オミクロン株は新型コロナウイルス感染症の終息を意味するのか?アンソニー・ファウチ氏ら専門家が「Radio Davos」で語る

Omicron COVID-19 end - Dr Fauci
Anthony Fauci and other global experts discuss Omicron COVID-19 variant at the Davos AgendaImage: WEF
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  • オミクロン株が世界中で猛威を振るっています。パンデミックの終息につながるのでしょうか?

  • 「The Davos Agenda 2022」に参加した専門家は、慎重ながらも楽観的でした。

  • 鍵となるのは、ウイルスが風土病化することです。専門家がその意味を解説します。

「オミクロン株が、誰もが期待する生ウイルスワクチンになるかどうかは、まだ分かりません」

これは、米国大統領に新型コロナウイルス感染症について助言するアンソニー・ファウチ氏の慎重な見解でした。同氏は世界の他の専門家3人とともに「The Davos Agenda」に参加し、今後数週間から数か月のパンデミックの見通しについて議論しました。

「Radio Davos」では全編音声をお聴きいただけます。また、議論の様子はこちらでご覧いただけます。

オミクロン株と新型コロナウイルス感染症:今後の見通し

フランシーヌ・ラクア:皆さん、こんにちは。私はフランシーヌ・ラクアです。ブルームバーグからお届けします。これから45分間、パンデミックと、もちろんその先に何が起こるのかについて話し合います。参加者の皆さんも、ハッシュタグ #DavosAgenda を使ってソーシャルメディアでぜひ会話に加わってください。

米国大統領首席医療顧問のアンソニー・ファウチ氏、モデルナ最高経営責任者(CEO)のステファン・バンセル氏、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の新興感染症学教授アネリーズ・ワイルダー=スミス氏、そして感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)最高経営責任者(CEO)のリチャード・ハチェット氏をお迎えできてうれしく思います。ファウチ博士、まずは博士から始めましょう。取り上げる質問はたくさんあります。2020年は、パンデミックからエンデミックへ移行する年なのでしょうか。感染力が強く、感染によって免疫をもたらすことを踏まえると、現在の速さでその過程が進むのでしょうか?

アンソニー・ファウチ:答えは、分からないということです。その点については率直に認めなければならないと思います。また、「エンデミック」という言葉は、さまざまな文脈で使われます。

制御とは、ウイルスが存在していても、社会に支障をきたさない水準にある状態を指します。エンデミックについて話すとき、多くの人が思い描くのはこの状態だと思います。

パンデミックについて話すとき、私は5つの段階に分けています。世界全体が今のように深刻な影響を受ける、真のパンデミックの段階があります。次にパンデミックの減速があり、制御があります。そして排除と根絶です。感染症の歴史を振り返ると、人類が根絶した感染症は天然痘の1つだけです。このウイルスで同じことが起きることはないでしょう。

次に排除があります。排除とは、自国からウイルスをなくすことですが、どこかには残っている状態です。例えば、ポリオは米国や多くの発展途上国で排除されました。では、その次の段階は何でしょうか。制御です。制御とは、ウイルスが存在していても、社会に支障をきたさない水準にある状態を指します。エンデミックについて話すとき、多くの人が思い描くのはこの状態だと思います。私たちが経験する幅広い感染症の中に組み込まれている状態です。例えば、寒い季節の上気道感染症、パラインフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルスなどです。社会に支障が出ない水準に抑えることが望まれます。これが最初の質問への答えです。私の考えるエンデミックとは、排除はされないものの、社会に支障をきたさない形でウイルスが存在する状態です。

オミクロン株について言えば、感染力は非常に高い一方、例えばデルタ株ほど病原性は高くないようです。そうであってほしいと思います。ただし、それは以前の変異株に対する免疫反応を逃れる別の変異株が現れなければ、という条件付きです。例えば、オミクロン株は感染力が非常に高いものの、病原性はそれほど高くなかったのは幸運でした。しかし、感染する人の数が膨大であるため、病原性が比較的低いことの効果が打ち消されています。ですからフランシーヌ、オミクロン株が、誰もが期待する生ウイルスワクチンになるかどうかは、まだ分からないと本当に思います。新たな変異株が次々に現れ、非常に大きな変動があるからです。

フランシーヌ・ラクア:ファウチ博士、ありがとうございます。アネリーズさん、オミクロン株は新たな変異株にどのような意味を持つと思いますか?また、エンデミックと呼ぶことにこだわりすぎているのでしょうか。そう呼べば気持ちが楽になり、困難なトンネルの先に光が見えるように感じる人もいます。

アネリーズ・ワイルダー=スミス:エンデミックと呼ぶには確かに時期尚早です。人々が聞きたいのは、いつ普通の生活に戻れるのかだというファウチ博士の意見に全面的に同意します。オミクロン株が最後の変異株になることはありません。現在見られるような高いウイルスの伝播が続けば、新たな変異株が出現する可能性は高いでしょう。問題は、どこで、いつか。そして、現在懸念されている変異株より危険なのか、それとも危険性が低いのか。どこで、いつか。ウイルスの伝播が活発であれば、変異株の出現リスクが高まると思います。英国で出現したアルファ株、インドで出現したデルタ株で、そうした状況を見てきました。オミクロン株では、それほどではないかもしれません。より危険になるのでしょうか。もちろん、そうならないことを皆が願っています。ウイルスの進化上の優位性を踏まえると、弱毒化する可能性のほうが高いでしょう。つまり、さらに重症度の低い疾患を引き起こすようになるということです。ウイルスには、感染力が高くても宿主を同時に死なせないという進化上の利点があるからです。次の変異株はさらに弱毒化するという最善のシナリオを、私たちは皆願っています。一方で、世界は最悪のシナリオにも備える必要があります。最悪のシナリオとは、別の二重組換えが起き、高い感染力と高い致死率を併せ持つようになることです。それが最悪のケースで、可能性はそれほど高くないと思いますが、あらゆるシナリオを考慮しなければなりません。

