患者から失礼な扱いを受けても、医師はただ「気にせず切り替える」わけではないという研究結果が出ている。怒った親を相手にしたシミュレーションでは、小児科医の能力が著しく低下した。
今回の研究結果は、無礼な態度が「医療現場での業務能力に壊滅的な影響を及ぼす」という過去の研究を裏付けるものだと、フロリダ大学の経営学教授で、博士課程の学生トレバー・フォークとともに研究に取り組んだアミール・エレズは述べる。
ジョンズ・ホプキンス大学の研究は、米国では医療過誤に起因する死亡が年間25万人を超えると推計している。米疾病対策センター(CDC)の統計によれば、これは米国の死因の第3位に相当する。
睡眠不足が慢性化し、医師の判断力が低下したことで起きたと説明できる過誤もある。エレズとフォークによる先行研究では、こうした状況が医療従事者の業務能力のばらつきの約10~20%を占めるとされている。
エレズによれば、無礼な態度の影響は40%を超える。
「[無礼な態度は]実際に認知機能に影響し、それが仕事を遂行する能力に直接響きます」とエレズは言う。「ここから、非常に興味深いことが分かります。医師は侮辱をただ『気にせず切り替えて』仕事を続けるべきだと考える人もいるでしょう。しかし、この研究が示すのは、医師が通常そうであるように最善を尽くそうとしていても、無礼な態度の影響を乗り越えることはできないということです。自分では制御できないまま、認知機能が妨げられるからです。」
以前の研究では、エレズとフォークは同僚や権威ある立場の人物からの無礼な態度が、個々の医療従事者に及ぼす影響を調べた。今回の研究ではチームの業務能力を分析し、患者の家族から無礼な態度を受けた場合の影響を検証した。
新生児集中治療室での緊急事態のシナリオ
今回の研究では、イスラエルの新生児集中治療室のチーム39組(医師2人、看護師2人)が、重度の呼吸困難や循環血液量減少性ショックなどの緊急事態を想定した5つのシナリオをシミュレーションし、乳児の医療用マネキンを処置した。赤ちゃんの母親役を演じた女優は一部のチームを叱責し、対照群は無礼な態度を受けなかった。
エレズとフォークは、無礼な態度を受けたチームの成績が対照群より悪かったことを明らかにした。無礼な態度に遭遇したチームは、診断の正確さ、情報共有、治療計画、コミュニケーションを含む研究の11項目すべてで不十分な結果となった。5つのシナリオを通じて影響が見られたことから、悪影響は一日中続くことが示された。
無礼な態度の影響に対処するため、研究者らは一部のチームに「介入」を実施した。一部のチームは事前介入として、認知行動療法に基づく注意修正法を用いたコンピューターゲームに参加した。これは、怒りや攻撃性に対する参加者の感受性の閾値を高めることを目的としていた。別のチームは事後介入に参加し、チームのメンバーが赤ちゃんの母親の視点からその日の経験について文章を書いた。
エレズとフォークは、対照群とコンピューターゲームをしたチームの成績に差がなかったことを明らかにした。チームはシミュレーションの途中と終了後の両方で母親の無礼な態度に気づいたが、その影響は受けなかった。
「これほど効果があったことには本当に驚きました」とエレズは言う。「彼らは基本的に、無礼な態度の影響を受けない状態になっていたのです。」
一方、トラウマを経験した人に非常に有効だと研究で示されている事後介入は、チームに実際には悪影響を及ぼした。
「本当に懸念されるのは、正午の時点では、チームは母親が自分たちに失礼な態度をとったと認識していたことです」とエレズは言う。「ところが、一日の終わりには認識していませんでした。効果がなかっただけでなく、その後、無礼な態度に気づかなくさせてしまったのです。」
無礼な態度への対処訓練
研究者らの調査結果と、医療過誤に起因する死亡者の多さを踏まえると、無礼な態度により効果的に対処する方法を医療従事者に教えることは、医療界の優先課題とすべきだ。
「医療分野では、社会的なやりとりが自分たちにどう影響するかを考慮していないと思います」とエレズは言う。「ただ、その点に注意を向け始めています。この研究の目的は、何が起きているのかを明らかにすることでした。深刻な影響が見つかった今、より現実的な介入策を見つける必要があります。」
イスラエル工科大学(テクニオン)の新生児学教授アリク・リスキンと、イスラエルのテルアビブ大学の経営学教授ピーター・バンバーガーも、この研究に協力した。この研究は学術誌「Pediatrics」に掲載された。

