練習しすぎということはない。スキルを定着させる方法

Agnieszka Radwanska of Poland grips her racquet as she receives serve from Elena Dementieva of Russia during their match at the Indian Wells WTA tennis tournament in Indian Wells, California March 17, 2010. REUTERS/Kevin Lamarque (UNITED STATES - Tags: SPORT TENNIS) - RTR2BR6I
To acquire a new skill, you need to go above and beyond expectations, research says.Image: REUTERS/Kevin Lamarque
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何かをすばやく学び、そのスキルを定着させるには、習得したと思える段階からさらに20分間練習する。

新たな研究がNature Neuroscience誌に掲載された。この研究では、被験者に視覚知覚の課題を学習してもらい、「過剰学習」がパフォーマンスの向上を定着させる可能性があることを示した。

従来の研究と今回の研究は、新しい課題を学んだ直後に似た課題を学ぶと、2つ目の学習がしばしば1つ目の課題で得た習熟を妨げ、損なうことを示している。

今回の研究によると、過剰学習はこうした干渉を防ぎ、学習を非常にうまく、すばやく定着させるため、逆の種類の干渉が起きる。一定期間、最初の課題を過剰に学習すると、2つ目の課題を効果的に学べなくなる。最初の課題の習熟を保つために、学習が固定されるかのようだ。

研究者らが突き止めた根本的な仕組みは、学習が起きた脳領域で神経の柔軟性、すなわち「可塑性」を制御する2種類の神経伝達物質のバランスが一時的に変化することだとみられる。

Image: Nature Neuroscience

この研究は視覚学習の課題に焦点を当てたが、責任著者であるブラウン大学の認知・言語・心理科学教授、渡辺武雄氏は、干渉などの現象が同様に働く運動課題をはじめ、ほかの種類の学習にもこの効果が当てはまる可能性が高いと確信していると述べる。

さらなる研究で、過剰学習の効果が学習全般にも及ぶことが確認されれば、訓練のタイミングを最適化するための助言として、次のことが示唆される。

- 訓練をすばやく定着させるには、過剰学習が役立つだろう。ただし、その直後に行う似た学習に干渉する可能性があるため注意が必要だ。

- 過剰学習をしない場合は、似た内容を続けて学ぼうとしないこと。2回目の学習が1回目を損なうおそれがある。

- 時間に余裕があれば、2つの訓練の間を数時間空けることで、干渉を受けずに2つの課題を学べる。

「とても重要なことを学びたいなら、過剰学習は良い方法かもしれません」と渡辺氏は言う。「過剰学習をすれば、学んだことを忘れずにいられる可能性を高められるでしょう」

訓練のブロック

この研究結果は、渡辺氏と筆頭著者の柴田和久氏、共同研究者らが計183人の被験者に参加してもらった複数の実験から得られた。実験では、続けて提示される2枚の画像のうち、どちらが規則的な向きのパターンを持ち、どちらが構造のないノイズを描いているかを見分ける課題を学習してもらった。訓練を8回、つまり「ブロック」行った後、最初の被験者60人は課題を習得したように見えた。訓練時間は合計で約20分だった。

これを踏まえ、研究者らは新たに2つの被験者グループを作った。訓練前の事前テストの後、第1グループは課題を8ブロック練習し、30分待ってから、新しい類似課題を8ブロック訓練した。翌日、学習内容を評価するため、両方の課題についてテストを受けた。もう一方のグループも同じ手順を行ったが、最初の課題を16ブロック訓練して過剰学習した。

翌日のテストで、第1グループは事前テストと比べて最初の課題の成績がかなり悪かった一方、2つ目の課題では大きく進歩した。これに対して過剰学習グループは、最初の課題で高い成績を示したが、2つ目の課題では有意な向上がなかった。通常の学習をした被験者は(予想どおり)2つ目の課題による干渉を受けやすかったが、過剰学習した被験者はそうではなかった。

新たな被験者を対象とした2つ目の実験では、課題の訓練の間隔を30分から3.5時間に延ばした。翌日のテストでは、過剰学習したグループも、しなかったグループも、両方の課題で有意な向上を示し、成績のパターンは似ていた。学習課題の間に十分な時間を置けば、どちらの種類の干渉も見られず、被験者は両方の課題をうまく学習できた。

脳を探る

何が起きていたのだろうか。研究者らは3つ目の実験で、磁気共鳴分光法を使い、被験者が学習する間の2種類の神経伝達物質のバランスを追跡して、その答えを探った。

研究者らは各被験者の脳の「初期視覚野」に焦点を当て、可塑性を促進するグルタミン酸と、それを抑制するGABAの比率を追跡した。一方の被験者グループは課題を8ブロック、もう一方は16ブロック訓練した。その間、全員が訓練前、30分後、3.5時間後にMRS検査を受け、通常どおり訓練前と訓練後の成績テストにも参加した。

過剰学習した被験者と通常の学習をした被験者では、神経伝達物質の比率の変化に正反対のパターンが見られた。全員が同じ基準値から始まったが、通常の学習をした被験者では、訓練から30分後にグルタミン酸とGABAの比率が大幅に上昇し、3.5時間後にはほぼ基準値まで低下した。一方、過剰学習した被験者では、訓練から30分後にこの比率が急激に低下し、3.5時間後にはほぼ基準値まで上昇した。

言い換えれば、通常の学習をした人の可塑性がピークに達していた段階(最初の訓練が2つ目の訓練による干渉を受けやすい状態)で、過剰学習をした人では抑制が強まり、最初の訓練が保護される一方、2つ目の訓練への道が閉ざされていた。3.5時間後には、全員がほぼ通常の状態に戻っていた。

最後の実験で研究者らは、被験者ごとのグルタミン酸とGABAの比率の低下幅が、最初の訓練が2つ目の訓練を妨げる度合いに比例することを示した。これは、神経伝達物質の比率と過剰学習の効果との関連が偶然ではないことを示唆している。

この研究は、米国国立衛生研究所、米国国立科学財団、日本学術振興会の助成を受けた。

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