老化の生物学を逆転させる可能性のある4つのアイデア

A resident holds the hand of a nurse at the SenVital elderly home in Kleinmachnow outside Berlin May 28, 2013. Facing an acute shortage of skilled applicants among its own workforce, German institutions in the care sector increasingly turn to southern European countries to hire trained nursing staff who are willing to work abroad despite the language barrier in order to escape unemployment at home. The SenVital home for the elderly outside Berlin has accepted five qualified nurses from Spain as their staff, providing eight months of language training and additional care schooling needed to attain the German nursing concession. Some 100 Spaniards applied for the ten vacancies SenVital had advertised across its various houses. REUTERS/Thomas Peter (GERMANY - Tags: HEALTH BUSINESS EMPLOYMENT) - RTX103ZD
Ageing research is often promoted as the key to the 'eternal fountain of youth'Image: REUTERS/Thomas Peter
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かつて、これは科学者にとっては主流から外れたテーマであり、ほかの人々にとっては疑似宗教的な夢だった。しかし、老化の生物学、ひいては人間や動物の寿命延長に関する研究は、真剣な取り組みとなっている。

老化研究はしばしば、「永遠の若さの泉」や「不老不死の霊薬」への鍵として紹介される。しかし老化研究が真に約束するのは、個々の病気に一つずつ対処するのではなく、老年期に生じるあらゆる病気を一つの薬で同時に治療することだ。

高齢の患者が病状ごとに専門医の診察を受けずに済めば、費用を削減できる。また、健康を維持する一錠の薬があれば、薬の過剰使用や相互作用という、病状ごとに個別の薬を服用しなければならない高齢者によくある問題を避けられる。

人間の寿命を延ばすという考えに不安を覚える人もいる。死を防ぐことは不自然に思えるからだ。確かに、寿命が大幅に延びれば、老齢年金の財源確保など、さまざまな課題が生じるだろう。

Image: バンク・オブ・アメリカ

しかし、これはすでに起きている。過去1世紀に開発され、人間の寿命をほぼ倍増させた薬や介入も、抗老化の取り組みと考えられる。例えば抗生物質は、人間の平均余命を2年から10年の幅で延ばした。抗生物質が現代医療に不可欠であることに異論はない。

しかし、抗老化薬というとき、私たちが意味するのは老化そのものの過程を標的にする薬だ。実験動物の寿命を延ばすことが示された薬は、すでにいくつもある。その多くは、ほぼ飢餓状態の食事による効果を模倣する。

カロリー制限

カロリー制限は、80年以上にわたり、老化を遅らせることが知られている介入のなかで、最もよく研究されてきた。

生涯にわたってほぼ飢餓状態の食事を続けるには、並外れた意志力が必要だ。しかし、定期的に短期間カロリーを制限する方法(例えば、5日間は通常どおり食べ、2日間は摂取カロリーを減らす「5:2」ダイエット)には、代謝の健康に大きな利点があり、肥満や糖尿病の抑制に役立つ。

動物実験では、断続的な断食によって寿命が確実に延びることが示されている。また、食事をすると分泌されるインスリンに対する体の反応能力を遺伝子操作で変えると、線虫の寿命が2倍になることを示した研究もある。同様のマウス実験では、効果はより小さいものの、寿命が18%延びるという有意な結果が得られた。

カロリー制限の効果が明らかになると、科学者たちはその作用を仲介する遺伝子を探し始めた。1990年代後半から2000年代初頭にかけて、科学者たちはサーチュインに関心を寄せるようになった。サーチュインは、飢餓状態で防御機構を作動させる酵素群だ。

赤ワインに含まれる、今では悪名高い化合物レスベラトロールなどの薬剤は、サーチュインの一種であるSIRT1を活性化し、マウスの寿命を延ばし、老化の指標を遅らせることができる。SIRT1酵素は、その働きに必要なNAD+という燃料を必要とするが、その量は加齢に伴い減少する。

NAD+がSIRT1にとって重要であることから、NAD+の量を増やすという考えが注目を集めている。しかし、NAD+は老化に関与する可能性のあるほかの細胞プロセスにも使われる。例えば、ジュン・リー博士は最近、加齢とともに衰えるDNA修復機構の作動にNAD+の量が不可欠であることを示した。この知見は、幼少期にがんを経験した人々など、放射線にさらされたことによるDNA損傷や、宇宙空間の宇宙飛行士が浴びる宇宙放射線によるDNA損傷の軽減にも応用できる可能性がある。

人間の老化に対するカロリー制限の長期的な影響は、まだ十分に明らかになっておらず、人間を対象にそのような研究を実施するのは難しい。

タンパク質制限

カロリー制限の抗老化効果は、総摂取カロリーではなく、食事に含まれるタンパク質の摂取量によるものかもしれない。研究者たちは、タンパク質、炭水化物、脂質の割合が異なるさまざまな食事について、健康状態と寿命を測定した。その結果、総カロリーの制限よりも、タンパク質の制限のほうが寿命にとって重要だと分かった。

これを人間の食事に当てはめると、「パレオ」ダイエットとは正反対になる。パレオは、穀物よりも肉や加工されていない野菜を重視する高タンパク質の食事法だ。この食事法は、狩猟採集生活を営んでいた初期旧石器時代の人々の食事をまねることを意図している。ただし、旧石器時代の人々の寿命はわずか33年だったと考えられている点は留意すべきだ。

世界で心臓病の記録上の発症率が最も低い集団は、ボリビアのアマゾンで採集と園芸を中心とする生活を送る先住民族、ツィマネ族だ。この集団の食事は高炭水化物、低タンパク質である。

