現在、アフリカ、カリブ海地域、南アジアの計24か国でコレラの流行が報告されています。
今年に入り、約339,000件の症例と3,280人の死亡が世界保健機関に報告されています。しかし、コレラでは過少報告が知られた問題であるため、実際の数はこれを大幅に上回る可能性があります。
高所得国にとってコレラのリスクはごくわずかです。水道・衛生インフラが機能しなくなった場合にのみ広がる傾向があるため、欧州の人々にとって主なリスクは、流行地域へ向かう旅行者にあると考えられます。
コレラの地域内感染がある国へ渡航する人は、ワクチン接種が適切かどうか、助言を求めることを検討してください。
コレラは、重度の下痢を引き起こし、死に至ることもある感染症です。複数の低所得国で再び広がっています。この病気に関する最新情報で、世界保健機関(WHO)は世界的な状況がさらにここ数か月で悪化したと指摘しました。
現在流行が報告されている24か国は、アフリカ、カリブ海地域、南アジアに広がっています。WHOの2022年12月の報告以降、ブルンジ、南アフリカ、そしてドミニカ共和国で新たなコレラ流行が報告されました。シリア政府の支配下にない地域であるシリア北西部からも、現在症例が報告されています。
世界で報告されたコレラ症例の地理的分布、2022年2月~2023年2月
アフリカ諸国では、今年最初の4週間に26,000件の症例と660人の死亡が報告されました。これに対し、2022年の年間合計は約80,000件の症例と1,863人の死亡でした。
世界の感染状況を見ると、WHOに報告された3月中旬までの症例数は約339,000件に上り、3,287人が死亡しています。対象となった国の大半では、これらの数字に含まれる症例と死亡は2023年分のみですが、一部の国では2022年の全期間または一部の期間の分も含まれています。
このため増加分の数値化は難しいものの、ここ数か月の世界の症例数は過去数年と比べて大幅に増えているようです。
また、コレラでは過少報告が知られた問題であるため、実際の数ははるかに多いと考えられます。症例の多くは診断されておらず、コレラの流行が起きていると報告することに消極的な国もあるかもしれません。
症状、治療、予防
コレラは水様性の下痢を引き起こします。便の褐色が失われるほど大量になることもあり、下痢便が特徴的な「米のとぎ汁」のように見えます。死亡する場合、症状が現れてから数時間以内と、非常に急速に進むことがあります。通常は脱水または電解質の不均衡が原因です。
コレラは成人より子どもに多く、感染した場合も子どものほうが死亡する可能性が高くなります。栄養不良の子どもは、コレラが重症化して死亡するリスクがより高くなります。
今回の流行では、特に高い死亡率を報告している国があることが注目されます。2000年から2010年まで、世界の致命率は2%から3%の間で推移していましたが、その後は徐々に低下し、2019年には最低の0.2%となりました。アフリカ諸国全体の致命率は現在2.2%で、マラウイ、ナイジェリア、タンザニアでは3%を超えています。
悪化する多くの国の食料安全保障、特にアフリカでの状況が、この死亡率上昇の要因となっている可能性があります。
治療では、まず患者に水分を補給することが最優先です。経口補水塩液を用い、より重症の場合は点滴で補液します。抗生物質は下痢の期間を短縮する可能性があり、より重症の患者に投与できます。
利用可能なコレラワクチンはいくつかあり、さらに多くのワクチンが開発中です。現在使用されているワクチンは経口投与されます。ワクチンの有効性の推定値には幅があり、65%から85%の間です。ワクチン接種による予防効果は生涯続くものではなく、2年ごとに追加接種が必要です。
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歴史から現代まで
歴史的にコレラの中心地は、インドのガンジス川デルタ周辺でした。しかし、そこから世界的なパンデミックが相次いで広がり、最初のものは1817年に始まりました。これらのパンデミックは、数百万人の死者を世界各地で出し、欧州も例外ではありませんでした。
現在続いている第7次パンデミックは、1961年に始まり、コレラのパンデミックとして史上最も長く続いています。複数回の感染拡大を引き起こしてきました。
コレラの主なリスクは通常、不衛生な環境、不十分な衛生設備、汚染された飲料水に関係しています。感染の大半は、汚染された食べ物や飲み水の摂取によるものです。人から人への直接感染はまれです。
今回の流行拡大の原因は?
WHOは、今回のコレラ流行の拡大の主な要因として、サイクロン、洪水、干ばつなどの異常気象に加え、人道危機、紛争、政情不安を挙げています。また、コレラワクチンの供給不足や、新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどによる医療サービスへの負荷増大も指摘しています。
実際、コレラは気候変動のもとで発生頻度が高まる可能性のある病気の一つです。主な要因は、洪水や干ばつの頻発を通じて、水や衛生環境に及ぼす影響です。コレラの流行は、地震などの大規模な自然災害の後に起きることが多く、2010年のハイチでの事例や、1998年のバングラデシュでの洪水後の事例が挙げられます。
戦争もコレラの流行を引き起こすことがあります。イエメンでは2016年からその例が見られます。同様に、ソビエト連邦の崩壊後、かつて構成国だった国々で大規模なコレラ流行が発生しました。
コレラが戦争や自然災害の後に頻発するのは、主に水道・衛生インフラが損傷し、飲料水が汚染されるためです。また、戦争中や災害後に人々が避難を余儀なくされ、水や衛生設備が不十分な仮設住宅での生活を強いられることもあります。食料不安もこうした災害の後に生じ、重症コレラのリスクを高めることが分かっています。
欧州におけるリスクを評価する
症例数が増え続ける場合、あるいは現在の水準が続くだけでも、今年の世界の症例数は過去30年間のどの年よりも多くなる可能性があります。
症例数は2017年と2019年に非常に多かったものの、そのほぼすべてが戦火に見舞われたイエメンでの症例でした。現在は複数の大陸で症例が増加しています。
コレラが実際に広がるのは、水道・衛生インフラが機能しなくなった場合に限られ、高所得国ではそのリスクはごくわずかです。現時点で欧州の人々にとって主なリスクは、流行が起きている地域への旅行者にあります。
コレラの地域内感染がある国へ渡航する人は、ワクチン接種が適切かどうか、助言を求めるのが賢明です。いずれにしても、コレラ流行国に滞在する際は、食べ物と飲み水の衛生管理を徹底することが重要です。
コレラが流行している最も近い国は、レバノンとシリア北西部です。これらは、直近で大地震に見舞われたトルコと国境を接しています。
さらに、ウクライナでは戦争が続いており、国内で100万人を超える人々が、もはや水道水を利用できません。したがって、欧州におけるコレラのリスクを軽視することはできません。

