医療における人工知能(AI)は、イノベーションと倫理のバランスを取る必要があります。透明性、信頼、人間中心のアプローチを重視することで、責任ある進歩を促します。
企業には、AIが社会に及ぼす影響に対処する責任がますます求められています。信頼を築き、維持するには、統合的なガバナンスモデルと倫理的枠組みが必要です。
責任あるAIの4原則は、イノベーションを人権と倫理的な誠実さに沿わせることを目指します。
人工知能(AI)は医療のあり方を大きく変え、前例のない機会をもたらす一方で、複雑な倫理的課題も生み出しています。医療の歴史におけるこの重要な局面で、AI技術は新たなツールを加え、かつて想像もできなかった精度と速度を実現することで、医療への取り組み方を変えつつあります。
創薬の加速から臨床試験の革新まで、膨大なデータを活用するAIの能力は、個別化治療の実現、画期的な進展の促進、そしてがんなどの疾患との闘いにおける新たな希望につながっています。
なぜ今、これが重要なのでしょうか?
同時に、より良い成果に向けてイノベーションを加速させながら、患者や規制当局との信頼を築くには、透明性と誠実さの確保が欠かせません。さらに、AIを用いて医療を再構想する際には、人間中心のアプローチが不可欠です。
このアプローチは、最高コンプライアンス責任者の役割の変化と関連しています。かつては、特に贈収賄防止の分野で、法令や規制要件の遵守を主に担っていました。今日では、規制環境の複雑化を受け、より統合的なアプローチを取ることが、最高コンプライアンス責任者にますます求められています。
これには、AIに関する新たな規制や、企業行動に対するステークホルダーの高まる期待も含まれます。
AIに関する企業責任の必要性
第一に、AIは企業の生産性と影響力を高めます。多くのAIモデルが企業の所有・管理下にあり、規制が着実に追いつきつつあるなか、AIブームは、企業活動が社会に及ぼす影響を考慮する責任にも光を当てています。
信頼を獲得し、維持することは、企業にとって貴重な資産となっています。グローバル化や利益配分に対する一般的な懐疑心から、企業には倫理基準が欠けている、あるいは一貫して守ることに苦慮しているという見方が生まれがちです。
規制要件と社会の期待のこうした変化を受け、新たな企業ガバナンスと保証のモデル、そして異なるリーダー像が求められています。
このアプローチを続けることで、企業内のガバナンスの縦割りを避ける統合的な保証システムが実現し、責任あるAIの利用など、新たな課題に先を見越して適応できるようになります。
AIへのあらゆる取り組みは、AIの開発と導入の各段階を導く一連の基本原則に根差す必要があります。それにより、最先端でありながら倫理的にも適切なイノベーションを促せます。
クラウス・ムースマイヤー、ノバルティス・インターナショナル、最高倫理・リスク・コンプライアンス責任者
統合的な保証アプローチによる信頼の醸成:責任あるAI
第二に、過去10年間におけるAIの台頭は、統合的な保証と一元的なリスク管理の価値を示す好例です。
効果的な全社的リスクガバナンスがあれば、AIに伴うリスクと機会を早期に特定できていたでしょう。
AIに関連するリスクが、データサイエンスの特定の用途に限られ、従業員の大半には抽象的なものだった段階で、組織は原則に基づく指針を定めることができたでしょう。
AIブームが大幅に加速し、リスクがより具体的になった2022年には、統合的な機能が、他のリスク分野での経験と全社基準に基づいて、成熟した方針と管理の枠組みを迅速に確立できたでしょう。
こうした先見性と組織の適応力は、統合的な保証モデルがもたらす直接的な利点であり、組織がAI技術の機会を確信を持って活用するうえで重要です。
人権を中心に据える
ノバルティスでは、AIシステムに明確な目的があり、人権を尊重し、正確かつ誠実で、誤解を招かず、意図された状況に適していることを徹底しています。責任あるAIのためのシンプルな枠組みとして、倫理原則を定めています。
この枠組みは、人々が自らの判断や偏見を問い直せるようにするものです。それらを当社の倫理規範および新たなデータ・テクノロジー方針と整合させることで、その重要性を強調し、全員が従うべき明確な道筋を示します。
AIへのあらゆる取り組みは、AIの開発と導入の各段階を導く基本原則に根差す必要があります。それにより、最先端でありながら倫理的にも適切なイノベーションを促せます。
当社のデータとテクノロジーの倫理的利用に関する方針における4つの主要原則は次のとおりです。
1. 人間性を尊重する
多様性と包摂を促進し、人権を尊重し、患者と社会に利益をもたらす方法でデータとテクノロジーを導入・利用することで、人間性を尊重し、社会との信頼を維持します。
2. 透明性を確保し、公正に収集する
組織がデータを収集する理由と方法、またデータとテクノロジーをどのように利用するかを、明確かつ簡潔に説明します。
3. 責任を持って利用する
データとテクノロジーを責任を持って利用し、各自の責任範囲に応じて、それらを適切に管理・保護する責任を負います。
4. データとテクノロジーを保護する
リスクに基づくセキュリティ対策を適用し、ライフサイクル全体を通じてデータとテクノロジーを保護するとともに、その機密性、完全性、可用性を確保します。データの損失を防ぎます。
AIシステムの責任ある利用への取り組みは、AIを活用したあらゆるイノベーションにおいて安全性と持続可能性を促進するという目標と一体です。倫理的で透明性が高く、説明責任を果たすAIを実現することは、信頼を築き、個人と企業を守るうえで不可欠です。
