免疫システムから学ぶ、人生の5つの教訓

This digitally-colorized scanning electron micrograph depicts four magenta-colored, spherical methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) bacteria in the process of being phagocytized by a blue-colored human white blood cells in this undated handout photo. TO MATCH SPECIAL REPORT USA-UNCOUNTED/SURVEILLANCE National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)/Handout via REUTERS ATTENTION EDITORS - THIS IMAGE WAS PROVIDED BY A THIRD PARTY. EDITORIAL USE ONLYONLY - TM3EC961L2E01
This digitally-colorized scanning electron micrograph depicts four magenta-colored, spherical methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) bacteria in the process of being phagocytized by a blue-colored human white blood cellsImage: REUTERS
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科学者はたとえ話を好みます。科学的な手法や発見を伝えるために、私たちはたえずたとえを使っています。

免疫学者として、健康で機能している免疫システムをめぐるおなじみのたとえの多くが、優れた行動特性を示していることに気づきます。そう考えると、私たちも皆、免疫システムの細胞に少し近づき、その特性を生活や職場で見習うべきでしょう。

免疫システムから学べる人生の教訓を5つ紹介します。

1. 多様で協力し合うチームを築く

適応免疫システムは、感染症やがんを検知して排除するため、非常に特定の仕組みで働きます。機能するには、効果的なチームワークが欠かせません。

この免疫チームの中心にいるのが樹状細胞です。免疫システムの哨戒役でありリーダーで、コーチやCEO、ディレクターにたとえられます。

樹状細胞はたいてい広範囲を移動し、豊かな「人生経験」を積んでいます。樹状細胞にとってそれは、体内の臓器で病原体を検知した経験を指します。たとえば、肺でインフルエンザウイルスに接触したり、蚊に刺された後、皮膚でデングウイルスに遭遇したりしたのかもしれません。

樹状細胞は監視ネットワークを形成します。ここでは皮膚の赤みを帯びた染色細胞として示されています。Image: Ed Uthman(米国テキサス州ヒューストン)/Wikimedia Commons、CC BY

こうした経験をした樹状細胞は、近くのリンパ節へと向かいます。リンパ節は、免疫細胞の協力とチームワークを促す構造を持つ器官です。

ここで樹状細胞は、優れたリーダーと同じように、自らの経験を共有し、チーム(ほかの複数の細胞種)にビジョンと方向性を示します。こうして免疫細胞のチームが活性化し、共通の目標、つまり対象となる病原体の排除に向けて協力し始めます。

樹状細胞の戦略で最も重要なのは、多様な専門性を結集する力を理解することです。最良の結果を得るには、免疫チームのメンバーが多様な背景を持つことが不可欠です。

そのために樹状細胞は、ケモカインと呼ばれる小さな分子を分泌します。ケモカインは異なる種類の免疫細胞同士の円滑な対話を促し、樹状細胞がチームと計画を話し合えるようにします。免疫学ではこれを「リクルートメント(細胞の動員)」と呼びます。

このリンパ節の3D画像では、ケモカインを産生する細胞が赤と青で示されています。Image: Joanna Groom/WEHI、著者提供

職場と同じように、ここでも多様性が鍵です。樹状細胞が樹状細胞だけをさらに動員するのであれば、免疫システムはその役割をまったく果たせなくなると言ってよいでしょう。樹状細胞は代わりにT細胞などを招き入れ、重要な知識と戦略を共有して、免疫細胞が効果的に行動できるよう導きます。

T細胞はその計画を次の段階へと引き継ぎます。自ら病原体に直接対処する準備をすることもあれば、防御抗体を作るB細胞など、ほかの細胞種と協力することもあります。

このように樹状細胞は、感染症やがんを排除するために協力し合う、豊かで多様なチームを築きます。

2. 肯定的・否定的なフィードバックから学ぶ

免疫細胞は優秀な学習者です。

発達の過程で、T細胞は肯定的・否定的なフィードバックの両方に左右されながら成熟します。これは胸部の前方にある胸腺で起こります。胸腺の機能を初めて発見したのは、オーストラリアの科学者、ジャック・ミラーです(この発見により、2018年日本国際賞を受賞)。