フランシーヌ・ラクア:アネリーズさん、どうもありがとうございます。ステファンさん、パンデミックは現在どの段階にあると思いますか?

ステファン・バンセル:感染症の専門家であるお二人の話に付け加えることは、私にはありません。ワクチンメーカーの立場から言えるのは、まず、オミクロン株によって状況が大きく変化した中でも、ワクチンの効果が非常によく保たれており、3回目の接種が非常に重要だと分かったことをうれしく思っているということです。現在取り組んでいるのは、2022年秋のワクチンをどうするべきか、何を含めるべきかという準備です。ファウチ博士のチームのような公衆衛生の専門家と、弊社の専門家が協力して検討しています。2022年秋向けワクチンに何を含めるか、まもなく決めなければならないからです。

もう一つ取り組んでいるのは、もちろん製造能力の拡大です。2021年には8億700万回分を出荷しました。その約25%を中所得国と低所得国に届けられたことを大変誇りに思います。現在も生産を拡大しています。第1四半期、つまり今四半期に多くの生産能力が稼働を始め、今年は20億~30億回分を製造できる見込みです。また、2023年に向けて、社会の側から人々が接種を望むようにするにはどうすればよいかにも取り組んでいます。ワクチンの組み合わせを準備し、インフルエンザワクチンとRSワクチンに取り組んでいます 。目標は、年1回の追加接種を1回で済ませることです。冬に2~3回接種したくないという人がいても接種率に影響しないよう、1回の接種で新型コロナウイルスとインフルエンザの追加接種、そしてRSVの追加接種を行えるようにしたいのです。

フランシーヌ・ラクア:ステファンさん、新型コロナウイルス感染症だけでなく、インフルエンザにも対応する、さまざまな感染症を防ぐ単一のワクチン接種は、実現までどれくらい近づいていますか?

ステファン・バンセル:RSVワクチンの開発は現在第3相試験、インフルエンザワクチンは第2相試験の段階です。インフルエンザワクチンも、早ければ今年の第2四半期には第3相試験に進めることを期待しています。最善のシナリオでは、2023年秋の実現となるでしょう。すべての国で実現するとは思いませんが、来年には一部の国で可能になると考えています。

予測は難しいものの、ウイルスはいつでも実質的にパンデミックを引き起こす能力を持つようです

フランシーヌ・ラクア:リチャードさん、将来のエンデミックの段階はどのようなものになると考えますか?

リチャード・ハチェット:アネリーズさんやトニーが話したことに、私はまったく異論はありません。ステファンさんが、ワクチンの混合接種に向けた進展を新たに報告してくれたことも心強いです。多くの人が、病気がエンデミックになると言うときに本当に意味している、あるいは予想しているのは、病気が人間の集団と均衡した状態になることだと思います。インフルエンザはエンデミックで、ウイルスが時間とともに進化する中、毎年流行を繰り返してきました。今後数か月の新型コロナウイルス感染症との関わりについて、近い将来の動きをあえて予想するなら、オミクロン株は世界中に広がり、ほかの変異株を押しのけ、理想的にはデルタ株を排除するかもしれません。それもまったく予想外というわけではないでしょう。今年は世界中の人々が感染したか、ワクチン接種の恩恵を受けた状態になり、新型コロナウイルスとの均衡に近づくと思います。おそらくオミクロン株の流行後には、新たな変異株がいつ予測不能に出現してもおかしくないものの、多くの国でウイルスの流行が比較的落ち着く時期が訪れるでしょう。しかし、新型コロナウイルス感染症の長期的な見通しとして、インフルエンザに近い振る舞いをすると予想する必要があります。ウイルスは流行し続け、存在し続け、人々は感染して病気になり、ウイルスは絶えず進化します。そして予測不能に、いつでも実質的にパンデミックを引き起こす能力があるようです。オミクロン株は非常に速く広がり、トニーが説明していたように、急性のパンデミックとまったく同じように振る舞っています。ウイルスは将来もその能力を保つでしょう。これは私たち全員が深く懸念すべきことだと思います。

フランシーヌ・ラクア:どうもありがとうございます。聴いている皆さんから素晴らしい質問がたくさん届いています。質問を送ってくださった皆さん、ありがとうございます。ファウチ博士、これはある方からの質問です。ワクチン接種と新型コロナウイルス感染を組み合わせて集団免疫を達成する場合、データに基づく予測では最善のシナリオはどのようなものでしょうか。また、そのような見通しを実際にどう推定するのでしょうか?

