するには、ジェンダー平等な休業制度、すべての人が利用できる保育、長期ケアサービスへの変革的な投資が必要です。2035年までに世界全体で年間推定5.4兆ドルが必要となりますが、新たな職務による追加所得から税収が増えることで、その一部を相殺できる可能性があります。
ILOは、こうした投資が大きな成果をもたらすと考えています。
「子どもに良い人生のスタートを与え、女性が就業を続けられるよう支え、家族や個人が貧困に陥るのを防ぐ、一貫したケアの仕組みを構築するために、ケアに関する政策やサービスの提供方法を見直す必要があります」と、ILO労働条件・平等局長のマヌエラ・トメイ氏は述べています。「こうしたケアの不足を解消することは、投資として捉えるべきです。それは健康や生計だけでなく、基本的人権、ジェンダー平等、より幅広い代表性も支えるものです」
ジェンダーによるケア格差
ILOの調査結果は、他の研究とも一致しています。マッキンゼーの調査によると、パンデミック前から「二重勤務」を担っていた就業女性、つまりフルタイムで働きながら男性より多くの家事や育児もしていた女性は、ロックダウンによってさらに大きな負担を負いました。COVID-19の期間中、母親が家事やケアの大半を担う確率は父親の3倍だったと同社は述べています。
世界経済フォーラムは昨年、パンデミックにより、世界のジェンダー格差の解消に必要とされる推定期間が延びたと述べました。99.5年から135.6年に延びたのです。多くの主要経済国でジェンダー平等の進展が鈍化していますが、その一因として、COVID-19の打撃が最も大きかった業界で女性が不均衡に多く働いていたことが挙げられます。
さらに、家庭でケアを担わなければならないという負担も重なりました。
ILOの報告書の主な調査結果を紹介します。
産休制度の不備
報告書によると、世界の生殖年齢にある女性の3人に1人は、ILOの「母性保護条約」の主要要件に沿った給付を受けていません。同条約は最低14週間の産休を義務付け、休業中は従前賃金の少なくとも3分の2を受給できるよう定めています。しかし、調査対象の185カ国のうち82カ国は、ILO基準の少なくとも1項目を満たしていませんでした。妊娠の可能性がある女性のほぼ10人に3人は、産休が14週間未満の64カ国に暮らしています。
父親の育休拡充が必要
昨年、ILOの報告書が対象とする185カ国のうち115カ国で、父親が育児休業を取得する権利が認められていました。しかし、育児休業の対象となり得る父親のほぼ3分の2、すなわち12億6,000万人の男性は、今なおそうした権利のない国に暮らしています。報告書によると、父親の育児休業は、父親が「女性パートナーの手伝い役と捉えるのではなく、子どもの生涯を通じて積極的に共同で子育てをする」助けとなり、ジェンダー平等に寄与します。
保育は子どもだけでなく、女性と雇用にとっても不可欠
0~2歳児を対象とする保育が法律で定められている国に住む親となり得る人は、10人に2人にすぎません。そうした給付を提供する国は、178カ国中わずか57カ国です。保育サービスの拡充は、子どもの生存、成長、発達、学習を支えるだけでなく、親がより働きやすくなり、その結果、より多くの収入を得られることにもつながります。
尊厳ある高齢期
平均寿命の延伸に伴い、高齢者や障害のある人を対象とする長期ケアサービスの需要は、長年にわたって急増しています。パンデミックは、長期ケアを利用する人々と、それを提供する人々(大半は女性)に不均衡な影響を及ぼしました。調査対象の179カ国のうち、高齢者向けの公的長期ケアサービスを法律で定めているのは89カ国にすぎません。
職場は健康と安全の促進に向けた入口となる
妊娠中または授乳中の女性を含むすべての労働者には、安全で健康的な職場環境で働く権利があるべきです。しかし、ILOの母性保護基準が定めるとおり、雇用主に危険または健康を害する仕事から女性を守る義務を課している国は、わずか40カ国です。つまり、世界で妊娠の可能性がある女性のうち、法律による保護を受けているのは10人に1人にすぎません。
すべての女性には、授乳のための有給の勤務時間を取得する権利があるべきです。これは、ILO第183号条約が求めていることです。昨年、138カ国で授乳のための時間と所得保障を受ける権利が認められました。こうした規定は、世界の妊娠の可能性がある女性の10人に8人に適用されます。
