精密医療を誰もが利用できるようにすべきだ

Clinical oncologists look at a scan of a cancer patient in Accra, Ghana.
Clinical oncologists look at a scan of a cancer patient in Accra, Ghana.Image: REUTERS/Olivier Asselin
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第72回世界保健総会(WHA)に集う保健大臣や有識者は、2030年の世界の医療の未来をどのように思い描くだろうか。

普遍的な新生児スクリーニングの導入によって、重い障害や命に関わる疾患を抱えた赤ちゃんが生き延びる未来を、私は思い描いている。遺伝子スクリーニングプログラムによって、親たちが生存につながりやすいケアの道筋に進み、進行の速いがんを回避できる未来を。検査で有害反応を予測し、医師が別の治療を先回りして処方できることで、薬の副作用に苦しむ人が減る未来を。

これは、精密医療のアプローチによって世界中で実現可能な未来の一端である。精密医療とは、患者一人ひとりに固有の遺伝的・生物学的構成に基づき、スクリーニング、診断、治療、さらには治癒の可能性を高める、より精密で標的を絞ったアプローチを指す。

精密医療は、全ゲノムの解読やDNAの異常の診断、非常に少数の人々を対象とした医薬品の開発に取り組む、新しく高価な試みと捉えられがちだ。しかし、こうした進歩は、新生児スクリーニング検査、遺伝性のリスク因子検査、がん検診、個別化された薬剤投与量の調整といった、数十年来の成果を医療が基盤とし、さらに発展させていることの一例である。こうした成果は一部の国では広く普及しており、さらに多くの国々でも実現可能で、恩恵をもたらし得る。低・中所得国の間で、この可能性とその発展を認識し、精密医療に向けた政策や連携に取り組み始める国が増えている。

タイでは、遺伝子検査を用いててんかん患者を特定し、一般的に処方される薬によって重篤な皮膚反応を起こすリスクのある患者を判別することで、反応が起きる前に代替薬を選択できる。この薬理ゲノム検査は、深刻な副作用の予防に成功し、さらに医療制度にとって費用対効果が高いことから、タイは全国規模で検査を導入し、この遺伝子検査を国民皆保険の給付対象に加えた。現在、タイは東南アジア各地と導入方法を共有している。

行動を促す:ゲノミクスへの理解を高める漫画Image: ボツワナ・ベイラー

ボツワナでは、ボツワナ・ベイラー小児臨床卓越センターを通じ、ウェルカム・トラストの一部資金援助を受けて、漫画シリーズを発行した。遺伝と遺伝学、遺伝学が健康に及ぼす影響、そして生物医学やゲノミクスの研究への参加手続きについて、読者に伝えるためだ。アルゼンチンは2017年、精密医療のアプローチを臨床現場に導入するために必要な科学的知見と手順を確立する精密医療イニシアチブ助成金を開始した。小児疾患のゲノミクス、がんのゲノミクス、国立バイオバンクの設立に焦点を当てた3件の助成金が交付された。

これらの事例は、政策立案者が医療の改善に向けた国家戦略に精密医療のアプローチを組み込んでいることを示している。こうしたアプローチは最終的に、がんを含む非感染性疾患(NCD)の増加への対応、医療データ基盤の拡充、ゲノムデータ政策の策定、診断能力の向上、そして物理的・デジタル双方の資源を保有するバイオバンクの設立に向けた取り組みと結びついていく。

残念ながら、精密医療に向けた初期の取り組みは、世界の公衆衛生に関する対話や計画の中で、しばしば目立たない。その結果、医療格差が拡大し、予防、診断、治療、さらには治癒の可能性を高める、ますます実用的で効率的な解決策が、とりわけ非感染性疾患において、多くの人々に届かないままとなるおそれがある。

世界保健機関(WHO)は、加盟国が実施する持続可能で効果的な精密医療のアプローチを広く知らしめ、費用対効果の高い方法論や新技術について対話を主導し、疾患の生物学的・遺伝的要因への理解が深まり、それらに対処する能力が高まる未来に備えるための提言を策定することで、重要な役割を果たせる。世界の健康を改善するため、最新の科学的進展を活用する機会を見極める科学部門が3月に設立されたこと、そして専門家会合が先月、南アフリカのケープタウンで開催され、ゲノミクスと遺伝性疾患が議題となったことは、心強い進展である。

もちろん、世界が直面する根本的かつ重要な健康課題の中には、緊急の対応を要するものがある。私たちはそれらに取り組まなければならない。同時に、医療の未来に備える必要もある。

保健大臣や有識者が思い描く2030年の世界の医療の未来に、私のビジョンと重なる部分が少しでもあるなら、今すぐ計画を始めなければならない。加盟国は、精密医療のアプローチと関連政策を議題に取り上げ、政府、産業界、市民社会、生命倫理、学術界の、未来を見据える人々とこのテーマについて議論を始めるべきだ。これは、医療制度が科学的・技術的に最も適切なアプローチを採用し、疾患を抱える患者の診断と治療を、より標的を絞り個別化された方法で行えるようにするための第一歩である。そして、世界各地で精密医療のアプローチを公平に、社会に利益をもたらす形で推進するための行動を取る第一歩でもある。

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