ここでは非常に複雑な状況に直面しており、集団免疫の従来の定義を当てはめるのは非常に難しくなっています。

アンソニー・ファウチ:現在の新型コロナウイルス感染症、つまりSARS-CoV-2をめぐる経験から言えるのは、これは非常に難しい計算になるということです。集団免疫や地域社会の防御について考える際には、ワクチン接種によって持続的な防御を得た人々と、感染後に回復して持続的な防御を得た人々を合わせて考えます。しかし、感染による免疫が比較的早く低下するように見えるウイルスがあります。加えて、非常に高い有効性と防御効果を持つワクチンでも、免疫は低下します。さらに3つ目の要素として、最近、私を含む複数のパネリストが説明したように、ウイルスには変異し、新たな変異株を生み出す並外れた能力があり、新たな変異株は免疫反応を逃れることがあります。オミクロン株でそれが見られます。幸い、オミクロン株自体の病原性はそれほど高くありません。しかし、防御効果を見ると、とりわけ感染に対して、また重症化に対してもある程度、免疫反応を逃れています。これは、あまり変化せず、ほぼ生涯にわたる免疫をもたらす麻疹ウイルスとは異なる状況です。麻疹ワクチンも、ほとんど変化することなく、ほぼ生涯にわたる防御をもたらします。それが理想的な集団免疫です。私たちが直面しているのは非常に複雑な状況で、集団免疫の従来の定義を当てはめるのは非常に難しくなっています。

フランシーヌ・ラクア:ファウチ博士、ありがとうございます。アネリーズさん、もう一つ質問です。これまで触れてきた話題ですが、質問者は少し政治的な観点を加えています。将来の変異株を心配すべきでしょうか。また、大手製薬企業が状況につけ込んでいるように感じることもある、と書いています。まずアネリーズさんに、次にステファンさんに伺います。賛成派と反対派の溝をどう埋められるでしょうか?

アンソニー・ファウチ:どんな説明をしても、どうしても納得しない人たちがいます。私が考えるに、世界全体が直面している課題の一つであり、米国では非常に深刻な形で直面しているのが、共通の敵であるウイルスに皆で立ち向かうべき状況に伴う誤情報の量です。誤情報は、公衆衛生の包括的な取り組みを著しく損なっています。どう対処すればよいか確信はありませんが、できる限り正確な情報を発信し、現在のように多少破壊的な形で使うのではなく、ソーシャルメディアを前向きに活用するしかないと思います。

フランシーヌ・ラクア:アネリーズさん、ご意見を聞かせてください。また、ウイルス学者の見解、つまり変異株をどれほど懸念すべきかという話と、一部の政治家の発言には違いがあります。政治家は経済再開により重点を置いているからです。

アネリーズ・ワイルダー=スミス:少し楽観的な話をさせてください。私たちは2年前とは違う状況にいます。2年前、世界の人口77億人には、このウイルスへの免疫がまったくありませんでした。今では世界人口の50%以上が2回の接種を受け、自然感染によって急速に免疫が構築されていることで、さらに強化されています。状況は変わりました。私たちは戦略の一部を見直し、再評価する必要があります。

フランシーヌ・ラクア:ステファンさん、まず、製薬企業について多くの質問が寄せられています。ワクチン接種を促すにはどうすればよいでしょうか。モデルナのような企業は、接種を促すために、伝え方を変えたり、データの示し方を工夫したりする必要がありますか?

ステファン・バンセル:はい。ワクチン接種をめぐる問題は、もちろん非常に複雑です。公衆衛生の専門家や各国政府は、2年にわたって人々にワクチンを信頼してもらおうと懸命に取り組んできました。もちろん、企業をはじめ、私たち全員にもっとできることがあります。科学的根拠や副反応、長期的な利点、そして接種する場合としない場合のリスクと便益について説明することです。多くのことが行われてきましたが、さらに取り組む余地は明らかにあります。しかしトニーが話したとおり、ワクチンの働きや働かないことについて、毎日のようにオンラインや時にはテレビで目にする誤情報は、現代において本当に残念なことです。

フランシーヌ・ラクア:ステファンさん、ワクチンについて具体的に伺えますか。質問を送ってくださった方は、アルファ株やデルタ株向けに設計されたワクチンはオミクロン株にも十分な効果があるのか、また、新たな変異株が出るたびにワクチンをどれだけ早く適応させられるようになったのか、と尋ねています。

ステファン・バンセル:もちろんです。現在利用できるワクチンは、最初に確認された株に対応するものです。私の知る限り、アルファ株やベータ株に合わせて改良されたものではありません。少なくとも、弊社のワクチンはそうではありません。データが得られた際、私たちは迅速に確認し共有しました。オミクロン株が出現した感謝祭の頃、データの作成でファウチ博士のチームと緊密に連携していました。ワクチンを2回接種した後、中和抗体が大幅に減少することが分かりました。しかし幸いなことに、3回目の接種後には非常に強い防御効果が見られました。そのため、世界各地の公衆衛生の専門家や政府が、追加接種を受けていない人々、特に高リスクの人々に、身を守るため3回目の接種を呼びかけているのです。私たちは、オミクロン株の遺伝子配列を確認した感謝祭前の水曜日に、新たなオミクロン株対応ワクチンの開発を始めました。現在、ワクチンの製造を終えるところです。今後数週間で臨床試験に入り、3月頃には規制当局と共有できるデータを得て、次の段階を検討できると期待しています。最善の道筋を見極めるうえで、公衆衛生の専門家、規制当局、ワクチンメーカーは常に良好な連携を続けてきました。トニーが述べたとおり、私たちは2年間、共通の敵であるウイルスと闘うため、文字どおり週7日協力してきました。敵は他社でも、別の集団でもありません。敵はウイルスだけであり、今もそうです。

フランシーヌ・ラクア:リチャードさん、将来のあらゆる変異株に有効な、より優れた幅広い防御効果を持つワクチンは、もちろん皆が期待するところです。その目標の実現までどれくらいかかると思いますか。また、実現には何が必要でしょうか?

