旅行・観光の次なる展開は?専門家が語る

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  • 2020年だけで、旅行・観光分野は世界全体で4.5兆ドルの損失を被り、6,200万人の雇用が失われました。

  • しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響から世界が回復するなか、旅行・観光は、包摂的で持続可能かつレジリエントな分野として再び活気を取り戻すことができます。

  • 世界経済フォーラムの「変革する世界」シリーズで、専門家2人が今後のこの分野における主な変革について語ります。

旅行・観光分野は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって最も大きな打撃を受けた分野の一つです。企業だけでなく、観光に依存する経済も、ロックダウンや渡航制限、国際旅行の消失により深刻な影響を受けました。

2020年だけで、この分野は4.5兆ドルの損失を被り、6,200万人の雇用が失われ、世界中の地域社会の生活水準とウェルビーイングに影響が及びました。さらに、国際旅行の停止により、レジャーや出張で旅行する人々は、自らの選択が気候や環境に与える影響について考える機会を得ました。

需要の動向が変化し、今後の機会とリスクが見込まれるなか、より包摂的で持続可能かつレジリエントな旅行・観光分野を構築することは可能であり、また必要です。

世界経済フォーラムの旅行・観光開発指数2021は、回復に向かう旅行・観光分野に包摂性、持続可能性、レジリエンスを組み込むことで、この分野が世界のつながり、平和、経済的・社会的進歩を促す役割を今後も果たせるとしています。

国連世界観光機関(UNWTO)の市場情報・競争力部門責任者であるサンドラ・カルヴァオ氏と、タイに本部を置く太平洋アジア観光協会(PATA)の最高経営責任者、リズ・オルティゲラ氏に話を聞き、世界経済フォーラムの「変革する世界」シリーズの一回で、この分野における主なリスクと機会について語ってもらいました。

現在、旅行・観光分野で見られる世界的な主要トレンドには、どのようなものがありますか?

リズ・オルティゲラ:パンデミックに伴う長期の渡航制限を経て、パンデミックのため長い間連絡を取れていなかった人々にとって、友人や親族を訪ねる旅行(VFR)が今や大きな優先事項となっています。人々は再びつながりを取り戻しています。これは、2つ目のトレンドである複数の目的を組み合わせた旅行にもつながります。特にZoomを通じてデジタルでつながれる今、どこからでも働けるようになったことで、友人との訪問や複数の出張など、旅行者は一度の旅行で複数の目的を果たせるようになりました。そのため、旅行期間や滞在日数は長くなるでしょう。3つ目は、安全とウェルネスへの高い関心が続いていることです。パンデミックを受け、旅行者がまず気にかけることになっています。今やあらゆる旅行がウェルネスに関わっています。

サンドラ・カルヴァオ:持続可能性への関心が高まっていると思います。これは私たちの業界にとって大変喜ばしいことです。消費者、とりわけ若い世代は、自分たちが環境だけでなく、社会や暮らしている地域社会に与える影響について、以前よりずっと意識するようになっています。また、旅行1回当たりの支出も増えています。人々は外出を強く望み、滞在期間も長くなっているのでしょう。一方で、いくつかの課題もあります。規制が直前に変更されることがあるため、直前予約が増えており、旅行者の意思決定に影響しています。その結果、需要の変動を計画し予測するうえで、業界への負担が増しています。

ソーシャルメディアの調査によると、没入感のある体験をした旅行者は、その体験について投稿する傾向が高く、これは業界にとって好ましいことです。

太平洋アジア観光協会最高経営責任者、リズ・オルティゲラ氏

(PATA)

コミュニティ主体の観光とは何ですか。また、なぜ重要なのでしょうか?

サンドラ・カルヴァオ:パンデミックがもたらした前向きな影響の一つは、人々が地域ならではの体験を求め、地域社会と過ごす時間を増やしていることです。コミュニティ主体の観光という考え方は、あらゆる開発の中心に地域社会を置き、地域社会が関与し、力を得て、恩恵を受けられるようにするものです。UNWTOは2020年にG20およびサウジアラビア議長国と協力し、地域社会における観光開発の枠組みを策定しました。この枠組みでは、地域社会が観光活動の計画と運営に参加する必要があるとしています。地域社会の従来の定義を超え、業界が官民双方のセクターと地域社会との連携に支えられる段階へ進む必要があります。

リズ・オルティゲラ:2022年7月、PATAはデスティネーション・マーケティング・フォーラムを開催します。主要テーマの一つがコミュニティ主体の観光です。目的は、地域社会と、文化の真正性を生かした活動を旅行体験の中心に据えることです。すべての関係者に恩恵があります。旅行者は本物の体験を得られます。過密な観光地を訪れるのではなく、地域社会のなかで新しく独自の体験をするのです。こうした体験は地域社会との協力のもとで設計され、地域社会は金融包摂の恩恵を受け、活動が適切に設計されれば、文化遺産の継承強化にもつながります。政府も、国全体にわたる幅広い経済開発に取り組めます。もう一つの興味深いトレンドはクリエイティブ・ツーリズムです。ダンスや料理のレッスンのように、観光客が参加できる体験を作り出すことを指します。ソーシャルメディアの調査によると、こうした没入感のある体験をした旅行者は、オンラインに投稿する傾向が高く、これは業界にとって好ましいことです。

バーチャル体験は楽しいツールですが、目的地を実際に訪れることに取って代わることは決してできないと強調することが重要です。

国連世界観光機関、市場情報・競争力部門責任者、サンドラ・カルヴァオ氏

テクノロジーとイノベーションは、文化資源の活用にどのように役立っていますか?

