南アジアのパキスタンでは、多くの地域ですでに食料と水の安全保障が脆弱だが、気候変動の影響がさらなる脅威となっていると、独立系の人権監視団体が金曜日に述べた。
「モンスーンのパターンが変化している。3年連続で、3月のモンスーン前の大雨と雹を伴う時期が作物に被害を与えた」と、パキスタン人権委員会は 年次報告書で指摘した。
「農業従事者はこうした変化に対して脆弱であり、農家を支え、食料安全保障を確保できるよう支援するセーフティーネットが十分にない」と付け加えた。
パキスタン連邦農業委員会は、2014年10月から2015年3月までのシーズンの小麦生産目標を2,630万トンに設定した。前年の同じ期間の収穫量は2,530万トンだった。
シンド州など南部地域では、小麦の収穫がまもなく始まる。東部のパンジャブ州、北西部のカイバル・パクトゥンクワ州、南西部のバロチスタン州では、5月に始まる予定だ。
パキスタン気象局の首席気象官、グラム・ラスル氏は、3月の異常な早雨と、小麦の収穫・脱穀期の天候が不確実だとの予測により、農家に損失が生じる可能性があると警告した。
ここ数週間に見られたような強風はマンゴーを木から落とすおそれがあり、雹を伴う嵐はパンジャブ州南部で果実の品質に影響しかねないと、ラスル氏は国内メディアで述べたと伝えられた。
冬に播種し夏に収穫するその他のラビ作物、たとえばマスタード、ひよこ豆、レンズ豆、ジャガイモなどの野菜も、今年は脅威にさらされていると同氏は付け加えた。
農家の負担
研究者らは今週、 新たな調査 で、気候変動によるパキスタンの農家世帯の負担が増大していると警告した。
「適応型農法を導入しなければ、農業生産性の8~10%、1エーカー当たり3万ルピー(295ドル)に相当する分を失う可能性がある」と、独立系の気候変動専門家で環境弁護士のアフマド・ラファイ・アラム氏は述べた。
報告書の執筆者の一人で、WWFパキスタンのエコノミストであるアリ・デラヴィ氏は、適応策を実践すれば、綿花と小麦の生産性を最大で約50%高められる可能性があると述べた。
パキスタン人権委員会の 報告書は、 異なる作物を栽培するための適応計画を策定するか、変化する気象パターンによりよく対応できる品種を導入するよう勧告した。
同委員会の委員長ゾーラ・ユスフ氏は、人口圧力、天然資源の減少、貧困の拡大により、見通しは厳しいと述べた。
報告書はまた、「統治上の隔たり」に言及し、それが「環境の悪化による脅威について政府が認識し、あるいは懸念しているという印象を裏切っている」と指摘した。
連邦政府は、環境、生態系、保健、食料生産、農業などの問題の権限を、主に州に移譲している。
弁護士のアラム氏は、州当局、とりわけシンド州とパンジャブ州は、気候適応政策の策定にほとんど取り組んでいないと述べた。
「水と食料の安全保障を確保する責任は、連邦政府だけでなく州にも同じようにある。しかし、課題の規模に対応する緊急性を認識している様子は見られない」と同氏は述べた。
水をめぐる緊張
報告書は、気温上昇に伴う氷河後退の見通しも踏まえ、農業、産業、都市利用、環境流量のための水の利用可能性は「依然として議論の的」だと指摘した。
水資源の分配方法をめぐる意見の相違は、隣国インドとの間だけでなく、パキスタン国内の州の間にも緊張を生んでいる。
人権委員会のユスフ委員長は、気候の極端現象や、水のような限られた資源への圧力も、国内移住を促す可能性があると述べた。
「洪水や干ばつなど環境上の理由で人口がある地域から別の地域へ移動すると、避難を余儀なくされた人々にも受け入れ地域の住民にも問題が生じる」と同氏は付け加えた。
アラム氏によると、 インダス水利条約は、カーブル川を除くインダス川の支流に関するインドとパキスタンの権利を規定しており、これまで紛争の解決に役立ってきた。しかし、インドが条約に違反しているというパキスタン国内の非難は収まっていないと同氏は付け加えた。
「おそらく、インドが『盗んでいる』とされる水よりも、私たちが浪費し汚染している水のほうが多い」と同氏は述べた。
パキスタンでは、 インダス川水系庁 がパンジャブ州とシンド州の間の水の流れを管理している。しかしアラム氏は、「不安定な公的枠組み」では、インダス川流域の水をどのように配分し利用するかについて、州間の妥協点を見いだせていないと述べた。
「水資源の枯渇は食料安全保障に深刻な影響を及ぼす。人口増加率が高いため、食料安全保障はすでに懸念事項となっている」と委員会の報告書は指摘した。
本記事は、 トムソン・ロイター財団 trust.org との協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムによる見解の支持を意味するものではありません。
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著者:ワカル・ムスタファ氏はラホールを拠点とするフリーランスライターで、気候変動に関心を持ち、トムソン・ロイター財団に記事を寄稿している。
画像:パキスタンのインダス川デルタで、浸食される干潟に危うげに立つ住宅。TRFRina Saeed Khan..jpg
