薬剤耐性菌に関心がない人も、この5つの事例を知れば考えが変わる

A surgery nurse prepares a syringe during procedures to clean the wound of an amputee patient with MRSA (Methicillin resistant Staphylococcus Aureus) in the operating theatre at the Unfallkrankenhaus Berlin (UKB) hospital in Berlin February 29, 2008. MRSA is an antibiotic resistant so-called 'super-bug', which can cause deadly infections. REUTERS/Fabrizio Bensch (GERMANY)
Some of the most troubling strains within the past 5 years.Image: REUTERS/Fabrizio Bensch
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毎年、約100万人が、細菌感染症により命を落としている。その感染症は、一般的な抗生物質では治療できない。現在、これらの抗生物質に代わるものがないため、これは恐ろしいことだ。

抗生物質耐性は、細菌が変化し、抗生物質が効かなくなることで生じる。耐性機構と呼ばれる細菌の変化にはさまざまな形があり、細菌間で受け渡されることで問題が広がる。

抗生物質耐性が広がれば、ささいな切り傷や擦り傷さえ命取りになり得る時代に逆戻りしかねない。将来ありふれたものになるかもしれない事態を垣間見るため、過去5年間に現れた、特に恐ろしい薬剤耐性菌を5つ紹介する。

Image: BBC

1. 広範囲薬剤耐性腸チフス菌

この感染力の強い細菌は腸チフスを引き起こす。腸チフスは命に関わる感染症で、毎年世界で約2,100万人が罹患する。そのうち約1%、つまり22万3,000人が死亡する。

2016年11月、ある腸チフス菌の株がパキスタンで出現した。この株は5種類の抗生物質に耐性を持ち、治療に使える経口抗生物質はアジスロマイシン1種類だけだった。それ以来、この感染症は858例報告され、パキスタンのわずか1つの州で4人が死亡している。

懸念されるのは、この腸チフス菌の株が、単一の段階で多剤耐性(少なくとも3種類の抗生物質クラスに耐性)から広範囲薬剤耐性(2種類を除くすべての抗生物質クラスに耐性)へと変化したことだ。この菌はプラスミドと呼ばれるDNA断片を取り込み、必要な新たな耐性遺伝子をすべて獲得した。

さらに懸念されるのは、この株が、これを死滅させられる最後の2種類の抗生物質クラスへの耐性遺伝子を持つ別のプラスミドを獲得すれば、現在使えるすべての抗生物質で治療できなくなる一歩手前にあることだ。

2. 広範囲薬剤耐性結核菌

結核菌は世界で最も多くの命を奪う感染症の病原体で、毎年170万人を超える人々が死亡している。この細菌が非常に致命的である理由の1つは、細胞内に隠れる能力だ。そのため、結核感染症の治療では、4種類の異なる抗生物質を6か月間継続して服用する必要がある。

新たに発生する結核の最大13%が多剤耐性と推定されており、ロシアを含む欧州でその症例数が最も多い。これは深刻な問題だ。多剤耐性感染症の治療期間ははるかに長く(通常18~24か月)、高価で腎臓やほかの臓器に悪影響を及ぼす可能性のある抗生物質を使う必要があるためだ。

これらの症例の6%は、実際には広範囲薬剤耐性(2種類を除くすべての抗生物質クラスに耐性)であることが判明している。治療成功率がわずか30%であるなか、広範囲薬剤耐性結核が世界の123か国以上に広がっていることは、極めて大きな懸念材料だ。

3. 全薬剤耐性肺炎桿菌

肺炎桿菌は皮膚、腸、土壌に見られる一般的な細菌だ。免疫機能が低下した人に、命に関わる可能性のあるさまざまな感染症を引き起こす。病院で特に多く見られるため、公衆衛生に対する最も重大な薬剤耐性の脅威の1つとなっている。

2013年、肺炎桿菌の多剤耐性症例は、米国だけで8,000件報告されており、血流感染症の患者の死亡率は50%だった。

2016年、肺炎桿菌の株が、米国で特定された。この株は、一般に入手可能な抗生物質26種類すべてに耐性を持っていた(全薬剤耐性と呼ばれる)。この細菌に感染した患者は、代替治療法がなかったため死亡した。

これは孤立した事例ではない。他の細菌も全薬剤耐性になりつつある。

4. 全薬剤耐性緑膿菌

肺炎桿菌と同様に、、緑膿菌も広く見られる細菌で、免疫機能が低下した人に感染症を引き起こす。肺炎桿菌と同様に、病院で特に多く見られる。

米国では、医療関連の緑膿菌感染症は毎年約5万1,000件発生し、そのうち約400件が死亡につながると推定されている。過去5年間に、29件の全薬剤耐性緑膿菌感染症が、イングランドの病院で報告されている。

緑膿菌感染症は、嚢胞性線維症患者の主な死因でもある。2013年には、慢性緑膿菌感染症を患う嚢胞性線維症患者の42%超が、コリスチンによる治療を受けた。コリスチンは「最後の切り札」となる抗生物質だ。これは、こうした感染症の大半が、使用可能な他のすべての抗生物質に耐性を持っていたためだ。

5. 広範囲薬剤耐性淋菌

世界で7,800万件の淋菌感染症が発生していると推定されている。淋菌は、男女に感染する性感染症である淋病を引き起こす。通常は致命的ではないが、治療せずに放置すると、不妊症を含む深刻かつ永続的な健康問題につながる可能性がある。

すべての淋菌感染症の約3分の1は、少なくとも1種類の抗生物質に耐性を持つ。さらに懸念されるのは、新たな広範囲薬剤耐性の「超薬剤耐性淋菌」が発見されたことだ。この菌は1種類を除くすべての抗生物質に耐性を持つ。

このスーパーバグの最初の報告例のうち2件はオーストラリアで発生した。広範囲薬剤耐性の淋菌は、複数のパートナーがいる場合、集団内で急速に広がる可能性があるため懸念される。まれに、未治療の淋病が血流に入り、敗血症性ショックや死を引き起こすことがある。

将来、感染症の流行はさらに深刻化するのだろうか。

その可能性はある。細菌は抗生物質耐性遺伝子を他の細菌に受け渡すことができ、細菌自体も耐性を獲得する。したがって、1種類を除くすべての抗生物質に耐性を持つ細菌が、時間の経過とともに最後の1種類にも耐性を獲得する可能性が高い。

朗報もある。抗生物質を適切に使用し、新たな抗生物質、ワクチン、診断ツールの研究開発に投資すれば、こうした事態が起きる可能性を下げることができる。

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