加齢で記憶力が低下するのではなく、雑然とするだけ――研究が示唆

An elderly couple sitting with their backs to the camera, looking at a view of trees.
While memory becomes more cluttered as we age, evidence suggests that older people can also have enhanced creativity.Image: UNSPLASH/Christian Bowen
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  • 新たな研究によると、加齢によって記憶が悪くなるのではなく、雑然としていく。

  • 高齢者は記憶を蓄える際の集中力が低く、そのため記憶は重要でない情報で雑然としていく。

  • この雑然さは肯定的に捉えられることもあることを示す証拠がある。「豊かな記憶」の結果として、高齢者の創造性が高まるという。

記憶は、私たちを私たちたらしめる重要な要素です。しかし、誰もが知っているように、年を重ねると物事を思い出すのが難しくなることがあります。部屋に入った理由を忘れたり、家族の特別な行事の詳細を思い出せなかったり、よく知っている人の名前を忘れたりするのです。

物忘れは、老いを定義するものにさえなり得ます。以前は簡単に思い出せたことを思い出せないと、「ああ、年を取ったな」といった言葉を口にする人は少なくありません。

年を重ねるにつれて物忘れが増えることは示しやすい一方、説明するのは難しいものです。考えられる分かりやすい説明としては、脳に何らかの変化が起こり、情報を蓄えることが難しくなるために、物事を思い出しにくくなるというものがあります。

しかし、ある論文が最近、学術誌『Trends in Cognitive Sciences』に掲載され、この現象について別の説明を提示しました。つまり、記憶そのものは良好なままですが、加齢とともに雑然としていくというものです。

まず、記憶とは、人生で起こることを正確に記録するものではないと理解することが大切です。毎日、毎時間、毎分のあらゆる細部をすべて覚えていたとしたら、と想像してみてください。情報が多すぎて圧倒され、覚えている情報の大半は、ほとんど役に立たないでしょう。

今朝何を食べたかを思い出すとき、窓の外に見えた雲の形や、食事中にまばたきをした回数まで覚えている必要があるでしょうか。私たちはそうではなく、周囲のさまざまな部分に注意を向け、経験のどの部分に注意を払うかによって記憶が形作られます。

証拠を検証する

この新たな研究の著者らは、このテーマに関するさまざまな証拠を検証しました。記憶を蓄えることが難しくなるのではなく、年を重ねると記憶力が低下するのは、関連する情報に注意を集中させる力が弱まり、記憶にあまりに多くの情報を取り込んでしまうためだと示唆しています。これは私たちが制御できることではなく、加齢に伴う自然な結果のようです。

情報をあまりに多く取り込むと、なぜ記憶力が低下するのでしょうか。歯磨きのように、毎日同じようにすることを考えてみてください。今朝歯を磨いたかどうかは覚えているでしょう。でも、今朝磨いたときと昨日磨いたときの違いを、本当に思い出せますか。おとといはどうでしょう。歯磨きのような出来事は共通点が非常に多いため、それぞれを個別の出来事として覚えるのが難しく、混同しやすいのです。

年を重ねると物忘れが増える傾向にあることは、よく知られています。Image: UNSPLASH/ Steven HWG

互いに異なる出来事ほど、記憶に残りやすいものです。内容の重なりが少ないほど、ある出来事を別の出来事と混同したり、それぞれの出来事で何が起きたかを取り違えたりする可能性は低くなります。たとえば、犬の散歩に行ったときのことと、泳ぎに行ったときのことは、それぞれ簡単に思い出せます。共通点がほとんどないため、混同する可能性は非常に低いのです。

つまり、高齢者が記憶に物事を取り込む際に集中力が低くなっているなら、記憶は重要でない情報で「雑然」とします。そのため、ある記憶の情報が別の記憶の情報と重なる可能性が高まります。すると記憶同士を混同しやすくなり、何が起きたのかを思い出しにくくなるのです。

以前の研究も、このレビューに含まれており、この理論が実際にどう働くかを示しています。高齢者のグループと若年者のグループに、2種類の対象(顔と風景)を見せ、どちらの種類がテストに出るかを伝えました。その後、関係のない対象を見せた際、高齢者はより高い脳活動を示しました。さらに、関係のない対象に対する脳活動が高いほど、覚えようとしていた対象についての記憶は悪くなっていました。

このレビューでは、高齢者は周囲からあまりに多くの情報を取り込んで記憶を雑然とさせるだけでなく、長年にわたって得た知識からも情報を蓄積することが分かりました。そのため、記憶を呼び起こそうとするときに扱う情報が増え、加齢とともに生じる記憶の誤りがさらに重なる可能性があります。

しかし、悪い知らせばかりではありません

研究者らによると、高齢者は「豊かな記憶」の結果として、創造性を保ち、ときには高めることを示す証拠があります。

新しい問題に直面したとき、創造的な解決策を考え出す必要が生じることがあります。そのためには、一見つながりのない知識の断片を結び付けたり、役立ちそうな過去の似た経験(同一ではないもの)を思い出したりすることがあります。

高齢者の記憶にある「雑然さ」は、この過程で強みになるかもしれません。一見無関係な記憶同士を結び付ける力があれば、はるかに幅広い経験を生かし、問題に対する創造的な解決策を見つけられる可能性があります。

そう考えると、加齢と、それに伴う避けられない記憶力の低下を、悪いことばかりと見るのはやめてもよいのかもしれません。

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