長年顧みられなかった農業が、2017年、ついに気候変動交渉の議題に上った。国連の気候変動交渉が続く間、農業が取り上げられなかったことは常に際立っていた。
世界の貧困層は、その大半が生計を農業に頼っており、収穫を壊滅させる熱波や干ばつ、洪水によって最も大きな被害を受けると見込まれている。科学者が分析した極端な気象現象の多くについて、その発生可能性と深刻さが気候変動と関連づけられている。
農業と食料システムは、温室効果ガス総排出量の最大3分の1にも寄与している。それでも、より賢い農業を実践し、排出量を削減しながら、すべての人に栄養価の高い食料を提供する余地は大きい。
突破口となったのは、新たな作業計画の策定だった。農業に関する課題を話し合うため、2年間にわたって実施される計画である。12月にポーランドで交渉が続いたが、今後の道筋について議論が続き、進展は遅かった。
しかし、農業に関わるすべての人々の間で、自ら行動を起こそうとする機運が高まっていることは確かだった。気候変動や、栄養不良、水質汚染、生物多様性の喪失といった他の世界的課題に真剣に取り組むなら、今後10年間で食料システム全体を変革する必要がある。生産から消費までを見直し、これから何をすれば、前進へのアイデアを具体的な行動に移せるだろうか。
気候対応型農業への資金調達を促進する
農業の生産性向上、気候変動への適応、排出削減を目指す気候対応型農業は、世界各地で広がりつつある。炭素を土壌に安全に蓄えるため、土壌をできるだけかく乱しない保全型農業や、より少ない土地と水で育つ高収量・耐干ばつ性作物の育種といった取り組みが、農家の間で普及し、利用しやすくなっている。
しかし、気候対応型農業の取り組みを拡大するために必要な資金は不足している。世界の小規模農家には、推定2,000億ドルの資金不足がある。脆弱な立場にある農家に必要な資金を届けるため、ポーランドで発表された新たな報告書は、33カ国における気候対応型農業の優先課題を分析した。この分析には1,300人の専門家が参加した。
この結果から、どの取り組みが最も「気候対応型」なのかが見えてくる。重点地域3カ所で結果は異なる。たとえばアフリカでは、樹木と家畜を組み合わせる「シルボパスチャー」が最も気候対応型の選択肢と評価された一方、アジアではバイオガスの利用が首位となった。ラテンアメリカでは、間作が第1位だった。
土壌保全の取り組みを強化する必要がある
土壌には、大気中の炭素を取り込む大きな可能性がある。最近の研究によると、農地の管理を改善すれば、毎年、炭素排出量を米国の総排出量に相当する規模で相殺できる可能性がある。土壌の健全性も高まる。アフリカ、アジア、ラテンアメリカで行われた研究では、土壌中の炭素を毎年0.4%増やすと、作物収量が1.3%増加した。
科学者たちは、パリ協定の公約達成を後押しするため、土壌の「再炭素化」に向けた8段階の行動計画を発表した。泥炭地の保護は優先課題の一つだ。泥炭地には現在、土壌中の炭素全体の約40%が蓄えられているが、排水や焼却、農地への転換による脅威にさらされている。土壌による炭素吸収を確実に報告する方法の開発も重要な一歩だ。土壌検査をより安価かつ迅速に、さらに正確に行える技術が必要である。
栄養に及ぼす気候変動の影響に目を向ける必要がある
気候変動は、栽培できる食料の量だけでなく、その質にも影響を及ぼしている。研究によると、二酸化炭素濃度の上昇は、小麦、米、ジャガイモなど一部の食料の生育に実際にはプラスの効果をもたらす。しかしその反面、健康的な食生活に必要な他の栄養素を犠牲にして、炭水化物の生産が増える可能性が高い。
研究が最近『ネイチャー』誌に掲載され、この説を裏付けている。気候変動が進む状況下でも、増加する人口を養うのに必要な量を上回るカロリーを供給できることが示された。しかし、健康的な食生活の維持に欠かせない主要な微量栄養素を十分に含む食料の生産は、世界のほぼすべての地域で深刻に不足する可能性も高い。
将来の人々の栄養を確保するには、果物、野菜、豆類、ナッツ類など栄養豊富な食品の生産を増やすとともに、微量栄養素をより多く含む新たな作物品種の開発にも取り組む必要がある。
世界の食料システムを変革するために残された時間は短い。国連での交渉が遅々として進まない一方、現場での行動は勢いを増している。農場で働く農家から、食料を選ぶ消費者まで、誰もが将来のニーズに応えるより良い食料システムの構築に貢献できる。

