パンデミックと不確実性の心理学

MRSA (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus) bacteria strain is seen in a petri dish containing agar jelly for bacterial culture in a microbiological laboratory in Berlin March 1, 2008. MRSA is a drug-resistant "superbug", which can cause deadly infections. REUTERS/Fabrizio Bensch (GERMANY) - GM1E43209QY01
'Costly, altruistic individual choices may ultimately prove crucial for limiting the impact of a pandemic'Image: REUTERS/Fabrizio Bensch
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今日の最も深刻な地球規模の脅威の多くには、高度な不確実性が伴います。次のインフルエンザの流行はパンデミックに発展するのでしょうか。今世紀、地球の気温は何度上昇するのでしょうか。こうした脅威による被害を抑えられるかどうかは、ワクチン接種を受ける、エネルギーの使用を減らすといった人々の選択にかかっています。しかし、人間はもともと不確実な状況で意思決定するのが非常に苦手です。予測不能な地球規模の脅威について、意思決定を最も効果的に導くには、どのように伝えればよいのでしょうか。

パンデミックを引き起こすウイルスが急速に世界中へ広がる脅威を考えてみましょう。過去にパンデミックは何百万人もの命を奪っており、いずれまた発生する可能性が高いものの、いつ起こるかは分かりません。パンデミックの初期段階では、感染拡大を抑えるための行動が人々に求められます。ワクチン接種を受けたり、旅行の予定を取りやめたりするなど、負担を伴う行動です。世界保健機関(WHO)事務局長や各国の保健相、世界中の医療従事者は、感染症の拡大を抑えるために、負担は大きくても必要な行動を取るよう人々にどう促せばよいのでしょうか。

過去の研究によると、人々は恩恵が不確かな場合、他者のために犠牲を払うことに、きわめて消極的です。パンデミックの場合、診療所へ行く時間を割いたり、休暇を取りやめたりしても、そうした行動が感染拡大の防止に役立つ保証はないため、人々がそのような行動を取る可能性はとりわけ低くなります。つまり、感染症に本質的に伴う不確実性は、感染拡大に理想的な条件をもたらします。社会的な状況で、人々がリスクを取る選択をしてしまうのです。

私たちの研究は、感染症に対する集団的責任に関するオックスフォード・マーティン・プログラムの一環として実施されました。この研究は、他者に害を及ぼす可能性のある決定を迫られると、人々は物事が問題なく進むかのように行動しがちであることを示しています。

たとえば、私たちの研究のいくつかでは、架空の病気「アフリカ・インフルエンザ」に感染した場合、仕事を休むかどうかを数百人に尋ねました。仕事を休めばキャリアに悪影響がある一方、感染拡大の抑制に役立つという設定です。職場に行けば同僚に感染させるかどうかは不確かだと伝える場合もありました。この不確実性によって、人々は犠牲を払って仕事を休むことに、より消極的になりました。不確実性に関する先行研究と同様に、害が確実に生じるとは限らない場合、人々は自分の利益のために他者を傷つけるリスクを取る意向があると答えました。

幸い、感染症のように不確実な脅威を伝える、別のより効果的な方法があることが分かりました。人々の健康や福祉に関する不確実性、たとえば感染によって他者がどれほど苦しむ可能性があるかを強調すると、人々は最悪の事態を防ごうとします。

私たちの研究では、出勤によって、感染しても問題のない若く健康な人、あるいは感染すれば非常に深刻な事態になり得る高齢者のどちらかに感染させる可能性があると伝えたところ、参加者は犠牲を払って仕事を休む意向がより強いと答えました。つまり、自分の行動が他者の幸福に及ぼす不確かな影響に人々の注意を向けると、他者を潜在的な危害から守るために負担を引き受ける意向が強まったのです。

これらの知見は、パンデミックのように不確実でありながら壊滅的な被害をもたらしかねない脅威の性質を、ジャーナリストや世界の指導者、医療従事者がより効果的に伝える方法を示しています。パンデミックについて話す際、私たちはしばしば、近い将来に発生するかどうか、そして対応する備えができているかどうかに焦点を当てます。エコノミスト誌は最近、たとえば「次にいつ起こるとも知れないパンデミックの脅威を世界が食い止められるかどうかは不確かだ」と述べました。

私たちの研究によると、このような伝え方は、パンデミックの影響を抑えるうえで最終的に極めて重要となり得る、負担を伴う利他的な個人の選択を促す際に、逆効果になる可能性があります。自分の行動が害をもたらすかどうかが不確かなとき、人間は自分の利益を優先しがちです。

しかし、利己的な行動がもたらす人々への代償を明確にすると、不確実な状況であっても、人々は自分の利益を後回しにして社会全体の利益を優先するようになります。発信者はむしろ、地球規模の脅威に対する利己的な対応が、赤ちゃんや妊婦、高齢者など、私たちの中でも特に弱い立場にある人々を危険にさらすおそれがあることを強調すべきだと、私たちは考えます。自分の行動が他者にどのような影響を与えるか、たとえば他者がどれほど苦しむ可能性があるかに不確実性の焦点を当てれば、利己心に陥るのを防げます。

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