魚の中には、捕食者を惑わせ、群れの生存率を最大限に高めるために群れを形成する種がいる。
しかし、現代の漁法では、群れ全体を一度に捕獲できてしまう。
漁獲圧の高い海域では、魚がより小さな群れで泳いだり、単独で泳いだりし始めている可能性があると、新たな研究が示している。
魚を見つけて捕獲するのが難しくなれば、漁業に深刻な影響を及ぼすおそれがある。
捕食者を逃れるため、魚が巨大な群れをなし、協調して泳ぐ光景は、「群泳」と呼ばれ、自然番組を好む多くの人におなじみだ。
しかし、新たな研究によると、この驚くべき光景は今や見られなくなるかもしれない。現代の産業漁業が魚の行動を変化させている可能性があるという。生き延びるために群れを避けるようになり、その影響は広範囲に及ぶおそれがある。
現代の漁法では、ドローンや航空機を使って上空から大きな群れを見つける。そのため、大型のトロール網や「まき網」と呼ばれる網の壁で、群れ全体を捕獲できる。
しかし、こうした大量捕獲の手法が用いられている海域では、魚はより小さく、発見しにくい群れで泳いでいる可能性があると、群泳行動をシミュレーションした科学モデルは示している。
「人間は多くの海洋生態系で支配的な捕食者となっており、群れを形成する種を狙い撃ちするために、現代の漁具が開発されてきた」と、『Proceedings of the Royal Society B』に掲載された研究の著者らは記している。
「そのため皮肉なことに、人間以外の捕食者を避けるために進化した行動戦略が、特定の魚を人間による捕食に対して、かえって無防備にしている可能性がある。」
単独で泳ぐ魚の影響
これは、しばしば資源量や利益率だけで捉えられてきた魚が、捕獲を避けるために行動を適応させる能力を持つことを示唆するだけでなく、魚を獲る人々にも影響を及ぼす。
漁業は世界中で何百万人もの生計を支えている。水産物部門の市場規模は3,620億ドルに上り、8億人に収入をもたらしている。
魚の群れが小さくなるにつれ、捕獲に必要な資源が増え、業界の収益性に影響が及ぶ。
また、人間が魚の大群をすばやく効率的に捕獲するのが難しくなるだけでなく、クジラ、イルカ、サメなど、群れで泳ぐ魚を餌とする捕食者の食習慣も変化するだろう。
論文の著者らは、この傾向は逆転可能だと考えているが、それを実現するには、漁業活動を大幅に縮小する必要があると述べている。
乱獲は依然として深刻かつ喫緊の課題だ。乱獲状態にある魚類資源は、半世紀で3倍に増えたとWWFは指摘している。また、「混獲」、つまり捕獲されても利用されない海洋生物によって、何十億もの魚やその他の海洋動物が失われ、海洋生態系のかく乱がさらに深刻化している。
さらに、発展途上国の多くの漁業は、持続可能な形で運営するための資源が不足している一方、違法漁業の規模は年間364億ドルに上ると推定されている。
海洋を捉え直す
乱獲は海洋生態系への脅威の一つにすぎず、ほかにも気候変動や汚染がある。
こうした課題の解決策を見つけるため、世界経済フォーラムのUpLinkプラットフォームは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に役立つイノベーションを幅広く募ることを目指し、第2回アイデア・スプリントを開始した。
UpLinkの「Ocean Solutions Sprint 2」では、主に4つのテーマで提案を募集している。魚介類や海藻の養殖を含む再生型養殖、サンゴ礁の保護と再生、気候変動に対する自然を活用した解決策への投資、海洋保護区を支援する技術だ。