新たな変異株が出るたびにモグラたたきのように対応することは、どうしても避けたいのです。

リチャード・ハチェット:この構想を実現するためにまず必要なのは、研究開発への投資です。ファウチ博士と、NIAIDのチームはすでに投資を始めています。私たちも投資を始めています。民間部門にも取り組んでいるパートナーがいます。これまでに確認された利点を特定のワクチンに生かす方法を見極めるには、まだ多くの科学的課題を整理する必要があります。この点については、後ほどお話しします。シンガポールから報告された、非常に重要な概念実証、つまり生物学的な概念実証となる観察結果がありました。リンファ・ワン氏は、コロナウイルス研究の分野で非常に著名な科学者です。2003年と2004年にSARS-1から回復した人々に、mRNAワクチンを実際に接種しました。使用したのはファイザーのワクチンで、その後、抗体を調べました。その人々は、SARS-1だけでなく、SARS-2やMERS、さらに既知の動物コロナウイルス数種に対しても中和抗体を産生しました。これは、ヒトの免疫反応が幅広いコロナウイルスに対する中和抗体を作り出せることを示しています。その利点をどう生かし、ワクチンに取り入れるか、さまざまな方法やアプローチで検討しているところです。これは究極の目標と言えるでしょう。新たな変異株がいつ、予想外の形で出現するか分からず、オミクロン株のように比較的軽症であっても、医療体制を圧倒しかねない能力を持つ変異株を追い続ける状況は、どうしても避けたいからです。現在のワクチンを支持することも必要です。トニーが言うとおり、非常に優れたワクチンであり、とりわけ重症化や死亡の予防に大きな役割を果たしてきました。しかし理想的には、世界中の全員に3か月または6か月ごと、あるいは毎年接種しなければならない状況も避けたいのです。

フランシーヌ・ラクア:私はウイルス学者ではありません。誰もが自分はウイルス学者だと思っていますが、本当のウイルス学者はごくわずかです。ただ、追加接種を受けすぎると免疫系に逆効果になるという報告があります。リチャードさん、この点はどうでしょうか?

リチャード・ハチェット:病原体によって異なります。3回目や4回目の接種によって免疫反応が弱まることを強く示すデータがあるとは認識していません。追加接種を行うことで、非常に強い反応が見られています。

アンソニー・ファウチ:リチャードの言うとおりです。追加接種を行うことで免疫反応が弱まるという証拠はありません。もちろん、抗原を絶えず与えて免疫系を圧倒すれば、免疫が過剰に活性化することは明らかです。しかし、異なる時期に追加接種を行うことが免疫反応を妨げるという証拠はありません。注意すべき点の一つとして、リチャードの話を改めて強調したいのですが、新たな変異株が出るたびに特定の変異株向けの追加接種を開発する、モグラたたきのような対応には本当に陥りたくありません。そんなことをすれば、際限なく追い続けることになります。だからこそ私たちが皆強く求めているのは、リチャードが言及した、実在するものと今後出現し得るものを含むさまざまな変異株に共通する要素への反応を誘導する仕組みを解明することです。それを実現することは非常に重要な科学的目標だと思います。そこに到達した後、そのワクチンを使って断続的に追加接種する必要があるのか。あなたが使った「ユニバーサル」という言葉について言えば、ユニバーサルコロナウイルスワクチンの話をする前に、まずSARS-CoV-2に幅広く対応するワクチンを目指したいと思います。一度に一つずつ取り組みましょう。そうでなければ、先走りすぎると思います。ただ、人々にぜひ伝えたいのは、感染力が非常に高いウイルスの場合、非常に優れたワクチンでも最初の感染を必ず防げるとは限らず、感染しても症状を非常に軽くするにとどまる可能性があることです。しかし本当に望むのは、重大な全身性疾患を防ぐことです。それが、SARS-CoV-2全般に対応する非常に優れたワクチンです。

重要なメッセージは変わりません。ワクチンは今も、重症化に対して非常によく効いています。

フランシーヌ・ラクア:ステファンさん、より優れた幅広い防御効果を持つワクチンの開発に取り組んでいるのでしょうか。それとも、これまでの変異株にかなり有効だったことを考えると、すでにそうしたワクチンがあるのでしょうか?

ステファン・バンセル:レイチェルとトニーが言ったように、私たちは皆、人々をより確実に守り、より広範なワクチンを実現したいと強く願っています。世界中の学術界で多くの取り組みが進められています。多くの人々との連携を模索していますが、残念ながらまだそこには至っていません。それでも、その方向に向けて前進していることを願っています。

フランシーヌ・ラクア: アネリーズさん、こうした変異株について、より広い人々に説明するうえで、何か違うやり方をしていますか?

