医療へのアクセスは、21世紀の政府が直面する重大な課題である。
パンデミック以前から、非感染性の
疾病や高齢化という、進行の緩やかな危機が、医療
制度に負担をかける恐れがあった。官民連携は、医療へのアクセスを拡大・改善する革新的な解決策として台頭している。
今日の世界は、医療へのアクセスを21世紀の政府が直面する重大な課題にしている、複雑な医療問題の数々に直面している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中で何百万人もの命を奪い、各国の経済活動を全面的に停止させた。しかしパンデミック以前から、非感染性疾患や高齢化という進行の緩やかな危機が、各国の医療予算を圧迫し、人々の寿命と生活の質を損なう恐れがあった。
こうした大きな課題には、「社会全体」で取り組むアプローチが必要だ。いずれも公共部門または民間部門のどちらか一方だけで対処するには規模が大きく、複雑すぎるため、両部門が協力して取り組むことが不可欠である。かつてはインフラ事業に最適な資金調達手段と考えられていた官民連携(PPP)が、医療へのアクセスを拡大・改善する革新的な解決策として台頭し始めている。
PPPは、最も効果を発揮するとき、公共部門と民間部門の強みを同時に生かす。規模の経済を実現し、十分な医療を受けられていない人々のアクセスを広げることができる。また、公共部門にとって費用対効果を損なうことなく、民間部門に持続可能なリターンをもたらすこともできる。
しかし、PPPは複雑な仕組みである。それぞれに違いがあり、解決しようとする問題に合わせて設計しなければならない。そのため、両部門の利害のバランスを取り、意思決定権限を実効性のある形で分担する方法を確保し、双方の説明責任を促す、きめ細かなアプローチが必要となる。したがって、効果的で持続可能な医療分野のPPPを構築するのは容易ではない。
世界経済フォーラムは、協力してきたロンドン大学の官民連携共同センターとともに、最新プロジェクトである「ラーニング・ジャーニー:医療アクセスのための官民連携」に取り組んできた。
6か月にわたるこのプロジェクトでは、公共部門、民間部門、非営利部門から意欲の高い有力機関が集まった。参加機関は、医療分野のPPPに取り組むためのベストプラクティスをまとめ、それを「医療アクセスのための官民連携:ベストプラクティス」と題するホワイトペーパーで発表した。
多様な視点から学ぶことで、グループは医療分野で成功しているPPPに共通する重要な要素を特定できた。
各PPPが独自のものであることに変わりはないが、成功しているPPPには次のような構造上の共通点がある。
信頼性と信頼
信頼はあらゆるパートナーシップの要である。PPPのパートナーは、相手が義務を果たし、パートナーシップの最善の利益に沿って行動すると信頼できなければならない。ただし、成功するPPPでは、信頼を総合的に捉える。信頼に足るパートナーには、約束を実行する意欲と能力の両方がある。このパートナーには、パートナーシップの最善の利益に沿って行動する動機があるだろうか。成果を出す能力があるだろうか。
利害の一致を図る
公共部門と民間部門の利害が常に完全に一致するとは限らない。しかし、「利益相反」の兆候が見えた時点で、多くの連携の可能性が断念されてきた。「ラーニング・ジャーニー」の参加者は、利益相反が存在するからといって、必ずしもパートナーシップが成立しないわけではないと合意した。利害を一致させるプロセスを通じて、対立を管理できる。一方の当事者のリターンを、合意した定量指標で測るプロジェクト全体の成功に結びつければ、PPPは双方のパートナーがパートナーシップにとって最善のことを追求する動機を確保できる。
多様なリターンを受け入れる
「ラーニング・ジャーニー」に参加した公共部門と民間部門の関係者は、長期的な持続可能性を確保するには、プラスのリターンが不可欠だと合意した。公正な投資収益が必要であること自体は、利益相反ではないという。一方で、「リターン」は金銭面だけにとどまらないことも指摘された。PPPのパートナーは、戦略的な便益、評判の向上、部門を超えた関係の改善など、より幅広いリターンを考慮することで、さらに大きな価値を得られる可能性がある。
パートナーとして市民を巻き込む
成功するPPPでは、市民はサービスの利用者または解決策への参加者として、「第三のパートナー」となる。例えば、非感染性疾患の発生を減らすには、市民が長期的な生活習慣の見直しに前向きに取り組む必要がある。強い反ワクチン運動が台頭した新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、医療制度や解決策への信頼が欠けることによる深刻な影響を浮き彫りにした。市民の参加を促すには、専用のコミュニケーション戦略が常に必要であり、多くの場合、広報の専門家の力を借りることになる。ただし、市民を一枚岩とみなしてはならない。人口の異なる層には、それぞれに応じた方法で働きかけることが重要である。
未来を切り開く協働
もちろん、適用する力を備えた熟練の専門家がいなければ、どのような「ベストプラクティス」も、官民連携に対する世界の取り組み方を効果的に変えることはできない。両部門の専門家には、現実の場で大規模なPPPを構築し、維持するための分析枠組みとスキルが必要だ。そのため、能力構築を進めなければならない。幹部を育成し、対話を促進する必要がある。また、成功と失敗のすべてから学べるよう、新たな連携を制度面から支援しなければならない。
PPPが医療へのアクセスを改善する可能性は、かつてないほど明らかになっている。新たな「ベストプラクティス」と、意欲的に深く関与する公共部門・民間部門のパートナーを得て、部門を超えた協働によって医療へのアクセスを広げる道筋は、これまで以上に明確になっている。