成熟する間、T細胞は試行錯誤を重ね、批判と助言を同じように受け入れます。これは、胸腺を出た後に「目にする」もの(たとえば自分の体の分子や外来病原体の分子)に適切に反応できるよう「訓練」するためです。

重要なのは、この過程のバランスです。T細胞が適切に成熟するには、肯定的・否定的なフィードバックの両方が必要で、どちらか一方だけが過剰でも十分ではありません。

多様な免疫チームでは、細胞は学ぶ側にも教える側にもなります。樹状細胞、T細胞、B細胞の間で活発な情報交換が行われる免疫応答の際に、これが起こります。

この支え合う環境では、フィードバックを何度も重ねることで、B細胞は感染症に対する対応力を高め、病原体ごとに特化した抗体を作ります。

こうしたフィードバックの効果は非常に強く、細胞が自分の体を攻撃するのを防ぎ、代わりに免疫チームで積極的な役割を担う細胞へと変えることがあります。

建設的なフィードバックを促す方法を開発すれば、自己免疫疾患を是正できる可能性があります。

リンパ節を拡大して切片にしたこの画像の色は、免疫応答の一環として相互作用するさまざまな細胞種を示しています。Image: Joanna Groom/WEHI、著者提供

3. 状況に応じた独自の対応

免疫システムは状況が重要だと理解しており、あらゆる感染症を解決するために「すべてに同じ方法で対応する」やり方には頼りません。

そのため、免疫細胞はウイルス、真菌、細菌、蠕虫(寄生虫)など、さまざまな種類の病原体に的確に対応できます。

状況が異なっても、応答に加わるチームメンバーは同じ、あるいは似ている場合があります。それでも免疫システムは、遭遇する状況や病原体に応じて異なる道具や戦略を使い分ける、感情知能を発揮します。

重要なのは、危険を取り除くための攻撃反応を免疫システムが慎重に制御する必要があることです。攻撃が強すぎると、アレルギーや喘息で見られるような、周囲の組織への損傷が生じます。反対に、反応が弱いと免疫不全、慢性感染症、またはがんにつながります。

免疫学に携わる研究者の大きな目標の一つは、バランスの取れた個別化免疫応答を治療に役立てる方法を学ぶことです。

4. 仕事と生活のバランスを重視する

働きすぎて休息が足りないと、私たちは最高の力を発揮できません。免疫細胞も同じです。

働きすぎた免疫細胞は、一般に「慢性的な疲弊」状態にあると表現されます。この状態では、T細胞は腫瘍細胞やウイルス感染細胞を攻撃する力を失います。私たちが無理をしすぎたときと同じように、活力がなくなり、効率も落ちます。

T細胞が疲弊状態に切り替わることは、バランスの取れた反応を保ち、周囲の組織への損傷を避けるのに役立ちます。しかし、ウイルスやがんは、免疫応答のこの弱点を利用し、意図的に疲弊を促します。

急速に進歩する免疫療法の分野では、免疫システムのこの限界に正面から取り組み、新たながん治療法を生み出してきました。こうした治療法は細胞を疲弊状態から解放し、回復させて、再び効果を発揮できるようにします。

この治療法(「免疫チェックポイント阻害」と呼ばれます)は、T細胞のためのセルフケア・スパのようなものです。T細胞を活性化し、意欲と効率を取り戻させます。

この治療法はがん治療を一変させ、その先駆者であるジェームズ・P・アリソンと本庶佑の2人に、2018年ノーベル生理学・医学賞が授与されました。

5. 人生経験から学ぶ

適応免疫システムの要となるのは、過去の感染を記憶する能力です。そのおかげで、同じ病原体に何度も遭遇したとき、より速く、より的を絞った反応ができます。

文字どおり、命を落とさなければ免疫システムは強くなります。

ワクチンはこの行動様式を利用し、感染の危険を冒さずに、免疫細胞に記憶を形成させます。

この応答を担う記憶細胞の形成を最適化する経路を特定するには、まだ研究が必要です。研究者は、どの記憶が最も効率的なのか、またマラリア、HIV・エイズ、季節性インフルエンザなど、特に治療が難しい感染症を標的にする記憶をどう作るかを明らかにしようとしています。

人生にはワクチンがもたらすような近道はないかもしれませんが、困難を経験した後に時間を取って振り返り、学ぶことで、将来の問題に対するより良く、より速い解決策を見つけられるでしょう。

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