アネリーズ・ワイルダー=スミス: 重要なメッセージは変わりません。ワクチンは今も重症化を非常によく防ぎます。私たちが本当に望んでいること、第一の目標は、死亡を防ぎ、医療体制を守ることです。私たちは依然として感染症の流行下にあり、医療体制は今も逼迫しています。公衆衛生上の対策と社会的対策を続ける必要があります。しかし、自然感染とワクチン接種の両方によって、集団レベルの免疫が高まるにつれ、新たな変異株から私たちを守る、より強固なハイブリッド免疫が形成されています。たとえ、より重症化しやすい新たな変異株が現れても、今の集団は以前とは異なります。ワクチンや感染による既往の曝露から細胞性免疫が得られており、より重い病気から私たちを守ってくれます。

フランシーヌ・ラクア: ファウチ博士、米国からも多くの質問が届いています。特に米国についてです。「先進国」の豊かな経済大国である米国が、なぜ新型コロナウイルス感染症の封じ込めに苦戦しているのでしょうか?

アンソニー・ファウチ: とても良い質問です。その答えの一部は、すでにパネルの皆さんが説明してくださったと思います。最も重要な点の一つは、米国では医療へのアクセスに、ある程度の分断やばらつきがあることです。大きな格差があります。医療を受けられない人々がいます。少数派の人々では、一般集団より入院や死亡の割合が高くなっています。しかし、先ほど触れたこともあります。公衆衛生当局者や科学者である私たち全員にとって、非常に憂慮すべきことですが、通常の、分かりやすく簡単な公衆衛生対策に対する反発が、これほど強いのです。マスク着用への抵抗。ワクチン接種の推進への抵抗。社会全体が一丸となれば、私たちははるかに良い状況になれると分かっている公衆衛生対策を実施することへの抵抗です。そもそも、このウイルスは、複数の波や急増、変異株を生み出し、すでにこれほどの被害をもたらしているという点で、最も有利な条件下でも非常に手ごわいものです。しかし、広く認められている公衆衛生対策、とりわけワクチンを、一体となって実施しなければ、ウイルスに優位性を与えることになります。パンデミックへの備えが最も整った国だったとされる米国のような豊かな国でさえ、そして世界全体にとっても、これは非常に残念な理由の一つだと思います。実際に最も大きな被害を受けた国々の中に、米国も含まれています。今、米国では6,500万件の感染と、90万人近い死亡が確認されています。本当に残念なことであり、避けられたはずだと願っていた事態です。

フランシーヌ・ラクア: ファウチ博士、米国ではなぜ無料検査、無料の検査キットが提供されていないのでしょうか?

アンソニー・ファウチ: 実現に向けて、非常に急速に進んでいます。実際、バイデン大統領は、今月中に5億個の無料検査キットを提供すると明言しました。オンラインで申し込み、自宅に無料の検査キットを届けてもらえるようになります。1世帯あたり月8個です。また、今後数か月ほどで、月に2億個から5億個の検査キットを提供できる体制を整えることについても話し合っています。その多くは無料になり、保険を通じて費用が払い戻されるものも多数あるでしょう。大統領が率直に述べたように、現時点では無料検査をもっと充実させることができたかもしれませんが、米国では今も、検査キットを広く入手可能にし、個人に無料で提供する取り組みを進めています。

フランシーヌ・ラクア: 検査についてかなり多くの質問が届いています。あとで戻りましょう。アネリーズさん、たとえば、出回っている誤情報を抑えるため、学校でワクチン教育を行うのは有効でしょうか?

アネリーズ・ワイルダー=スミス: まずは医学部から始めましょう!多くの医師や医学生、そして科学界の人々を教育する必要があります。彼ら自身が陰謀論に加担しているからです。ですから、ワクチン、その恩恵と費用対効果についての教育はもちろん、安全性や公衆衛生上の利点についても、世界中で強化する必要があります。

フランシーヌ・ラクア: どの検査が有効かについて、多くの質問が寄せられています。PCR検査、迅速抗原検査、そしてオミクロン株や新たな変異株に対する有効性についてです。どなたから始めていただきましょうか。リチャードさん、注目されているテーマですか?

リチャード・ハチェット: 私たちは、次の組織のパートナーと協力しています。FINDこれは、WHO主導の取り組みであるACTアクセラレーターのもとで、新たな診断法の開発に取り組む財団です。診断分野を主導し、世界中に検査を行き渡らせようとしています。トニーの指摘に戻ると、市民が自らの行動を判断するには、迅速に診断を受けられることが極めて重要です。オミクロン株の課題の一つは、ラテラルフロー検査の感度がやや低く、陽性例をすべて検出できないという報告があることです。そのため、いわゆる偽陰性が生じることがあります。検査自体は機能するものの感度が低く、検査法は更新可能で、実際に更新が進められていると理解しています。PCR検査は、もちろん今もかなり有効です。ただし、多くの環境ではPCR検査へのアクセスが難しいことがあります。私は英国在住ですが、オミクロン株がピークを迎えていた休暇中に自宅を離れており、PCR検査で陰性だったので、風邪だったのだと思います。しかし、PCR検査を受けるまでに5日かかりました。オミクロン株に感染したかもしれないと思う時期に、5日もかかると……私は適切に行動し、自宅にとどまりましたが、誰もがそうするとは限りません。そうなれば、地域社会で感染がさらに広がる可能性があります。感染症危機に対処するうえで、診断へのアクセスと更新された診断法は、極めて重要です。

