次のパンデミックがいつ起きても備えられるよう、世界はより万全な体制を整えるべきだとの声が上がっています。
備えは各国のレベルから始まり、強靱な保健医療システム、重要な保健資源の共有、結束と信頼が最優先となります。
備えへの追加資金は、世界銀行などが各国や地域機関に提供する支援の拡大に役立つ可能性があります。
COVID-19を受け、次のパンデミックに備えて世界はより万全な体制を整えるべきだとの声が上がっています。こうした声の背景には、今回の感染症の流行は予見して防げた、あるいは感染拡大をより効果的に抑え、社会・経済への混乱を軽減して死者を防ぐことができたはずだという認識があります。
過去にも同様の声が上がり、実質的な行動につながりました。しかし世界はすぐに先へ進み、新たな危機が注目の中心となる傾向にあり、その結果、今ではおなじみの「パニックと放置」のサイクルが繰り返されています。これは懸念すべきことです。次のパンデミックの発端がいつ、どのような形で現れるかは分かりませんが、必ず起こることは確かです。
今回は状況が異なるかもしれません。COVID-19により、これまでの取り組みの限界と、より野心的かつ継続的な備えの必要性が浮き彫りになりました。資金拡大を求める幅広い声や、保健関連の危機に対するグローバル・ガバナンスの改革、地球規模の公共財をめぐる新たな考え方が示されていることは心強いことです。
まず、パンデミックへの備えとは何か、どのような投資が必要なのかを見てみましょう。
パンデミックへの備えは各国のレベルから始まる
備えは各国のレベルから始まり、多くの要素で構成されます。何よりもまず、疾病の流行を迅速に検知し、必要不可欠な医療を提供し、ワクチンなどの医療対策を展開できるよう、特にプライマリ・ケアを中心とする強固で強靱な保健医療システムが必要です。第二に、人間と動物の双方で発生する感染症の流行を検知するための監視システムと検査機関の能力が求められます。第三に、予防と備えに向け、分野横断的な連携の仕組みが必要です。第四に、感染症の流行の予防と対策の展開を支える法的枠組みおよび規制手段が求められます。第五に、サプライチェーンを適切に機能させるとともに、不可欠な物資や機器を十分に備蓄する必要があります。
こうした備えの要素などは、2005年の国際保健規則を受けて生まれた「合同外部評価ツール」のアプローチに確立され、反映されています。
病原体は国境を尊重しないため、備えには国境をまたぐ重要な側面もあります。地域および準地域の機関は、規制の調和、感染症の流行に関する報告と情報共有の基準、高度な検査を行う研究所など重要な公衆衛生資源の共有、共同調達といった分野で重要な役割を果たします。
多くの国、とりわけ低・中所得国では、こうした備えの領域に長年の弱点があり、それは地域レベルの弱点にもつながっています。備えがより整っていた国でさえ、COVID-19のパンデミックによって深刻な困難に直面しました。これは、世界的なサプライチェーンの崩壊に伴う脆弱性や、信頼と結束の欠如、政府内の連携の仕組みの不備が対応を損なったことを浮き彫りにしました。
備えに対する世界銀行の支援
世界銀行はIDAとIBRDを通じて、パンデミックへの備えに必要な長期的で予測可能かつ継続的な資金を提供してきた確かな実績があります。備えには、複数分野にまたがる取り組みが必要となることがよくあります。例えば、人間と動物の健康、そして環境のつながりを認識する「ワンヘルス」アプローチを用いた地域疾病監視システム強化(REDISSE)プログラムは、エボラ危機を受けて策定され、西・中央アフリカの16カ国で疾病監視と感染症流行への備えに関する国および地域の能力強化に貢献してきました。また、IDAの資金を通じてアフリカCDCも支援しています。過去最大となる1,570億ドルのCOVID-19支援パッケージを通じて各国が現在のパンデミックに対処できるよう支援する一方、将来のパンデミックに備える能力の構築も続けています。さらに、IDAとIBRDはいずれも資本市場から多額の資金を調達しています。IDAは現在、ドナー拠出1ドルごとに3ドルを超える譲許的融資を提供しています。IBRDでは、追加資本1ドルにより、顧客への融資をさらに10ドル可能にできます。
今後、世界銀行は多様な資金調達の仕組みや手段、世界的な活動基盤、各国内での強固なプレゼンス、複数分野にまたがる専門性、政策立案者への幅広い働きかけを生かし、各国および地域の備えに対する支援を拡大できる立場にあります。備えはIDA20の重要な重点分野となり、各国との連携においても存在感を高める見込みです。
世界的な行動の必要性
COVID-19のパンデミックは、世界レベルでの行動の必要性も浮き彫りにしました。備えに向けて国際資金を増額する提案の多くは、世界的な領域で認識されている不足への対応に重点を置いています。
世界レベルで必要とされる資金は多岐にわたり、複雑です。重要な優先事項の一つは、治療薬とワクチンの研究開発(R&D)への資金を拡充することです。この分野には多額の公的資金、民間資金、慈善資金が投入されており、世界銀行が支援するFIFとして設立され、感染症に対するワクチンの資金調達モデルに前向きな変革をもたらすことを目指す感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)への支援も含まれます。
すべての国が医療対策に時宜を得た公平なアクセスを確保するための資金も、同じく重要です。需要側では、COVAXやアフリカ・ワクチン取得信託(AVAT)などの共同調達の仕組みに関する経験を生かす必要があります。供給側では、低価格のワクチンを公平に利用できるよう、分散型の製造能力を強化する必要があります。すべての国が自国のワクチン製造能力を必要とするわけではありませんが、開発途上国に十分な生産能力を確保し、それを迅速に拡大できるようにする必要があります。需要と価格に一定の確実性がなければ、製薬企業が投資する可能性は低いでしょう。そこで、ドナー資金に裏付けられた事前購入約束が役立ちます。
今後、どのように前進するのか?
野心的な備えの議題を受け、資金拡大を求める声が上がっています。G20ハイレベル独立パネル(HLIP)は、今後5年間に年間340億米ドルの公的資金が必要であり、そのほぼ半分をドナーが負担すると試算しました。より最近では、米国政府が将来のパンデミックに備えるため100億米ドルの世界保健基金を呼びかけ、取り組みを始動させるため2億5,000万米ドルの拠出を発表しました。同基金を世界銀行に設置する案が提案されています。
備えへの追加資金は、世界銀行などが各国や地域機関に提供する支援を拡大し、世界レベルの不足への対応に役立つ可能性があります。
次の重要な段階は、G20 HLIPがまとめたニーズ評価と費用算定の内容を掘り下げ、不足に関する分析を深めることです。より万全な備えには資金が不可欠ですが、強固な備えには政治的意思を持続させることも必要です。そのためには、パンデミックへの備えに関する世界共通の規範と基準を定め、合同外部評価ツールを基盤としながら、それらの基準に照らした実績を定期的に監視・評価する必要があるようです。気候変動に関するものと同様に、パンデミックへの備えに関する新たな「グローバル・コンパクト」を検討し、共通のコミットメントと集団的な説明責任を確保する時期なのかもしれません。


