妊娠中または出産時に、2分ごとに女性が1人亡くなることは、決して容認できません。
予防可能な妊産婦死亡をなくし、2030年までに出生10万人当たりの世界の妊産婦死亡率を70人未満に引き下げるという持続可能な開発目標を達成するには、緊急の行動が必要です。
世界経済フォーラムの母子保健グローバル・アクティベーター・ネットワークは、各国の状況に合わせた解決策を加速させるため、各国政府との連携を目指しています。
世界保健機関(WHO)は、2025年4月7日の世界保健デーのテーマとして、次を発表しました。健やかな始まり、希望に満ちた未来。今年は、母親と新生児の健康と生存率の向上に焦点を当てています。これは世界全体にとって差し迫った優先課題です。2分ごとに、妊娠中または出産時の合併症によって女性が命を落としています。この厳しい数字が示すのは、個人の悲劇だけではありません。世界中の家族や地域社会にも深刻な影響が及んでいます。
目標達成まで残り5年となるなか、持続可能な開発目標の達成に向けて、格差を解消するため、母親と新生児に不可欠な医療を優先しなければなりません。昨年の世界保健総会では、妊産婦死亡数が特に多い国々が母子保健の緊急事態を訴え、行動を加速させる決議が採択されました。
医療制度の弱体化や不可欠な保健資源の枯渇が、妊産婦と新生児の死亡率を驚くほど高い水準に押し上げています。妊産婦死亡のうち、64% は、世界保健機関が人道危機の影響を受けていると特定した29か国で発生しました。各国政府、NGO、ドナー、開発機関、民間セクターが一丸となり、断固たる行動でこの母子保健の緊急事態に対応する必要があります。
低所得国および低中所得国に偏ってのしかかる負担
妊産婦死亡の94%超は、低所得国および低中所得国で発生しています。これらの地域の女性は、質の高い医療を受けるうえで多くの障壁に直面しています。医療インフラの不備、訓練を受けた医療従事者の不足、質が保証された重要な母子保健用医薬品や機器へのアクセス不足などです。さらに、貧困、教育の欠如、劣悪な生活環境といった社会経済的格差がこうした課題を深刻化させ、母子保健の不良な結果が続く悪循環を生み出しています。母子保健の格差は、開発途上の経済圏だけに限られません。母子保健の結果には、先進経済圏の内部にも格差があります。その要因には、質の高い医療へのアクセスや保険適用範囲などがあります。
世界経済フォーラムは、医療制度の改善にどのように取り組んでいますか?
保健・医療センターは、アクセス、公平性、レジリエンス、備えなど、世界各地の医療制度が直面する課題への理解を深めるため、リーダーたちをつなぎます。
信頼に基づく対話と官民連携を通じて、同センターはパートナーが共通の優先課題に沿って連携し、健康面の成果を高めるための集団的な行動を進められるよう支援します。
複合危機:気候変動、紛争、世界的な混乱の影響
母子保健は、気候変動、地政学的紛争、景気後退、継続する感染症の流行によって、ますます脅かされています。極端な暑さなどの気候上の危険は、妊娠合併症のリスク上昇と関連しており、妊娠糖尿病や高血圧性疾患などが含まれます。さらに、洪水やハリケーンなどの気候災害の余波によって、医療施設や医薬品へのアクセスが妨げられることがあります。その結果、妊産婦の罹患率と死亡率が上昇し、サービスの中断が長期化するおそれがあります。
紛争の増加により、過去20年間で7,000万人を超える人々が避難を余儀なくされました。その結果、母子保健に壊滅的な影響が及び、多くの地域で機能する保健サービスが失われ、格差も深刻化しています。紛争は、効果的な保健サービスの実施や母子保健に関する研究を困難にします。財政面・地政学面の不安定さ、避難民が暮らす厳しい環境や遠隔地、高い職員離職率、限られた投資が、妊娠中や産後の女性を守る妨げとなっています。
行動とイノベーションの加速に向けた呼びかけ
予防可能な妊産婦死亡をなくし、2030年までに出生10万人当たりの世界の妊産婦死亡率を70人未満に引き下げるという持続可能な開発目標(SDG)を達成するには、緊急かつ革新的で、的を絞った対策が必要です。現在のペースでは、80%を超える国々がSDGの妊産婦死亡率目標を達成できないと予測されています。目標達成には、妊産婦死亡率の現在の低下ペースを9倍に加速させる必要があります。朗報は、人道危機の状況下でも、死亡を減らすための費用対効果が高く、手頃な価格で、品質が保証された解決策がすでにあることです。
世界経済フォーラムの母子保健グローバル・アクティベーター・ネットワークは、各国の状況に合わせた解決策を加速させるため、各国政府や保健省との連携を目指す触媒的な取り組みです。この取り組みは、各国がSDG目標に沿って取り組めるよう、次の方法で支援することを目指しています。
⦁ 母子保健における体系的な変革を推進するため、効果的な官民・市民社会のパートナーシップを育成する。
⦁ 世界と地域の関係者をつなぎ、効果が実証された介入策を拡大できるよう、地域のエコシステムを強化する。
⦁ 国同士のリーダーシップや学び合い、優良事例の交換を促進する。
ナイジェリアが先導
ナイジェリアは、母子保健グローバル・アクティベーター・ネットワークに最初に参加した国となりました。「妊産婦死亡率を急減させる」という決意を示し、この重要な目標の達成に向けて分野横断的に取り組んでいます。
この決意は、意向書への署名によって具体化されました。2025年の世界経済フォーラム年次総会で、ナイジェリア連邦保健・社会福祉省と世界経済フォーラムが意向書に署名しました。その直後の2025年3月、連邦保健・社会福祉省およびフェリング・ファーマシューティカルズと協力し、プロジェクトが範囲設定ワークショップで始動しました。世界経済フォーラムは、国内の母子保健と妊産婦死亡に取り組むための官民・慈善セクター連携の主要な優先課題を定めるべく、このワークショップを主催しました。助産師の研修強化と、品質が保証された母子保健用品へのアクセス確保が決議され、啓発、資金調達、調整がその基盤となる促進要因とされました。民間セクターと市民社会の組織は、このプラットフォームを通じてナイジェリアの「妊産婦死亡率を急減させる」ため、共に課題解決に取り組むことを約束しました。これを受け、決議の推進に向けてエコシステムを強化するためのフォーカスグループが設置されつつあります。
グローバル・アクティベーター・ネットワークは、妊娠中や出産時の予防可能な死亡をなくすためのロードマップを策定すべく、ネットワークへの参加が見込まれる他の候補者とも協議しています。今年後半には、インドとインドネシアへ拡大する可能性があります。。
多面的な課題には、多様な関係者による解決策が必要
母子保健において持続可能な進展を遂げるには、各国政府、民間セクターのパートナー、市民社会組織、世界の保健機関が協力して成果を生み出す、包括的なエコシステムのアプローチが必要です。母子保健グローバル・アクティベーター・ネットワークは、民間セクターの重要な役割を認識し、各国政府と連携してその参画を促すことに取り組んでいます。その役割には、イノベーションの拡大、命を救う母子保健関連の物資や用品への投資、不可欠な医薬品や技術のサプライチェーン強化が含まれます。市民社会を効果的な実施と公平なアクセスを支える重要な橋渡し役とし、母子保健の解決策を地域社会中心に共同設計し、医療制度に持続的に組み込み、人々を中心とする体系的な変革によって推進することを、同ネットワークは目指しています。
