BBQ用ライターから着想を得た、新たなワクチン投与の方法

BBQ lighter-inspired device created to deliver vaccines.
The device was part-inspired by a BBQ lighter.Image: Candler Hobbs/Georgia Tech
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  • 新しいデバイスにより、ワクチン投与が簡素化される可能性があります。

  • ライターとマイクロニードルから着想を得ています。

  • 電池を必要とせず、低コストで大量生産できる可能性があります。

研究者らは、BBQ用ライターとマイクロニードルから着想を得て、「エレクトロポレーター」と呼ばれる手持ち式デバイスによってワクチン投与を簡素化しうる革新的な方法を開発し、検証しました。

エレクトロポレーションは、短い電気パルスを用いて分子を細胞内に送り込むものとして、研究室で一般的に用いられていますが、現行の手法では大型で複雑かつ高価な装置が必要であり、ワクチン投与への利用は大きく制限されています。

新たな手法は、電池を必要とせず、低コストで大量生産できるペン型の新しいデバイスによって、この課題を解決します。

「ひらめきの瞬間」

この画期的な発想のきっかけとなったのは、人々がグリルに火をつける際に使う身近な道具、すなわち電子式のBBQ用ライターでした。

「私のラボでは、誰もが7月4日のアメリカ独立記念日にBBQをする際に使い慣れているもの、つまりBBQ用ライターを活用できると気づきました」と、ジョージア工科大学化学・生体分子工学部の助教授であるサード・バムラ氏は述べています。同氏は、ライターのボタンを押すたびに、炎を点火するための短い電気パルスが発生する仕組みを説明しました。

チームはライターの内部構造を取り出し、小型のばね式ラッチ機構として作り直しました。このデバイスは、既存の大型で場所を取るエレクトロポレーション装置と同じ電界を皮膚内に生じさせますが、広く入手可能な低コストの部品を使用し、動作に電池を必要としません。

「私たちにとってのひらめきの瞬間は、従来のエレクトロポレーション装置とは異なり、電池を必要とせず、壁のコンセントにつなぐ必要もないという事実でした」と同氏は述べています。「しかも、このライターの部品はわずか数ペニーの費用で済む一方、現在市販されているエレクトロポレーターは1台あたり数千ドルもします。」

再設計したライター型デバイスとマイクロニードル技術を組み合わせることで、超低コストの新しいエレクトロポレーションシステム、いわゆる「ePatch(イーパッチ)」が誕生しました。

ペン型の手持ち式ePatch

ライターの仕組みに加え、重要な技術革新として、電極の間隔を極めて狭くし、非常に短いマイクロニードルを使用した点が挙げられます。マイクロニードルは、肌の若返りなどの化粧品用途や、医療分野での応用が見込まれ広く使われていますが、一般的には電極として用いられるものではありません。小型のエレクトロポレーション・パルサーとマイクロニードル電極を組み合わせることで、皮膚との効果的な電気的接続が実現し、ePatchのコストと複雑さをさらに低減しました。

マイクロニードルを用いたこのシステムは、従来のエレクトロポレーションと同程度の電圧を使用しますが、パルスは1万分の1の短さであり、電極は皮膚表面からわずか0.01インチ(約0.25ミリメートル)だけ入り込みます。化学・生体分子工学の教授であるマーク・プラウスニッツ氏はこのように説明しています。

「マイクロニードルの間隔を狭くしたことで、マイクロニードルにより、従来のエレクトロポレーションで用いられるミリ秒単位のパルスではなく、マイクロ秒単位のパルスを使用できるようになりました。この短いパルスに加え、マイクロニードル電極が皮膚の浅い位置に作用するため、神経や筋肉への刺激を抑えることができます。これにより、従来のエレクトロポレーションでよく見られる副作用である痛みやけいれんを回避できる可能性があります」と同氏は述べています。

「私たちの目標は、単純で低コストかつ製造しやすいデバイスを用いた、COVID-19ワクチン接種の方法を設計することでした」と、中国の中山大学の准教授で、本研究の論文の筆頭著者であるデンニン・シア氏は述べています。論文は米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載されました。

