ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相をはじめとする女性リーダーは、COVID-19への対応において力強いリーダーシップの手本を示してきました。
思いやりのあるリーダーシップは、生産性の向上を維持する助けになると考えられています。
また研究によると、機敏な組織はパンデミック中に最も良好な成果を上げています。
COVID-19は、危機管理に関する多くの教訓を私たちにもたらしました。最も成功したリーダーや企業の多くは、従業員を支援し、顧客の要望に耳を傾けて組織の方向転換を図るなど、優れた人間関係のスキルを示しました。
これらの教訓の多くは、先行きが不透明な未来に向けて、組織の将来性を確かなものにする助けとなるでしょう。最も重要な教訓は次の3つです。
1. 共感と誠実さをもって導く
女性が率いる国々は危機にうまく対応してきたと、しばしば報じられてきました。特にニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相の事例がその代表です。
実際、女性がリーダーを務める多くの国では、これまでのところ隣国と比べて死亡率が低く抑えられています。比較してみてください―― ドイツの人口10万人あたりの死者数は11人です。これはフランスの45人、英国の70人と比べるとはるかに少ない数字です。しかし、女性リーダーこそが本当の理由なのでしょうか。
女性主導の国々に「最近接国分析」の手法を適用した2人の経済学教授は、そう考えています。Supriya GarikipatiとUma Kambhampatiは、新型コロナウイルスの感染者数と死亡率に加え、人口規模や保健医療への支出などの変数も調べ、女性がリーダーを務める国々では結果が「体系的に良好」であることを明らかにしました。
特定された重要な要因の一つは、女性主導の国々が都市封鎖をより早い段階で実施したことです。その理由として、女性リーダーは男性よりもウイルスが国民に与える影響についてリスク回避的であった可能性があると、両氏は推測しています。また、迅速で明確なコミュニケーションと参加型のリーダーシップ・スタイルも一役買った可能性があると述べています。
女性がリーダーを務める国がすべて低い死亡率を示しているわけではないのも事実です―― ベルギーの死亡率は世界で最も高い水準にあります。また、国同士を比較することは難しい場合があります。しかしそれでも、ここには価値あるリーダーシップの教訓があるように思われます。共感、温かさ、透明性は、それを誰が示すかにかかわらず、重要な役割を果たすのです。
2. 機敏であること
「アジリティ(機敏性)」は、経営のガイドにあらゆるところで登場します。Harvard Business Review (HBR)によると、ジョン・ディアは新しい機械の開発にこれを活用しており、、National Public Radioも同様の手法で番組を制作しています。では、アジリティとは正確には何でしょうか。
HBRは次のように説明しています。アジャイルとは、「人々を機能別のサイロから解放し、自己管理型で顧客志向の多分野横断チームに配属すること」です。言い換えれば、COVID-19のような危機がもたらす多様で急速に変化する要求に、非常に柔軟に適応できるということです。
しかし、機敏なモデルは実際に成果をもたらすのでしょうか。McKinseyは最近アジャイル型の変革を経験した25社を分析しました。その結果、顧客満足度、従業員のエンゲージメント、業務成果のいずれの点においても、アジャイル型の部門は非アジャイル型の部門よりもCOVID-19による衝撃によりよく対応できていることが分かりました。
問題は、機敏性の向上を阻んでいるのが、リーダー自身かもしれないということです。人事コンサルタントのMercerは、従業員の78%が再教育を受ける準備ができていると答えている一方で、経営幹部は自社の従業員のうちわずか45%しか適応できないと考えていると指摘しています。Mercerはこれを「心理的な障壁」と呼んでいます。また同社は、企業が立ち直りと刷新を目指す中で、今年の経営に関する議論ではアジリティが中心的なテーマになると見ています。
3. 人材を大切にする
COVID-19の嵐を乗り越えてきた企業は、どのようにしてそれを成し遂げたのかを自問する必要があります。
もちろん、先見性と機敏な考え方は不可欠でした。しかし、組織の基盤となる資産、すなわち人材に目を向けることも同様に重要でした。人材がいなければ、ほかのいかなることも実現できません。在宅勤務で育児とZoomの会議を両立させる人、追加のシフトに入る配達ドライバー、リスクを承知で病院に向かう看護師など、あらゆる場所の人々が立ち上がってきました。
専門家はこの点について、さまざまな表現で指摘しています。国連の事務次長補であるKanni Wignarajaは、パンデミックによって「誰もがそれぞれ浮き沈みを経験している」という状況にあることをリーダーが認識するよう呼びかけています。英国の保健政策シンクタンクであるKing’s Fundは、思いやりのあるリーダーシップを求めており、それは「すべてのスタッフに注意を払い、真摯に耳を傾け、寄り添うこと」を意味すると述べています。
優れたリーダーはすでにこれを実践しており、多くの場合、デジタル技術を活用してコミュニケーションを改善しています。Chief Executive 誌は「毎週のCEOウェビナー、毎日のチーム・ミーティング、階層を飛び越えた対話、オンラインでの懇親会」を提唱し、「人を第一に考える」組織をつくることを勧めています。
信頼もまた中心的な要素です。パンデミック以前、Mercerによる調査では、多くの企業が従業員の在宅勤務を信頼していないことが分かっていました。しかし今後について、OECDは組織がスタッフとの信頼に基づく関係を築くことを目指すべきだと提案しています。それによって在宅勤務がもたらしうる生産性向上の可能性を実現するためです。信頼は回復を早めることができるでしょう。