アンソニー・ファウチ: これは大きな課題です、フランシーヌ。私たちは、医療現場で実施できる、特異度と感度が非常に高く、簡単に使える検査を必要としています。まだそこには至っていません。PCR検査は感度が非常に高いです。実際、いくつかの点では誤解を招くこともあります。急性期から回復しても、「複製能のある」ウイルスが残っていないことがあるからです。PCR検査ではウイルスに複製能があるかどうかは分からず、そこにヌクレオチド断片があることを示すだけです。一方、抗原検査は1回だけ行うと感度が低くなります。しかし、連続して行えば、累積的にはPCR検査と同程度の感度になります。ただし、感度の低い抗原検査では、偽陰性がかなり多く生じます。つまり、両極端の検査があるのです。一方は感度が非常に高いものの、リチャードが適切に述べたように、受けるのが難しいことがあり、結果を得るまで数日待たなければならない場合もあります。その間、どうすればよいのでしょうか。もう一方は簡単に受けられますが、感度が低く、偽陰性になる可能性があります。そのため、感度と特異度が高く、医療現場で使え、必要とするほぼ誰もが容易に利用できる検査を実現するため、大規模な投資を行っています。まだそこには至っていません。

フランシーヌ・ラクア: ありがとうございます、ファウチ博士。アネリーズさん、研究では、航空機やクルーズ船でのウイルス感染リスクをもとに、渡航再開のモデル化に重点的に取り組んでいますね。2022年の渡航への影響について、どのような見通しをお持ちですか?

オミクロン株が広がる今、貿易や渡航に悪影響を与えず、公衆衛生への効果が最も高いものは何かを、創造的に考え直す必要があると思います。

アネリーズ・ワイルダー=スミス: 短く答えるなら、私は楽観的です。詳しく言えば、渡航制限や国境措置による公衆衛生上の相対的な便益と、貿易や渡航への害とのバランスを取らなければなりません。渡航制限やこうした措置が本当に意味を持つのは、ある国の感染率が大幅に低く、感染率の高い国からの流入を防ぎたい場合に限られます。しかし、パンデミック開始から2年がたち、多くの国で感染状況が同程度になる均衡状態に近づくでしょう。ただ、まだそこには至っていません。ワクチンの分配は依然として極めて不公平で、それが渡航をめぐる問題をすべて引き起こしています。ですから、対策を講じる必要があると考えています。現在のオミクロン株の状況を契機として、渡航制限を見直し、再設計すべきです。非常に有害な隔離措置を最小限に抑え、検査の頻度を上げたり、トラベルバブルなどを導入したりする方法を検討するのです。オミクロン株が広がる今、貿易や渡航に悪影響を与えず、公衆衛生への効果が最も高いものは何かを、創造的に考え直す必要があると思います。

フランシーヌ・ラクア: ありがとうございます、アネリーズさん。ワクチンの公平性について、多くの質問が届いています。ステファンさん、ワクチンをめぐる連帯は今どのような状況でしょうか。これまでのところ、失敗したように感じます。2020年には、もっとバランスが取れるようになるのでしょうか?

もはや問題は、接種用量へのアクセスではないと思います。それは昨年の問題でした。問題は、実際に人々に接種することです。

ステファン・バンセル: そう思います。そして、リチャードと私は実際、先週このことを話し合いましたが、秋に状況が大きく変わったと思います。正確な時期を言うのは難しいですが、明らかに、低所得国がワクチンを入手するうえで大きな問題があった時期から変化しました。ワクチンがまったく足りなかったのです。ご存じのように、mRNA技術は新しい技術であり、パンデミックに備えて稼働せずに待機している製造能力はありませんでした。そのため、すべてを一から整備し、月ごと、四半期ごとに増強しなければなりませんでした。業界が達成したことを見ると、今では世界全体で月に10億回分を超えるワクチンが製造されていると思います。これは驚くべきことです。規模を示すために言うと、インフルエンザワクチンの年間総生産量は約5億回分です。ですから、月に10億回分というのは、まさに驚くべきことです。

そのため、秋ごろには製品を倉庫に保管し始めるという状況が実際に見られました。パンデミック中にそうなったのは初めてです。ご想像のとおり、製品が承認されるたびに、どこかへ向かうトラックに積み込まれていました。しかし、倉庫の空きスペースが問題になり始めました。各国がワクチンを受け取る能力、つまり保管や配送の面での能力が課題になるからです。11月から12月にかけては、いつの日も、出荷を待つ5,000万から1億回分のワクチンがありました。COVAX向けです。さまざまな国と多くの調整が行われていたためです。もう一つ、世界の進む方向を示す良い兆候があります。これは実際には2週間前のことですが、アフリカ連合は、今年第2四半期向けに確保していたワクチンは必要ないと私たちに伝えました。ありがたいことに、ワクチンが世界全体に行き渡りつつあることを示す良い確認だと思います。現地の同僚から今聞いているのは、低所得国での課題は、どうすれば人々に接種できるかということです。倉庫や医療従事者の面での課題です。高所得国、豊かな国は、低所得国が人々に接種できるよう、もっと支援する必要があると思います。もはや問題は接種用量へのアクセスではないからです。それは昨年の問題でした。今の問題は、実際に人々に接種することです。もっとできるはずだと思います。

2022年の最大の課題は、最後の配送段階になるでしょう。

フランシーヌ・ラクア:リチャードさん、まず、ワクチンの分配について楽観的ですか?また、知的財産権の一時的な適用免除を目指さないとすれば、低所得国でワクチンを実際に行き渡らせるには、どのような方法が最善でしょうか?