「ePatchはペンほどの大きさの手持ち式デバイスで、重さは2オンス(約57グラム)未満です。電池や電源を必要とせず、ボタンを押すだけで動作するため、非常に簡単に使用できます」と同氏は述べています。

mRNAワクチン接種

しかし、この方式は免疫反応を引き起こすワクチンと組み合わせても使えるのでしょうか。

これを確かめるため、研究チームはエモリー大学医学部の微生物学・免疫学部門の准教授であるチンライ・ヤン氏と協力し、まず蛍光タンパク質を用いて送達システムが機能することを確認したうえで、実際のCOVID-19ワクチンを投与する試験を行いました。モデルとして選ばれたのは、COVID-19向けの実験段階にあるDNAワクチンです。

「ジョージア工科大学からこの研究への協力を依頼された当初、私は成功するかどうか確信が持てませんでした」とヤン氏は述べています。「驚いたことに、最初の試行の時点で、期待をはるかに上回る結果が得られました。」

「同量のワクチンをこの方法で投与したところ、ePatchは筋肉内注射や、エレクトロポレーションを行わない皮内注射と比べて、ほぼ10倍の改善が見られる免疫反応を引き起こしました。また、マウスの皮膚に持続的な影響は見られませんでした。つまり、防御効果をより容易に得られるということです」と同氏は述べています。

研究者らは、ePatchはmRNAワクチン接種にも有効であると考えており、現在その検証を進めています。

ただし、DNAワクチンと組み合わせて機能する、より簡素で費用対効果の高いエレクトロポレーターを開発できれば、ワクチン接種のコストと複雑さを大幅に削減できる可能性があります。mRNAワクチンは脂質ナノ粒子を含むため極低温での冷凍保存が必要ですが、DNAワクチンにはそのような超低温保存は不要だからです。

「DNAワクチン接種を成功させる鍵は、エレクトロポレーションを簡単、低コスト、かつ拡張可能なものにすることだと考えています」とプラウスニッツ氏は述べています。

ePatchは保健分野の専門家の間でも注目を集めています。エモリー大学ワクチンセンターのHope Clinic(ホープ・クリニック)の医学教授兼エグゼクティブ・ディレクターであるナディーン・ルフェール氏もその一人です。同氏は、現在の遺伝子ワクチンは、mRNAであってもDNAであっても、世界規模の解決策としてはなお高コストであると指摘しています。mRNAの場合は、脂質ナノ粒子の製剤化に伴い、複雑な低温物流(コールドチェーン)と高コストな製造が必要になります。DNAワクチンの場合は、高度なエレクトロポレーション装置が必要になるためです。

ワクチン投与における革命

「持ち運びが可能で手頃な価格のエレクトロポレーションであるePatchは、こうした制約を克服でき、ワクチン投与の分野で大きな変革をもたらす可能性があります」とルフェール氏は予測しています。

研究者らは、皮膚部位での免疫反応を最適化する方法を検討し、デバイスを一体型ユニットに統合するなど、すでにシステムの改良策を模索しています。「それが実現すれば、ワクチン接種のプロセスに革命をもたらすでしょう」とヤン氏は述べています。

ヒトを対象とした試験の前に、研究チームは複数の節目を達成する必要があります。プラウスニッツ氏は、この発明が臨床試験を完了し、広く使用できる状態になるまでには5年以上かかるとの見通しを示しています。同氏は、ePatchがパンデミック中に行われた迅速なワクチン承認ではなく、より従来型の医療機器承認プロセスを経ることを想定しています。

4人の研究者全員が、ePatchがワクチン接種へのアクセスを民主化する可能性について、ルフェール氏の期待に同調しています。バムラ氏は、ワクチンは購入する経済力があり、医療資源を利用できる人々には効果があるものの、発展途上国の大部分ではそれが現実的ではないと説明しています。

「COVID-19が最後のパンデミックになることはないと私たちは考えています」とバムラ氏は述べています。「より多くの十分なサービスを受けられていない地域、そして医療資源が不足している地域にこうした最新の医療介入を公平に届けられるよう、コストと設計の両面から、ハードウェアを簡素化し、規模を拡大する方法を考える必要があります。」

その他の共著者は、ジョージア工科大学とエモリー大学に所属しています。

マーク・プラウスニッツ氏は、企業にライセンス供与された特許の発明者であり、企業の有償アドバイザーを務めており、マイクロニードル製品を開発する企業の創業者・株主でもあります。この潜在的な利益相反は開示されており、ジョージア工科大学が管理しています。

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