データは新型コロナで打撃を受けた医療制度を立て直す可能性があるが、正しく活用しなければならない

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世界各地の医療制度が危機に瀕している。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、その対応能力とレジリエンスは限界に達した。

2030年を見据えると、新型コロナウイルス感染症による甚大な衝撃からの回復が、世界の医療制度に共通する格差の拡大によって妨げられていることが明らかになる。

現在、そして将来、リスクにさらされる医療制度

依然として備えができていない重大な課題が残っている。その一つが、がん、糖尿病、肥満などの非感染性疾患(NCDs)への対処という大きな課題だ。これらを合わせると、毎年4,100万人が死亡しており、これは世界の全死亡者数の71%に当たる。こうした死亡の4分の3は低・中所得国で起きている。高齢化する人々のケアも課題だ。世界の60歳超の人口は、2030年までに9億100万人から14億人に増えると予測されており、NCDsなどの健康課題をさらに深刻化させる。

医療制度が直面する危機は、気候変動に匹敵する社会的課題だ。私たちは急速に転換点へ近づいており、それを過ぎれば改善は飛躍的に難しくなる。今後数年間に高まる需要に医療制度が応えられなければ、損なわれるのは国民の健康だけでなく、経済的繁栄や人々の生活基盤でもある。

社会経済的に困窮し、排除されている人々――民族的少数者、女性、高齢者、低所得者――は、医療制度の機能不全による影響をより強く受け、適時の診断、治療、ケアを受けられない状況にある。これはすべての国に当てはまる。例えば、カナダの一部の先住民コミュニティでは乳児死亡率(IMR)が全国平均の3~7倍に上ることが研究で示されている。また、ヨーロッパの平均寿命は約80年である一方、アフリカではわずか63年だ。研究によると、健康状態の悪化により、世界のGDPは毎年15%減少する。

世界各地の医療制度は非常によく似た課題を抱えており、とりわけNCDsの増加や、効果的な診断とケアへのアクセスの不平等が問題となっている。英国のような高所得国から、エチオピアのような低所得国まで、不可欠な診断、治療、医薬品や外科手術へのアクセスは、新型コロナウイルス感染症の影響で急速に低下している。医療制度はこうした課題に対応できる体制が整っておらず、多くの人々を苦しめ続ける、効果的なケアへのアクセス格差にも対処できていない。しかし、まだ時間はある。最も支援を必要とする人々の健康、経済、社会に恩恵をもたらすには、医療制度への緊急の投資が必要だ。手遅れになる前に実行しなければならない。

データを活用して医療制度を立て直す

データとデジタルソリューションを活用すれば、より公平で持続可能な高付加価値の医療制度を実現できる。

データの収集、分析、相互運用性は、患者ケアと人々の健康を改善する新たな可能性を切り開く。最終的に、データをより適切に活用することで、医療における最も深刻な格差を解消する策が見つかる。しかし、データだけですべてが解決するわけではない。データやデジタル技術の使い方について、誰もが同じように理解しているわけではない。

医療制度に最先端技術を組み込むことは、適切に行わなければ、既存の格差を固定化するおそれもある。データを安全、倫理的かつ公平に活用するには、医療従事者は以下の点を考慮しなければならない。

1)膨大なデータの理解に役立つ革新的な新技術を導入し、規模を拡大する。そして、得られた知見をすべての人の医療改善に生かす。

ウェアラブル技術や3Dプリンティングから遠隔医療まで、デジタルヘルス技術の革新は、従来の医療よりも全人的な形で人々の生活に影響を与える可能性がある。

2)医療制度内のデータの相互運用性を高め、イノベーションを促すデータ規制と基準を導入する。

共通の国境を越えた基準があって初めて、医療エコシステム全体でデータを安全かつ倫理的に活用するための枠組みを整えられる。最近の欧州ヘルスデータスペース(EHDS)は、そうした枠組みの好例だ。

3)人々が自分のデータを管理できるようにし、患者との信頼に基づくコミュニケーションを優先する。

自分のデータが誰かの利益を生むためではなく、自らの生活を改善するために使われると信頼できて初めて、人々は安心してデータを共有できる。

4)デジタルと健康に関するリテラシーを高め、デジタルヘルス技術へのアクセスを促進するプログラムを実施する。

社会的に脆弱な人々は、健康やデジタルに関するリテラシーが不足していることが多い。多くの地域では、デジタル技術へのアクセスも限られている。健康とデジタルのリテラシーおよびアクセスの向上に取り組むことは、医療イノベーションを公平に導入し、あらゆる人々の健康を改善するうえで不可欠だ。

5)技術が、それを必要とする人々のために役立つようにする。

デジタルを含むすべての医療サービスは、さまざまな医療関係者、とりわけ医療従事者や患者が参加し、包摂的な形で共同設計されなければならない。そうすることで、解決策が彼らのニーズに応えるよう設計され、社会にある偏見を再生産したり、強めたりしないようにできる。

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健康の公平性に向けた協働

医療コミュニティ全体の協働は、戦略的な官民パートナーシップに支えられることで、最先端のソリューションを効果的に広げ、とりわけ農村地域の人々のニーズに応えることにつながる。 政策立案者は、データ活用と相互運用性の基準を策定するため、科学者や起業家と直接協力しなければならない。「Movement Health 2030」のような世界的な保健イニシアチブは、医療制度がすべての人の医療アクセスを広げる効果的な技術を導入しやすくなるよう、こうした関係者と連携している。

デジタルヘルス技術を導入する際は、倫理を常に念頭に置くことが不可欠だ。イノベーションが人々のニーズに真に応え、社会の不平等を再生産したり、さらに強めたりしないようにするためである。

今日と将来の需要により適切に対応できるよう、今こそ複数の関係者による協働を迅速に拡大し、医療制度を変革するときだ。力を合わせ、大胆に行動してこそ、2030年までにすべての人の健康と福祉を実現するという国連の持続可能な開発目標を達成できる。

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