向上した人々の幸福は、現代における最大の成果の一つである。豊かな時代は、予想外の世界的な健康危機ももたらした。20億人が過体重または肥満である。先進国では特に不健康な体重増加が起きやすく、この傾向は豊かさの代償と見なすこともできる。しかし今、発展途上国も同様の危機に直面している。
肥満率は高所得国で横ばいとなっている一方、その他の地域では加速している。ユニセフ、世界保健機関、世界銀行の共同調査結果によると、2016年にはアジアに世界の過体重児の半数がいた。4分の1はアフリカにいた。
発展途上国の都市住民は、肥満になりやすくなっている。特に、都市化、グローバル化、食料供給の工業化という大きな潮流のなかで、その傾向が強まっている。インド国立栄養研究所によると、都市部に住む男性の4分の1以上、女性のほぼ半数が過体重である。

世界で今後進む都市化の大半は、特にアジアとアフリカを中心とする発展途上国で起こると予測されている。農村部の住民が都市部に移ると、安価で手軽な加工食品を簡単に入手できるため、不健康な食生活に引き込まれてしまう。
この危機は、歴史的に飢餓の撲滅に注力してきた政府の政治的決意を試すことになる。政府は、都市を便利で生産的にする要因が、住民を肥満になりやすくもしていることを理解しなければならない。この新たな危機に効果的に対処するには、賢明で的を絞った政策が必要だ。
都市のライフスタイル
都市住民は、スーパーマーケットの加工食品売り場から数多くの屋台まで、さまざまな食の選択肢を楽しんでいる。さらに、発展途上国では国際的なファストフードチェーンが繁栄している。こうした状況が、食習慣を変化させ、より健康的な伝統食から、揚げ物や糖分の多い飲料へと人々を向かわせている。
こうした食生活の健康リスクは、都市住民の座りがちな生活習慣によってさらに高まる。インドで実施された最新の栄養調査では、都市部に住む男女は1日平均およそ8時間働くことが分かった。大半は座り仕事のオフィス勤務だ。運動をする人は約4分の1にすぎない。
テレビ、映画、ビデオゲームといった受動的な娯楽が、そうした技術を利用できる世帯の増加とともに、人々の余暇を占有している。
こうした傾向が示す憂慮すべき事態は、発展途上国が豊かになる前に健康を損なう可能性があることだ。その結果、医療制度が機能不全に陥るおそれもある。
糖尿病や心血管疾患など、肥満に関連する合併症の東南アジアにおける年間医療費は、すでに100億ドルに達している。中国の若年世代の肥満による医療費は、2030年までに7,240億ドルに上る可能性がある。こうした病気は、すでに基礎医療のニーズへの対応に苦慮する国々に、さらなる負担を課す。
課税、都市設計、教育と啓発、地域に根ざした食料システムの促進に関する政策は、高齢化が進み、過体重の人が増える人口への将来的な医療費よりも低いコストで、肥満の抑制に役立つ可能性がある。
直接的な介入
一部の政府は、不健康な食品や飲料への課税など、肥満を抑える直接的な介入をすでに試みている。米国は清涼飲料税の運動を先導した。タイ、ブルネイ、シンガポールも同様の措置を導入している。南アフリカは、2018年4月から砂糖税を導入する可能性が高い。
規制による対応は、課税や砂糖の問題にとどまらない。英国では、広告規制により、脂肪、塩分、糖分の多い食品を16歳未満の子どもに宣伝することが禁止されている。
カリフォルニア州バークレー市は、肥満への対策として税だけでは不十分だと認識している。同市の砂糖税による収入は、子どもの栄養と地域保健のプログラムを支援するために使われている。これは、教育と啓発の重要性を示している。
より広範な取り組みにも期待が持てる。都市設計には、ライフスタイルのパターンと公衆衛生を大きく変える力がある。公共空間の魅力を高め、近隣地域の「歩きやすさ」を向上させ、自転車インフラの質を高めることで、住民を車やリビングルームから外へと促すことができる。
最近の研究では、上海と杭州の都市近隣地域において、歩きやすさに乏しい地域に住む中所得層の住民は、中国の都市部で歩きやすい地域に住む富裕層と低所得層の双方に比べ、BMIが有意に高いことが分かった。
最後に、健康的なライフスタイルは食料品店の売り場から始まる。政府は、農業生産システムと都市部の食料品店、食品販売業者との連携強化を促すべきだ。都市に隣接する地域の農家との関係づくりや、都市農園の推進は、米国で広く採用されている手法である。
こうした取り組みは、都市住民が食料調達の仕組みをより深く理解する助けにもなる。自然食品と健康的なライフスタイルの関係への意識が高まる。伝統食をめぐる文化を守ることさえ、健康的な代替食品の普及につながる。
不健康な食品への規制と、健康的な食事や活動的なライフスタイルを促す政策を組み合わせることは、肥満率の上昇に対する有望な対応策となる。公衆衛生への対処は、経済面でも社会面でも、発展途上国が取り組むべき政策課題だ。最近の世界栄養報告書を言い換えれば、肥満への対処は、開発にかかるブレーキを外すための世界的な急務である。