リチャード・ハチェット: 土曜日に達成された重要な節目をお祝いしたいと思います。COVAXは、CEPI、Gavi、WHO、ユニセフが主導し、特に低中所得国と低所得国にワクチンを世界的に分配する取り組みですが、各国への供給が10億回分を超えました。これは、ステファンが述べた点を裏付けるものだと思います。現在、ワクチンは110億回分を超えて生産され、パンデミック開始以来、90億回分が接種されました。2021年の状況を支配し、非常に大きな、胸が痛むような問題だった供給の制約は緩和されました。2021年の最大の課題が供給だったとすれば、ステファンの言うとおり、2022年の最大の課題は最後の配送段階になるでしょう。2022年に、ワクチンの生産量を考えれば達成可能な目標だと思いますが、一次接種と追加接種の両方を、希望する世界中のすべての人に提供するために、世界がすべき最大のことは、特に資源の乏しい国々が大規模なワクチン接種事業を実施し、速やかに国民へワクチンを届ける能力を築けるよう支援することです。達成できなかったことや、明らかになった公平性の格差に多くの注目が集まってきました。格差は現実にあり、今後改善する余地は十分にあります。しかし、達成されたことには十分な注目が集まっていないと思います。HIV治療薬、つまり有効なHIV治療薬が世界の多くの地域、特にアフリカで広く利用できるようになるまで、10年の隔たりがありました。トニーは、PEPFARの取り組みを主導しました。これは多くのアフリカ諸国で、そうしたワクチンを利用できるようにするうえで、状況を一変させました。前回のパンデミックでは、ワクチン寄付プログラム開始から13か月後に、富裕国以外へ届けられたのは7,800万回分だけでした。今回は開始から13か月で、10億回分を届けたところです。2022年に入っても、その数は非常に大きなペースで増え続けるでしょう。TRIPS協定の適用免除についても言及されましたね。より公平な形で、製造能力を世界中に分配するにはどうすればよいかという重要な議論があると思います。多くのパートナー、政府、融資機関、民間企業が関わります。ステファンは、モデナがアフリカなどに施設を建設すると発表しました。私たちもこの課題に取り組んでいます。TRIPS協定の適用免除が役割を果たす可能性はありますが、ほかにも道はあります。あらゆる方法を検討する必要があります。ワクチンを利用可能にするうえで、今すぐ適用免除が必要だとは思いません。問題は、最後の配送段階にあります。TRIPS協定の適用免除です。製造能力を世界規模で、より公平に分配するにはどうすればよいかという重要な議論があると思います。多くのパートナー、政府、融資機関、民間企業が関わります。ステファンは、モデナがアフリカなどに施設を建設すると発表しました。私たちもこの課題に取り組んでいます。TRIPS協定の適用免除が役割を果たす可能性はありますが、ほかにも道はあります。あらゆる方法を検討する必要があります。ワクチンを利用可能にするうえで、今すぐ適用免除が必要だとは思いません。問題は、最後の配送段階にあります。

フランシーヌ・ラクア: ありがとうございます、リチャードさん。ファウチ博士、「新しい日常」についてよく話していますが、どのようなものだと定義しますか?私たちの生活をどう見ていますか?マスクを着用するのでしょうか。旅行をするのでしょうか。どのくらいの頻度でワクチンを接種するのでしょうか。たとえば、以前のものより致死率が低いかもしれないウイルス、つまり新型コロナウイルス感染症について、毎週検査を受けることに意味はあるのでしょうか?

アンソニー・ファウチ: 繰り返しますが、現在のパンデミック段階を脱するまで、新しい日常がどうなるか予測するのは非常に困難です。しかし、新しい日常では、呼吸器ウイルスがどのように広がるか、その能力にもっと大きな注意が払われるようになると私は考えています。パンデミックの可能性について語る際、世界全体の相互連携と連帯が、より強まることを願っています。人々が常にマスクを着けて歩き回るようになるとは思いません。そんなことは到底考えられません。世界がそれを普通のこととして受け入れることはないでしょう。ただ、新しい日常のあり方は、フランシーヌ、私への最初の質問にあった「エンデミックとは何を意味するのか」という点にも少し関係すると思います。エンデミックとは感染水準が非常に低く、リチャードたちが述べたように、病気になる人はいても、この病気を完全に根絶するわけではない状態です。根絶はできません。しかし、社会的、経済的、その他の人々との交流が妨げられないほど低い水準になることを願っています。それが私にとっての新しい日常です。また、新しい日常には、パンデミックが何をもたらし得るのかを組織が強く記憶し続けることも含まれてほしいと思います。事態を収束させたあと、何事もなかったかのように忘れてしまうのではなく、科学面の備え、公衆衛生面の備え、そして公衆衛生上の対応をどう改善すべきか、忘れないことです。このパンデミックより前から何十年にもわたって基礎研究と臨床研究に投資していなければ、迅速に対応を開始し、ウイルスが初めて特定されて公開データベースに登録されてから11か月後に、非常に有効で安全なワクチンを人々に接種できるようにすることは、決してできなかったでしょう。

フランシーヌ・ラクア: ファウチ博士、次のパンデミックに備え、その対応に資金を提供するための、何らかの世界的な金融体制の構築は進んでいるのでしょうか?

