すべての企業に必要となる次の経営幹部職:最高信頼責任者

A visitor tries a metaverse service at a technology conference in Barcelona, Spain. Chief Trust Officers must excel in both risk & compliance, and brand & communications.
Chief Trust Officers must excel in both risk & compliance, and brand & communications.Image: Reuters/Albert Gea
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  • Web3では、オンラインブランドはコミュニティが寄せる信頼を基盤とする。

  • この関係を維持するうえで、最高信頼責任者の役割は不可欠となる。

  • 最高信頼責任者には、リスクとコンプライアンス、そしてブランドとコミュニケーションの双方で優れた能力が求められる。

最新のAxios Harris Pollによる、ブランドの評判に対する消費者の認識調査では、100のブランドのうち上位5つに食料品店が3つ入った。ソーシャルメディア企業とテクノロジー企業は、下位10位の中でさらに低い順位に並んだ。

オンライン上の有害な言動、データ侵害、組織的なバイアスは近年、デジタルプラットフォームの運営に損害を与え、それとともに人々の信頼も失われてきた。その影響は公共の安全に壊滅的な打撃を与え、企業にとっては破滅的なものとなるだろう。人々は、より厳しい監視と責任ある対応を求めている。

オンラインコミュニティを有害なものにするために立ち上げた創業者はいない。それでも、正しいことをしようとする企業の確信と、急速に深まる世間の不信との溝を埋める方法は、いつまでも見つからないように思える。

信頼の再構築

私は業界標準を策定し、急速に変化するデジタル社会で信頼を築くために必要な倫理的なテクノロジーを特定してきた。最高信頼責任者という役職を設け、信頼に責任を負う人材を探すべき時が来ている。この役職のあり方や、大役を担える人材を検討する前に、信頼の定義がどのように進化してきたかを振り返ろう。

クラウドコンピューティングがまだ黎明期にあったころ、企業は信頼の要素にセキュリティ、可用性、信頼性を加えた。デジタルトランスフォーメーションの時代に人工知能が広く普及するにつれ、信頼には倫理とテクノロジーの人間中心の利用も含まれるようになっている。仕事の未来においては、多様性、公平性、包摂性が信頼の新たな指標になりつつある。過去20年間で、最高情報セキュリティ責任者、最高デジタル責任者、最高平等責任者という役職が生まれた。

いま押し寄せる波は、さまざまなテクノロジーが収束する新たな津波をもたらし、いわゆるWeb3へとつながる。クリエイターを中心とする没入型の世界であり、広範なモノのインターネット、取引に用いる暗号資産、ユーザー生成の意味表現を担う人工知能によって支えられている。

いま進行しているのは、データ、コンテンツ、安全を民間のソーシャルプラットフォームに預けていたWeb 2.0の時代から、設計と意図の両面で、こうしたかけがえのない資産をクリエイターとユーザーの手に取り戻すよう構築されたWeb3への大きな移行だ。この新しい時代に、ブランドはコミュニティを頼りに成長する。一方、コミュニティは安全のための指針、データの尊重、創造的な多様性の後押しをブランドに求める。安全、プライバシー、包摂性を成長の中核に据えれば、活気あるコミュニティはブランドとのつながりを通じて、自らのアイデンティティを表現できる。

言い換えれば、企業がWeb3で成功するには、新たな信頼の定義にデジタル上の安全、データプライバシー、包摂的なコンテンツを含めなければならない。

信頼への責任

では、こう問いたい。あなたの組織が信頼の概念を最後に定義し直したのはいつだろうか。信頼の見直し、再定義、再構築を誰が担っているのだろうか。

周囲を見回しても該当する人が見当たらないなら、懸念すべきだ。ただし、そうした状況にあるのはあなただけではない。多くの組織には最高信頼責任者という職は存在しないが、Web3が到来するなか、現実の世界でも急速に必要とされる役職になりつつある。では、適任者をどう見つければよいのだろうか。あるいは、自分がその役割にふさわしいかどうすればわかるだろうか。

まず、新興テクノロジーと倫理的なテクノロジーに精通した人を探す。

最高信頼責任者を目指す人は、Web3でブランドがコミュニティと交流するための新たな手段を理解する必要がある。新世代のユーザーは、コミュニティ、クリエイター、デジタル所有権を重視するコミュニケーションや取引のプラットフォームを選ぶ。Discord、OpenSea、MetaMaskが近年急成長を遂げたことが、その証拠だ。

