音は心を癒やすことが知られている。では、腫瘍を殺すこともできるとしたら?

The Afghan Woman Orchestra Zohra performs during the closing session of the World Economic Forum (WEF) annual meeting in Davos, Switzerland January 20, 2017. REUTERS/Ruben Sprich - RTSWIIU
We've always known music is therapeutic, but a new medical technique goes much furtherImage: REUTERS/Ruben Sprich
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音は何世紀にもわたり、人々を落ち着かせ、治療し、癒やすために用いられてきた。鎮痛効果を感じる人もいれば、気分が高揚する人もいる。音で脳波を操り、身体的・精神的な症状を治療する本格的な「サウンドヒーラー」から、古代チベットのシンギングボウルまで、音を使って人々の健康を回復させる方法は多岐にわたる。

しかし、音で腫瘍を破壊できるとしたらどうだろう。パーキンソン病やアルツハイマー病、てんかん、うつ病、強迫性障害、関節炎、腰痛、さらには脳、乳房、前立腺、肝臓、膵臓の腫瘍など、多様な疾患を治療できるとしたら?

SFや『スター・トレック』のように聞こえるかもしれないが、これは現実だ。50の偉大な発明に選ばれ、フォーチュン誌から「医療を変えると評された集束超音波は、画期的で革新的な非侵襲的治療技術であり、診断における磁気共鳴画像法(MRI)と同じほど、治療を一変させる可能性を秘めている。ただし、開発はまだ初期段階にある。

集束超音波はどのように作用するのか?

基本原理は、虫眼鏡で太陽光を一点に集め、葉に穴を開けるのと似ている。集束超音波では、複数の超音波エネルギーのビームを交差させ、身体の奥深くにある標的へ極めて高い精度と正確さで集中させる(周囲の正常な組織は損傷しない)。

個々のビームが身体を通過する箇所では、何も起こらない。しかし、ビームが集まる焦点では、集束超音波のエネルギーがさまざまな生物学的作用を引き起こす。これには、組織の破壊、身体の免疫反応の刺激、薬剤の送達などが含まれる。焦点の位置や治療効果は、超音波またはMRIを使ってリアルタイムで誘導・制御される。

エビデンスと今後の展望

科学的知見は集束超音波の有益性を強く裏付けており、毎年、査読付き学術誌に数百本の論文が掲載されている。そこには、権威ある医学誌に発表された臨床試験のデータも含まれ、たとえばニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンやランセットなどがある。こうしたデータは安全性と有効性を示すエビデンスとなり、これまでに世界各地で22件の規制当局による承認につながっている。そのうち5件は米国食品医薬品局(FDA)による承認で、さらに75を超える臨床適応がさまざまな(大半は初期の)開発段階にある。

Image: 集束超音波財団

集束超音波は、手術、放射線治療、薬剤送達、がん免疫療法に代わる、またはそれらを補完する強力な治療法である。すでに複数の疾患で治療を変革し、治療成績を向上させ、医療費を抑えている。

たとえば、米国FDAは最近、神経疾患の一つである本態性振戦の治療にFUSを承認した。これは米国でこの技術が脳疾患に適応された初めての例であり、身体に負担を伴う脳深部刺激療法に代わる、歓迎すべき非侵襲的な選択肢となった。臨床試験データでは、FUS治療から3カ月後に患者の振戦と運動機能が約50%改善し、1年後も40%で改善が維持された(対照群ではまったく改善が見られなかった)。

これまでに150人を超える本態性振戦の患者が治療を受け、良好な結果を得ている。世界各地の集束超音波センターでは、FUSを希望する数百人の患者が待機している。

集束超音波は、子宮筋腫のある女性にとっても有望な治療法である(米国では2004年にこの用途で承認)。米国の筋腫患者約1,000人を対象とした全国調査は、2013年10月号の 米国産科婦人科学ジャーナルと女性の健康ジャーナルの両誌に掲載された。筋腫治療の説明を提示された回答者の過半数(60%)が、集束超音波を最も希望する治療法に選んだことが明らかになった。女性たちは、日常生活にすぐ復帰できること、切開や入院が不要なこと、合併症が少ないことを治療の利点として挙げることが多い。これまでに世界各地で、筋腫のある女性7万2,000人以上にFUSが実施されている。

研究のペースは急速に上がり、この分野全体の勢いも増しているが、集束超音波が何百万人もの患者を助ける標準治療となるまでには、膨大な作業と多くの障壁の克服が必要である。

今から何年か後、集束超音波の可能性が実現し、広く普及する治療法となれば、治療の考え方や医療政策に変化をもたらし、世界中の数えきれない患者に影響を及ぼすだろう。

詳しくは www.fusfoundation.orgをご覧ください。カッセル博士は、世界経済フォーラムの神経技術・脳科学グローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーである。

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