世界各地の個人や保健医療システムと協働してきた経験から、プライマリ・ヘルスケアの改善に画一的な解決策はないことが分かる。保健医療上のニーズは地域によって異なり、疾患や健康問題の有病率も地域ごとに差がある。例えば、ケニア北部のマンデラ郡では、南部の地域に比べ、出産時の妊産婦死亡率がはるかに高い。沿岸の湿地やアフリカの大湖沼の近くに暮らす人々は、マラリアにかかることが多い。都市部では外傷や暴力の発生が多い。人口密度、文化的慣習、インフラ(電力、水、通信、道路など)の整備状況、紹介先の病院までの距離といった人口統計上の違いが、この複雑さに拍車をかけている。
ニーズや状況のこうした違いから、個々に合わせたプライマリ・ヘルスケア・プログラムが求められている。しかし、個別対応は高コストで、規模を拡大しにくいことと同義になりかねない。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに不可欠なプライマリ・ケアの提供を真に前進させるには、マス・カスタマイゼーションという考え方が必要だ。これは、標準化されたモジュールを組み合わせ、地域のニーズに応じた解決策を構成することを意味する。拡張性と柔軟性を両立させなければならない。
デジタル技術は、解決策を一変させ、質の高い医療の提供方法を根本から変える可能性を秘めている。単体の医療機器では、もはや今日の世界が求める水準やスピードのケアを提供できない。私たちは今、接続性を基盤とする相互運用可能なネットワーク型の世界へ急速に移行している。例えば、第一線の医療施設で心電計(ECG)を使用し、患者のデータを循環器センターに送れば、そこで心臓の問題を診断できる。妊娠経過を確認する超音波診断装置も同様だ。超音波診断は今や超小型化の段階に達し、訓練を受けた地域保健従事者がスマートフォンを使って、患者の自宅で超音波画像を撮影できる。テクノロジーは、患者と医療提供者の一対一の関係に基づくケアを、拡張可能な集団医療モデルへと高める。
遠隔医療も今では、ほとんどの臨床分野で標準的な医療提供を補完し、病院や自宅にいる患者に恩恵をもたらしている。ハブ・アンド・スポーク型のモデルを用い、主要病院と小規模な地方医療施設を、映像通話やデータ転送も含めて接続することで、どこでも高度な医療を受けられるようにしている。こうした新たな機能により、現場の熟練人材の不足や、患者が医療施設を利用しにくいといった重要な課題を克服できる。
デジタル・イノベーションは、施設内や医療紹介ネットワーク上で、将来の診断や治療に向けた患者および電子カルテの円滑な紹介も支援する。さらに、革新的なデジタル決済ソリューションは、質の高い医療へのアクセスとサービス提供の透明性を確保するうえで、実践的な役割を果たす。
地域社会のニーズに耳を傾け、デジタル技術を活用した柔軟なモジュール型の解決策を提供することで、プライマリ・ケアを支援・強化してきた。その結果、プライマリ・ケアの質と利用が向上し、紹介も効率化している。人材、プロセス、テクノロジーを効果的に組み合わせると、進展が見られる。例えば、プライマリ・ケア施設を訪れる人や妊婦健診を受ける人、施設で出産する人が増え、環境の改善によってスタッフの意欲も高まっている。このアプローチを用いた他のプロジェクトでは、非常にリスクの高い妊娠を早期に発見できる割合が3倍になった。これは妊産婦死亡率の低下に欠かせない。
地域のプライマリ・ケアを強化するには、政府が財源、提供するサービス、管理体制、テクノロジーの活用に大幅な変更を加える必要がある。私たちは、こうした変革は民間セクターと公共セクターの連携を通じて最も効果的に実現できると考えている。
ケニアで起きていることは、その好例だ。ケニア政府は、国連ケニア事務所、開発パートナー、資金提供者、民間セクターと連携し、新たな持続可能な開発目標(SDGs)パートナーシップ・プラットフォームの立ち上げに向けて前進している。その目的は、官民連携を通じて大規模なプライマリ・ケア改革を加速させ、2021年までにケニア国民4,600万人の健康と福祉を向上させることだ。これは、ケニア政府のあらゆるレベルが関わる同国のSDGs達成に向けた取り組み全体を支える。
このようなプラットフォームは、すべての関係者が地域住民にとって意義のある解決策に取り組めるよう、連携を促す。プライマリ・ケアの強化は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向けた最重要要因であり続けている。