サンドラ・カルヴァオ:興味深いトレンドの一つとして、旅行を直接予約する人がますます増えています。そのため、地域社会がシステムをデジタル化できるよう支援する必要があります。地域社会がデジタル・プラットフォームを活用して自らを売り込めるよう、教育やスキル向上が重要です。観光客の立場からは、バーチャル体験は楽しいツールではあるものの、目的地を実際に訪れることに取って代わることは決してできないと強調することが重要です。

リズ・オルティゲラ:人々は2年以上にわたり、バーチャルな環境で生活してきました。仮想現実や拡張現実をはじめ、さまざまなアプリケーションやツールなど、驚くべきイノベーションが生まれています。しかし、重要なのは体験、そして目的地です。現実世界での体験を引き続き最優先にする必要があります。テクノロジーのツールは、体験の中核ではなく、それを可能にする手段と捉えるべきです。また、スタッフに関しては、テクノロジーによって教育を真に民主化できます。現場の最前線で働く人々や、コンピューターに容易にアクセスできないもののリアルタイムの情報を必要とする人々に、モバイルを最優先するアプローチを広げる機会があります。

Image: 世界経済フォーラム

この分野では、労働力不足や労働者の再雇用にどのように対応していますか?

リズ・オルティゲラ:北米と欧州では、労働力不足が特に深刻化しています。その影響はアジアにも波及しています。たとえば、人員不足で航空会社が運航便を欠航せざるを得ない場合、欧州で実際に多く見られるように、座席供給数がアジア太平洋地域の回復を妨げる要因になります。これが今の主な制約です。燃料価格の上昇も状況をさらに悪化させています。しかし、アジア太平洋地域の人々は再就職を強く望んでいます。

サンドラ・カルヴァオ:世界各国の旅行・観光分野にとって、労働力不足は優先課題です。パンデミック中に多くの労働者がこの分野を離れ、感染拡大を抑えるための措置をめぐる不確実性によって、この分野が回復するかどうか分からないと感じる人が大勢いました。労働条件、勤務スケジュール、仕事と生活のバランスなど、パンデミック中に労働者の大きな関心事となった課題に取り組む時です。この分野の回復に伴い、新たな人材を迎え入れ、転職した人々の後を引き継げるよう訓練するための時間が必要です。

国内観光が拡大する傾向は見られますか?

サンドラ・カルヴァオ:自国の国内を旅行する人は90億人に上ります。多くの国で、たとえばドイツでは、観光支出の80%超が実際に国内市場から生じています。スペインなどの国や、さらに小規模な経済圏も同様です。再び旅行が可能になると、国内市場はより高いレジリエンスを示す傾向があります。安全や治安に対する認識が主な理由となり、国内市場がまず回復し始めます。世界経済がパンデミックから回復するなか、各国には戦略を見直し、国内市場を異なる視点で捉え、国内旅行者向けにさまざまな商品を活用する好機があります。

Image: 国連世界観光機関

持続可能な観光について、環境に優しい交通手段をどれほど早く普及させられるでしょうか?

サンドラ・カルヴァオ:交通は、エネルギーへの影響や観光に関わる主な要因の一つです。しかし、バリューチェーン全体を見ることも重要です。UNWTOは「ワン・プラネット持続可能な観光プログラム」とともに、観光地や企業による環境保全への取り組みを盛り込んだ「グラスゴー宣言」を発表したばかりです。航空業界では、排出量削減に向けた大きな動きが見られます。技術開発が非常に重要なのは明らかですが、市場の変化に目を向けることも大切です。また、長距離の空の移動に依存する小島嶼国や開発途上国を忘れてはなりません。問題の影響を大幅に軽減するため、確実に投資することが重要です。

リズ・オルティゲラ:「旅行・観光」は非常に幅広い概念なので、単一の業界と呼ぶのは適切ではありません。実際には、多くの業界から成る一つの分野です。パンデミックは、持続可能性という観点で、この分野の影響がいかに広範かを教えてくれました。デスティネーションのレジリエンスを高める大きな動きがあり、これはネットゼロへの道のりで持続可能性を実現する基盤です。現在、会議・イベント(MIE)の基準やツアーオペレーター向けの基準など、影響を緩和するための基準が設けられています。業界内の複数の領域で進展が見られます。分野内だけでなく消費者の間でも、これほど関心が高まっていることを大変心強く感じます。

このインタビューは、「変革する世界」の一環として、ジュネーブにある世界経済フォーラムのスタジオで最初に収録されました。「変革する世界」は、デジタル会員向けのライブ参加型イベントシリーズです。すべてのエピソードを視聴し、今後のセッションに参加するには、こちらから登録してください。

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