アンソニー・ファウチ: 繰り返しますが、パンデミックへの備えには、いくつかの側面があります。一つは科学面、もう一つは公衆衛生面です。リチャードが他の組織と協力して進めてきた取り組みは、より優れた基盤技術や免疫設計を開発し、新たな病原体の認識からワクチンを製造できるようになるまでにかかる時間を、大幅に短縮する科学面の備えと密接につながる、公衆衛生面の備えの一部だと思います。ステファンが言及したことの一つは、世界的な生産能力を整備することです。そうすれば、ワクチンを届けられるようになる前に、何十万人、いや何百万人もの人が亡くなるまで待たずに済みます。私たちはその方向に進むべきです。

フランシーヌ・ラクア: 残り1分半です。ではステファンさん、次のパンデミックでは、私たちはより良い対応ができると思いますか?また、何を学び損ねることを心配していますか?

ステファン・バンセル: はい。私は楽観的です。起業家ですから、もともと楽観的なのです。今日進められている取り組みが、非常に大きな助けになると考えています。ご存じのように、ファウチ博士とそのチーム、そしてリチャードと協力して、科学界全体が何年も前から認識してきた、さらに多くの病原体に取り組んでいます。ワクチンが必要なリスクのある病原体は、20種類ほどあります。ジカ熱ワクチンは第2相試験にあり、ニパウイルスのワクチンにも取り組んでいます。誰もが聞いたことのあるウイルスではありません。必要な用量や遺伝学的な観点でどのような構成が必要か、またその用量をどれくらいにするかというデータを事前に得ておく必要があります。そうすれば、そのファミリーに属する新たな病原体が現れたとき、速やかに第3相試験へ進めます。2020年にできたことに加えて、さらに最大6種類に対応する準備を整えられる可能性があると思います。トニーが述べたように、2020年の実績は、どこから見てもすでに世界記録でした。もう一つの要素は製造です。2020年には、ワクチンが承認されたとき、米国政府に2,000万回分を出荷できました。多い数ではありません。しかし今年は、ワクチンの承認を得るまでに必要だと私が考える6か月の期間で、20億から40億回分の供給能力を整える予定です。前臨床試験と臨床試験ですべての準備が済んでいれば、その6か月で15億回分を供給できるでしょう。それはモデナだけの話です。さらに、他のプラットフォームもあります。もっと大きな数字になるでしょう。つまり、実現に必要な手段はすべてそろっていると思います。カナダ、オーストラリア、アフリカにも製造施設を整備するため、多額の投資を行っています。非常に分散化された製造ネットワークを構築するためです。

目指して取り組めば、2022年中に、接種を希望する世界中のすべての人にワクチンを提供することは実現可能だと思います。

フランシーヌ・ラクア: ありがとうございます、ステファンさん。アネリーズさん、45秒でお答えください。最も楽観視していることは何ですか?

アネリーズ・ワイルダー=スミス: 渡航は再開するでしょう。夏は今より良くなると思います。バイオ技術による解決策に加えて、パンデミックへの備えにも取り組む必要があります。より良いコミュニケーションの方法が必要です。そして、社会科学も重要です。開かれた姿勢と備えを、今後は社会科学によりしっかり組み込むべきです。

フランシーヌ・ラクア: 本当にありがとうございました。リチャードさん?

リチャード・ハチェット: 目指して取り組めば、2022年中に、接種を希望する世界中のすべての人にワクチンを提供することは実現可能だと思います。その達成を目指すべきです。また、アネリーズ、トニー、ステファンが述べた点にも関わりますが、新型コロナウイルス感染症への対応から得られる教訓は非常に多く、今後の対応や、パンデミックへの備えについて考える際に役立つでしょう。新型コロナウイルス感染症やコロナウイルスだけでなく、ほかの脅威への備えにも生かせます。それらを記録し、制度に組み込む必要があります。そして、新型コロナウイルス感染症の当面の問題に対処しながらも、長期的な視点を持つ必要があります。

フランシーヌ・ラクア: ありがとうございます。ファウチ博士、最後の45秒ほどでお答えください。振り返ってみて、私たちは何を変えるべきだったのでしょうか。一つ挙げるとすれば?

アンソニー・ファウチ: 変えるべきだったことはいくつかあります。もっと連携の取れた世界規模の対応が必要だったと思います。何度も述べてきたように、世界的なパンデミックには世界的な対応が必要です。そして、常に公平性の問題を念頭に置かなければなりません。世界のある地域でウイルスが自由に循環する状況を許してはならないからです。一つには、低中所得国に対して、そうした事態を防ぐ道徳的義務が私たちにはあると思います。しかし、自分たち自身の利益にも関わります。世界のどこかでウイルスが自由に循環している限り、いずれ私たち全員に影響を及ぼすウイルスが生じるからです。世界共同体として取り組まなければなりません。これが、非常に重要な教訓だと思います。

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