英国で新型コロナワクチンが初めて利用可能になってから1年がたちました。
新型コロナワクチンは高い効果を発揮していますが、今問われているのは、どうすれば最も効果的に活用できるかということです。
すべての国の人々に初回接種を届けることが、ハイリスクグループから始める、差し迫った世界的な最優先課題です。
英国で新型コロナワクチンが初めて利用可能になってから、今や1年がたちました。それでも、この危機の終わりは12カ月前と比べて近づいたようには見えません。全国的にワクチン接種が進んだにもかかわらず、感染者数は再び増加し、国民保健サービス(NHS)は依然として対応に苦慮しています。さらにオミクロン株の出現により、状況がさらに悪化するのかどうかも不透明です。
これほど有効なワクチンがあるのに、なぜこのような事態が起きるのでしょうか。新型コロナワクチンが効かないということではありません。実際、非常に高い効果があります。単に、ウイルスを抑え込むためにワクチンを最も効果的に活用できていないのです。
パンデミック下でワクチン接種が最大の効果を発揮するのは、まず最もリスクの高い人々を守り、その後、接種率を高めて感染症の拡大を抑えることです。英国を含む多くの政府は、この点に迅速に取り組んできました。とりわけ、自国民の保護に関してはそうです。
問題は、世界的なパンデミックに対処するには、意図した効果を得るため、この戦略を世界規模で実施する必要があることです。そのため、国内では感染者数や死亡者数を減らせても、次の危険な変異株が現れるまでしか効果が続かず、感染再拡大のサイクルが続いてしまうことがあまりにも多いのです。
新型コロナワクチンがまだ届いていない人は36億人
今まさにそうした事態が起きているのは、英国のような多くの高所得国では国民の約70%がすでに接種を完了している一方、世界には、主に最貧国を中心に、初回接種をまだ受けていない人が約36億人いるためです。ウイルスでは、変異が起き、新たな変異株が出現するリスクは、感染伝播率に直接関係しています。つまり、ワクチン未接種の人々が大規模に存在し、ウイルスの拡散を可能にする期間が長いほど、新たな、そして潜在的により危険な変異株が出現する可能性が高まります。
さらに、新たな変異株が出現し、その中で優勢になる株(現在はデルタ株ですが、近いうちにオミクロン株になる可能性が高い)は、一般に感染力が強くなります。例えばデルタ株の感染力はアルファ株より最大60%強く、武漢で最初に確認された新型コロナウイルスのおよそ2倍です。新型コロナワクチンは感染伝播をある程度防ぎますが、感染力が強まるほど、ワクチンによる免疫を回避する機会が増え、変異や新たな変異株の出現につながる可能性も高まります。
このサイクルを断ち切り、来年の今ごろ、再び不安な冬を迎える可能性を減らすには、すべての国の人々に初回接種を届けることを、ハイリスクグループから始める差し迫った世界的な最優先課題としなければなりません。対象となるのは、仕事柄ウイルスに接触する可能性が高い、世界中の医療・社会福祉の最前線で働く人々全員と、高齢者など、ウイルスの影響を受けやすいすべての人々です。
例えば65歳を超える人は、入院する可能性が40倍以上高く、感染した場合に死亡するリスクは1,300倍高くなります。このリスクは年齢とともに上昇し、75歳では入院する可能性が65倍、死亡リスクが3,200倍になります。
英国では、こうした人々は長らく保護されてきました。新型コロナワクチンは重症化、入院、死亡を防ぐ効果が非常に高いため、英国のような国では、新型コロナは実質的に未接種者の病気となっています。集中治療室(ICU)にいる感染者の大多数は、接種を受け損ねた、あるいは受けない選択をした人々です。しかし、初回接種を受けた人がわずか6.3%にとどまる最貧国では、何百万人もの人々が依然として無防備で、危険にさらされています。
新型コロナワクチンが初めて利用可能になる前から、COVAXは、ワクチンへのアクセス確保が難しかったであろう低所得92カ国に暮らす人々を守るため、世界的な取り組みを主導してきました。英国で初回接種が行われてからわずか39日後に、これらの国々の人々にワクチンを届けるなど、当初は成果を上げました。しかし、繰り返し困難に直面しました。最富裕国がワクチンを買い占め、各国がワクチンやその製造に必要不可欠な部材の輸出を制限したのです。これにより公平なアクセスが大きく妨げられ、新型コロナワクチンの世界的な分配に甚だしい格差が生じた主因となり、世界が今なお危機にある理由となっています。
新型コロナワクチン:世界規模の取り組み
各国が協力せず、世界的な取り組みよりも自国の利益を優先したことで、政府による自国民保護の取り組みは、意図せず人々の苦しみを長引かせました。ウイルスが制御不能なまま拡散し続けることを許したためです。現在、新型コロナワクチンは月15億回分が生産されており、世界的な供給の課題はようやく緩和しつつあります。各国政府も世界的な取り組みに本腰を入れています。
オミクロン株に関する最大の危険は、そこから学ばず、過去の過ちを繰り返すことです。
セス・バークレー
COVAXはこれまでに、144の国・地域へ約6億3,000万回分を届けており、その大半は低所得国です。年末までには、合計で8億回分から10億回分を届けられる見込みです。それで、低所得国にいるハイリスクの人々をようやく守るのに十分な量となるはずです。
ここまで来た今、懸念されるのは、オミクロン株を前に、最富裕国の政府が再び自国のことに目を向けることです。政府は自国民を守るためにあらゆる手を尽くす必要がありますが、何が最も大きな効果をもたらすのかを考えることも重要です。すでに接種を受けた低リスクの人々に急いで3回目の追加接種を行うのか、それとも次の変異株を防ぐために必要な何十億回分もの初回接種を届けることに全力を注ぐのか、ということです。
結局のところ、この変異株がより重い病気を引き起こすのか、それとも軽い病気を引き起こすのか、感染力はどれほどか、新型コロナワクチンへの耐性はどれほどか、私たちにはまだ分かりません。しかし、オミクロン株に関する最大の危険は、そこから学ばず、過去の過ちを繰り返すことなのかもしれません。

