脳振盪だけでは全体像はわからない
脳振盪はアスリートや退役軍人にとって深刻な脅威であり、アメリカンフットボールのようなスポーツによって、この症状はかつてないほど世間の注目を集めるようになった。めまい、頭痛、視覚障害などの症状が現れる脳振盪を起こした選手は、必要な診断と治療を受けられる可能性が高い。しかし新たな研究によると、脳振盪を起こさずに脳損傷を引き起こす頭部外傷もあり、こうした「サイレント」な頭部外傷は治療されないことが多い。
7年間にわたる研究の末、ある研究が学術誌Brainに掲載され、脳振盪を起こさない衝撃でも、慢性外傷性脳症(CTE)として知られる変性脳疾患の発症につながる可能性があることを示す証拠が提示された。
「脳振盪レガシー財団」によると、CTEでは脳内のタンパク質が凝集し、脳内をゆっくり広がりながら脳細胞を死滅させる。CTEの初期段階では気分に影響が出て、攻撃性やうつにつながることがある。病気が進行すると、思考が困難になったり、記憶を失ったり、認知症を発症したりする。CTEで最も驚くべき点は、17歳という若さの人にも確認されていることだ。
「CTEを引き起こすのは脳振盪ではなく、頭部への衝撃です」と、ボストン大学医学部の精神医学准教授で、この研究の主任研究者であるリー・ゴールドスタイン氏は、研究についてのプレスリリースで述べた。研究チームによると、CTEが確認されたアスリートの約20%には、過去に脳振盪を起こした記録がなかった。
見えない外傷
現在、CTEを正確に診断できるのは死後だが、NPRの報道によると、ゴールドスタイン氏とノースショア大学医療システムの脳神経外科部門長であるジュリアン・ベイルズ博士は、それぞれ独自に、生きている人の変性脳疾患を検出する方法の研究に取り組んでいる。
実現までの間、2人はこの新たな研究が、脳振盪につながるかどうかにかかわらず、あらゆる頭部外傷の重要性を裏付けるものとして活用されることを望んでいる。ゴールドスタイン氏は、自身の研究を他のコンタクトスポーツにも適用し、さらに一般の人々にも広げたいと考えている。
「この研究は、科学と私たちの理解に確実に貢献します」とベイルズ氏は、NPRの報道で述べた。「そして、より手厚い保護と安全性につながり、あらゆる年齢の人々がコンタクトスポーツを楽しめるようになることを願っています」
米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)もこの研究に注目し、NPRに提供した声明で次のように述べた。「当リーグのマッキー・ホワイト健康・安全委員会の委員でもあるボストン大学の研究者らとは緊密に連絡を取り合っています。選手の健康と安全を向上させるための今後の変更を検討できるよう、この研究を慎重に評価します」
一方、ゴールドスタイン氏とベイルズ氏は、幼い子どもがアメリカンフットボールやその他のコンタクトスポーツをすべきかどうかという点では意見が分かれている。ゴールドスタイン氏と、脳振盪レガシー財団の共同創設者兼CEOであるクリストファー・ノウィンスキー氏は、この研究から、子どもがコンタクトスポーツをするとCTEを発症するリスクが高まることが示唆されており、高校に入るまでは参加させるべきではないと考えている。
しかしベイルズ氏は、それを裏付けるだけのデータがこの研究にはないと考えている。最終的には個人の選択だとしつつも、親と子どもはリスクを考慮しなければならないと指摘する。
最後にベイルズ氏は、頭部外傷のリスクとそれに伴う健康への影響を、水泳に伴うリスクと比較した。「米国では毎日およそ10人が溺れていますが、水泳を禁止しようとは言っていません」

