ラテンアメリカ・カリブ諸国(LAC)の経済は、過去10年間、持続可能な成長軌道にありました。また、世界の淡水の3分の1を擁し、1人当たりで見ると途上地域の中で最も多く、世界の中・高ポテンシャル農地の4分の1以上も有しています。
LAC地域全体が世界最大の純食料輸出地域であるのも不思議ではありません。同地域の輸出シェア総計は1991年以降7.5倍以上に増加する一方、カロリー換算の輸入は同期間に3.5倍に増えました。2013年と2014年には、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイが世界の小麦、トウモロコシ、大豆の供給増に果たした役割に、こうした傾向が表れていました。
前述の成果にもかかわらず、この地域では農業生産性が依然として低く、国による大きな差があります。例えば、2013年と2014年に起きた3つの大きなショックは、中央アメリカがいかに脆弱な状態にあるかを示しました。
最初はコーヒーさび病、次は深刻な干ばつ、そして最後に、子どもの移民危機でした。最初の2つの危機が一因となったこの危機は、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスが直面する重大な不足の帰結でもありました。これには、インフラ、保健サービス、安全へのアクセス不足に加え、深刻な栄養不良や発育阻害が含まれます。経済成長が持続可能なのは、すべての国が食料・栄養安全保障を確保している場合に限られることを、改めて認識しなければなりません。国が主体となり、国主導で進める食料・栄養安全保障戦略がなければ、世界、地域、国の各レベルにおける経済成長に障害や追加費用が生じます。
貧困率と慢性的な栄養不良の水準が非常に高い国では、持続可能な成長の実現に必要な人的資本の開発が制約されます。また、貧困、不平等、慢性的な栄養不良の水準が高いと、政府は社会的セーフティネット制度や条件付き現金給付を通じた短期的な対症策への投資を余儀なくされます。国連食糧農業機関(FAO)によると、高い栄養不良率は、国内総生産(GDP)の4~5%の損失といった目に見える影響につながる可能性があります。
食料安全保障は人々の健康に大きな恩恵をもたらすだけでなく、持続的な経済成長を実現する基盤でもあります。そのため、食料安全保障戦略を単一セクターの課題としてではなく、複数のセクターにおける協調的な行動の組み合わせとして捉えることが不可欠です。財政、農業、保健・栄養、インフラなどの分野での取り組みを指しています。また、政府と民間セクターの協力が中心的な役割を果たすべきであることを理解するのも不可欠です。
同様に、経済成長だけでは慢性的な栄養不良や発育阻害の問題は解決しません。 最近の 刊行号である 『The Lancet』は、世界の保健と栄養の分野を代表する科学誌ですが、そこでは、 経済成長が10%増加すると慢性的な栄養不良が6%減少するとされています。
これは何を意味するのでしょうか。第一に、経済成長と慢性的な栄養不良の一対一の関係は、成長だけでは慢性的な栄養不良の問題を解決できないことを示しています。慢性的な栄養不良は、あらゆる食料安全保障戦略における重要な変数です。第二に、経済成長は負の影響を及ぼすこともあると分かっています。例えば、経済成長が10%増加すると、女性の肥満が7%増加することが相関関係から示されています。これは、栄養価の高い食品の消費を最適化し、肥満を引き起こす食品(栄養不良のもう一つの一般的な形態)の利用を最小限に抑えるため、税制・財政手段を適切に活用することが極めて重要であることも示しています。
安定的で長期にわたる食料安全保障がなければ、人的資本への負の影響が続き、政府の財政負担が増大して、政府支出に悪影響を及ぼします。また、長期的には経済成長の停滞にもつながります。したがって、食料安全保障は短期・長期双方の経済成長の中核であり、国、地域、世界の各レベルで、より大きな分野横断的戦略の中心に位置付ける必要があります。 IFPRI による最近の報告書は、どの国が最も高い飢餓率・栄養不良率に直面しているかを示し、この問題への取り組みを目指す政府や政策立案者に道筋を提示しています。
最後に、食料・栄養安全保障の実現を目指す投資は、より広範な公共政策の議論に組み込む必要があることを理解することが重要です。特に、予算上の制約や複数の面での開発障害に直面する国ではそうです。飢餓と栄養不良との闘いの進捗を測るため、明確な目標と適切なモニタリング・評価戦略を設けることが、そのための出発点として必要です。さらに、公共支出の効率性と有効性に説明責任を求める他の分野横断的プログラムとこれらの目標を結び付けることは、厳しい予算制約下でも長期的で持続可能な経済成長を実現するうえで重要な役割を果たします。
世界経済フォーラム・ラテンアメリカ2015 は、5月6~8日にメキシコのリビエラ・マヤで開催されます。
著者:マキシモ・トレロ博士、部門ディレクター、市場・貿易・制度部門、国際食料政策研究所(IFPRI)、米国
画像:2013年9月12日、ペルーのリマで開催された食の見本市ミストゥラでアンデスの塊茎作物を売る農家。ロイター/エンリケ・カストロ=メンディビル