最高信頼責任者は、オンラインの未来がどこにあり、なぜ新世代がそこにいるのかを経営陣に伝えるだけでなく、テクノロジーを使って彼らを守る方法への理解を深めなければならない。

Web3を、台頭するモノのインターネット、3Dグラフィックスを基盤とするメタバース、意思決定を支援するAIを備えたセマンティックウェブというテクノロジーの枠組みに分けて考えることができる。こうした技術の進歩に対応するため、ビジネスリーダーは差分プライバシー、暗号化、文脈を踏まえたAI支援型モデレーションなどの倫理的な手法を通じて、データを保護し、ユーザーの安全を守り、コンテンツの多様性を確保する方法を再考しなければならない。最高信頼責任者となる可能性のある人材には、これらすべての応用について知識を持ち、根本から理解していることが求められる。

次に、信頼の価値を効果的に伝えている人を探す。

リスクとコンプライアンス、またはブランドとコミュニケーションの経験は、ブランドに信頼を高める機能を取り入れるうえで役立つ。取締役会と協働した経験があれば、大きな強みとなる。しかし、リスク重視のコンプライアンス担当者も、収益重視のマーケターも、会社の隅々まで信頼を浸透させるには、自らのアプローチを広げ、もう一方の視点を強化する必要がある。

プライバシー、セキュリティ、コンプライアンスの責任者は、長らく企業の監視役を務めてきた。こうしたリーダーは信頼を高めるテクノロジーの価値を深く理解しているが、そうした技術から生まれる前向きな変化を組織の他の人々にも伝えなければならない。一方、最高マーケティング責任者をはじめ、ブランドや収益を重視するリーダーは、製品マーケティング、コミュニケーション、コミュニティの活性化を通じて、すでに自然な形で信頼の大使となっている。

リーダーは、自分が必要だと思っていた以上に深くテクノロジーを掘り下げなければならない。先進的な信頼戦略をつくるために、テクノロジーの落とし穴と潜在的な利点を本当に理解する時間を取る必要がある。

最後に、その人の回復力を試し、どのように反応するかを見極める。

企業の世界で信頼は壊れやすい。顧客やコミュニティから信頼を得るのは難しく、それを維持するのはさらに難しい。組織の最上層で信頼に責任を負う人は、どれほど多くの人の反感を買う可能性があるかを十分に理解したうえで、その役職に就く必要がある。

最高信頼責任者は、単に悪魔の代弁者を務めるだけでなく、さらに一歩踏み込む覚悟が必要だ。経営陣や取締役会と協力して信頼に関する取り組みを合理化し、障害を見つけ、連携を形にし、必要な資源を確保する日もある。別の日には、企業の規模拡大と成功をもたらしてきたあらゆるものに立ち向かい、既存のブランドにとって真の宿敵となって、事業の中核に信頼を浸透させる必要がある。したがって、誠実な自分でいることを恐れない、回復力のある人がこの役割を担わなければならない。

いまがその時

この3つの条件を満たす人を見つけたら、まずは上出来だ。しかし、待ってはいけない。採用したら、組織再編を進め、予算を確保し、チームを採用し、組織全体に適した指標を整えよう。信頼はあれば望ましいという程度のものではない。Web 2.0からの移行を急ぐいま、事業に不可欠な要件だ。行動を起こすブランドこそ、10年後も人々に知られているだろう。疑いようもなく、信頼は新たなデジタルトランスフォーメーションだ。

Citiによると、メタバースの総アドレス可能市場は8兆ドルから13兆ドルとなる見込みだ。しかし、これらのブランドがコミュニティを通じて築く体験を台無しにするハラスメント、データ侵害、有害な言動、ヘイトスピーチが至る所に潜んでいる。各組織に信頼を一元的に担う責任者が置かれて初めて、Web3は固有の問題を乗り越えられる。

それまでは、ソーシャルウェブから引き継いだ安全、プライバシー、包摂性のリスクに後手で対処し続け、Web3の価値を内側から損なっていくだろう。最高信頼責任者が問題を塞ぎ、システムを再構築し、ウェブの中心に信頼を取り戻すまで、この状況は続く。

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