タンパク質の摂取量を減らすと寿命が延びるという考えに沿って、タンパク質摂取を感知する酵素mTORをラパマイシンで停止させることは、現在のところ、寿命を延ばす最も強力な薬物介入だ。

ラパマイシンは、臓器移植の際に免疫系を抑制するため、臨床で使用されている。線虫、ショウジョウバエ、マウスなど、さまざまな動物種の寿命を延ばす。投与が短期間でも、中年期または晩年に行われた場合でも効果がある。もちろん、免疫系を抑制された状態で暮らさなければならないのが難点で、無菌の実験室環境にいるのでなければ、少々厄介だ。

ラパマイシンによるmTOR阻害は、タンパク質制限を模倣するだけでなく、さらに促進する、オートファジーと呼ばれる過程も促す。これは、細胞がいわば自分自身を「食べ」、古くなったり損傷したりした部分を分解して破壊し、原材料に戻すことで、新しい構造に再利用できるようにする過程だ。精液中で発見され、チーズにも微量に含まれるスペルミジンという化合物は、マウスの寿命を10%延ばすことが分かっている。これはスペルミジンがオートファジーを活性化するためだと考えられている。

古いものを取り除く

もう一つの抗老化戦略は、「セノリシス」と呼ばれるものだ。つまり、古く損傷した「老化細胞」を死滅させることを指す。こうした細胞は場所を取り、肥大し、炎症を引き起こす物質を放出する。老化細胞を死滅させられるよう遺伝子操作したマウスでは、健康状態が大幅に改善し、寿命が20~30%延びる。

現在、老化細胞を選択的に死滅させる「セノリティック」薬の開発が進められている。ユニティ・バイオテクノロジーという企業は最近、これを実現するために1億1,600万米ドルを調達した。

DNAの変化

老化が文字どおり私たちのDNAに組み込まれていることを示す強い証拠がある。いわゆる「ジャンピング遺伝子」は、進化の過程における祖先の古代ウイルス感染によって生じたDNAの寄生体で、私たちの遺伝物質のほぼ半分を占める。これらの遺伝子は、自らを「切り取って貼り付ける」ようにしてDNA内の別の場所へ移動する。その結果、ゲノムの安定性が低下する。

通常、これらの遺伝子は、SIRT6と呼ばれる別のサーチュイン酵素によってオフにされている。この遺伝子のコピーを余分に持つよう遺伝子操作された動物は、より長く、より健康に生きる。

年を取るにつれてDNAは変化する。例えば、遺伝子を運ぶ染色体の末端を覆うテロメアと呼ばれる構造は、加齢やストレスによって短くなる。テロメアを伸ばすことは、若さを取り戻す方法として提案されてきた。問題は、それを行うテロメラーゼという遺伝子が、通常、がんを患う成人でしか作動しないことだ。

生まれたときからテロメラーゼを過剰に産生するよう遺伝子操作された動物は、がんを発症する。しかし、話をさらに複雑にすることに、遺伝子操作したウイルスを使って老齢のマウスにテロメラーゼを多く作らせると、がんのリスクを高めることなく、寿命が延び、晩年の健康状態も改善する。

抗老化治療の開発に取り組む企業バイオビバの最高経営責任者(CEO)であるエリザベス・パリッシュは最近、テロメアを伸ばすためにコロンビアを訪れ、遺伝子治療を受けた。

老化を逆転させるもう一つの大胆な方法は、成人の細胞を若々しい幹細胞に戻すことかもしれない。これは、いわゆる「山中因子」を作動させることで可能になる。これらの因子は、特定の遺伝子を「オン」または「オフ」にする。しかし、「山中因子」を過剰に作動させると、再びがんを引き起こす。その代わりに、これらの遺伝子を短時間だけ作動させると、短命なマウスの老化を逆転させ、寿命を延ばすようだ。老化を逆転させる強力な手段となる可能性があるが、リスクも伴う。

もう実現しているのか?

結局のところ、市場に初めて登場する可能性が高い抗老化薬は、すでによく知られている薬、メトホルミンだろう。糖尿病の治療に使われ、1950年代から存在し、何千万人もの人々が服用している。

動物では、メトホルミンは寿命を延ばし、健康を維持する一方、集団全体を対象とした研究では、がんのリスクを低下させることが示されている。メトホルミンは、細胞内のエネルギーセンサーである「AMPK」を作動させることで働くと考えられている。このセンサーはエネルギーが不足した状態を感知し、それに応じて代謝を変化させる。高齢の非糖尿病患者におけるメトホルミンの健康と寿命への影響は、現在ニューヨークで実施されている

TAME試験の対象となっている。この試験が成功すれば、初の「老化保護」または「抗老化」薬につながる可能性がある。高齢者が広く予防薬として服用する薬となるだろう。TAME試験は、製薬業界から

強い関心を集めている。老化は規制当局にまだ正式な病気として認められていないため、老化を治療する可能性のある治療法は、商業的に成立しにくい。そのような薬は、代わりに関節炎や2型糖尿病など、老化に伴う特定の病気を対象とすることになるだろう。

老年期の健康維持に関する現在の助言は、上記の薬のいずれかが最終的に人間に対して安全かつ有効と示されるかどうかにかかわらず、予想どおりではあるが効果的だ。運動、バランスの取れた適度な食事、社会とのつながりを保つこと、そしてストレスを避けることは、どんな薬にも実現できないほど大きな健康上の恩恵をもたらす。

上記の薬剤が最終的に人間に対して安全かつ有効であると示されるかどうかにかかわらず、高齢期の健康を維持するための現時点での助言は、ありきたりではあるものの効果的です。運動、多様で適度な食事、社会的なつながりの維持、ストレスの回避は、どんな薬で得られるものをも超える、非常に大きな健康上の恩恵をもたらします。

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