不十分な衛生環境がもたらす損失は2,229億ドルに上ります。世界最大級のトイレメーカーのCEOとして、この深刻な危機に取り組むことは私自身の責務です。その半分以上を早死が占めており、これは人々の悲劇を物語っています。私たちは考え方を変え、衛生問題を単なる悪臭の問題以上のものとして捉え始めなければなりません。これは、開発途上国で子どもたちの命を最も多く奪う問題と闘うことなのです。
衛生に関するミレニアム開発目標は、達成が最も困難な目標の一つでした。今、私たちには新たな世界目標があります。「2030年までに、すべての人が適切かつ公平な衛生環境と衛生習慣を利用できるようにし、屋外排泄をなくす。」今こそ、行動計画のもとに足並みをそろえなければなりません。高精細な3Dビデオゲームを開発し、腕時計のように身につけるコンピューターを作る才能がある世界で、地球上の3分の1の人々が安全で清潔なトイレを使えないという衝撃的な事実を、なぜ受け入れられるのでしょうか。

衛生関連の病気で毎日何千人もの人々が亡くなるのを、私は傍観し続けることはできません。だからこそLIXILは、2020年までに1億人の衛生環境を改善することを約束しました。そうすることで、世界と私の会社の双方に貢献できると心から信じています。善いことをして、成果を上げることはできます。
問題を定義する
衛生習慣と衛生環境の問題は複雑です。何百万人もの人々がインフラや下水道を利用できず、開発途上国の状況に適した解決策も不足しています。先進国市場の解決策をそのまま使うことはできません。地域の環境への配慮や文化的規範を踏まえた解決策を、革新によって生み出す必要があります。多くの場合、私たちは、簡素で賢く、何よりも手頃な価格の「倹約型イノベーション」が最も効果的だと分かりました。
設備を整えるだけでなく、今も毎日屋外で排泄している9億5,000万人に、トイレを使う利点を理解してもらうため、行動を変えてもらうことが極めて重要です。施設を利用できるようにすることと同じくらい大切な取り組みです。水と廃棄物の観点から見ると、衛生環境は環境に負荷をかけます。持続可能な解決策を見つけるには、資源をどう節約し、副産物を有用なものへと再利用できるかを考えなければなりません。
危機の解決は、まずその実態を理解することから始まります。すでに多様な関係者が膨大な取り組みを進めてきましたが、唯一の解決策はないことは明らかです。対処すべき要素や問題の側面は数多くあり、その結果、世界のコミュニティは、この問題の定義や取り組み方において本質的に分断されてしまっているおそれがあります。
しかし、ここにジレンマがあります。この分断こそが中心的な課題なのでしょうか。私たちは方向性を必要とするコミュニティなのでしょうか。それとも、衛生問題が人権課題の中でも最も多面的なものの一つだと理解し、新たなアプローチを切り開く必要があるのでしょうか。完全に独立して存在する問題などなく、あらゆる分野の専門家が解決に向けて取り組むことは、必ず良い結果をもたらすはずです。
未来に向けて足並みをそろえる
衛生問題は常に多面的であり、私たちはそのことを理解しなければなりません。しかし、この大きな課題への取り組み方について世界のコミュニティが足並みをそろえられれば、命を救うことができます。
効果的な解決策を生み出すために、私たちはイノベーションを進めなければなりません。実際に使われる状況に合わせて設計された設備から、サプライチェーンや物流に関する新たな発想、さらにはマーケティングや資金調達に至るまで、幅広い革新が必要です。一人ひとりの関係者の専門知識を、何百万人もの人々の暮らしを良くするために生かすことができますし、生かすべきです。
衛生問題を政治課題の最優先事項に据えなければなりません。持続可能な仕組みを築くには、各国政府が変化をもたらす条件を整え、必要な資源を配分する必要があります。一方、政府以外の組織は、持続可能な開発目標が生み出した機運を失わせないよう、変化を求めて働きかけるべきです。
多様な関係者や課題を越えて、連携と協調を引き続き追求しなければなりません。各国政府が主導する協調的な取り組みのもとで、私たち全員が協力的な行動をとれば、最も有望な解決策に資金と知恵を確実に注ぐことができます。
不十分な衛生環境をめぐる道義的・経済的な論拠を踏まえれば、連携を強化し、取り組みを拡大する方法を引き続き探さなければなりません。今年のダボスでの世界経済フォーラムにおいて、この大きな課題に乗り出すにあたり、世界的な取り組みの方向性を形づくるため、ぜひ私と共に参加してほしいと皆さんに呼びかけます。

